天才
カフェの窓際。
蒼はコーヒーを飲みながら、ふと思い出したように呟いた。
「僕って天才なんだよね。」
灯は顔を上げる。
「なんで急に自画自賛したの?」
蒼は悪びれもせず続けた。
「努力で結果が出せる。」
「それは才能だよ。」
灯は首を傾げる。
「んー……当たり前なんじゃない?」
蒼は笑った。
「皆が皆、同じ努力をして同じ結果が出る訳じゃないでしょ。」
灯は少し考える。
「それを言われると……。」
蒼はコーヒーカップを回しながら続けた。
「けど、沢山時間をかけて努力すれば良いじゃん。」
灯は反射的に頷く。
「確かにそうだね。」
蒼はそこで肩を竦めた。
「相手が成長を待ってくれればの話だけど。」
灯は嫌そうな顔になる。
「嫌な事を言うなぁ。」
「まぁ、仕方ないでしょ。」
蒼はあっさりと言った。
しばらくして灯が尋ねる。
「で?」
「自分は天才自慢?」
蒼は即座に首を横に振った。
「違う違う。」
そして少し嬉しそうに笑う。
「僕の弟って、才能を発想で覆すから本当に凄いと思うんだよね。」
灯は深いため息を吐いた。
「はい解散。」
蒼は抗議する。
「ちょっとー。」
「聞いてくれたって良いじゃん。」
灯は呆れ顔のまま頬杖をついた。
蒼は気にせず続ける。
「まぁ、けど。」
「それでも弟は可哀想かなぁ。」
灯は意外そうな顔をした。
「ん?」
「なんで?」
蒼は少しだけ真面目な顔になる。
「結局の所さ。」
「正攻法で結果を出す人間が評価されるからね。」
灯は首を傾げる。
「そうなの?」
「当然でしょ。」
蒼は即答した。
「同じ結果を出すなら、天才を使った方が楽だしね。」
灯は納得したように頷く。
「確かに……。」
蒼は窓の外へ視線を向けた。
「誰かが褒めてあげれば。」
「弟も救われるのにね。」
灯は不思議そうに聞く。
「蒼は褒めないの?」
蒼は苦笑した。
「僕が褒めたら流石に嫌味じゃない?」
「嫌味?」
「いやいや。」
灯は首を振る。
「そんな事無いでしょ。」
蒼は静かに笑った。
「弟はいつも僕と比較されてるからね。」
「僕に『頑張ってて偉いね』なんて言われたら駄目でしょ。」
灯は少し考え込む。
「じゃあ、誰が褒めれば良いの?」
蒼はあっさり答えた。
「褒められたら救われるのは確かだけど。」
「都合よくそんな存在が現れる訳無いじゃん。」
灯は呆れたように肩を落とす。
「身も蓋もない事を……。」
蒼は楽しそうに笑った。
「現実主義って言って欲しいなぁ。」




