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正義

喧嘩騒ぎが落ち着いた後。

灯は蒼を見ながら感心したように言った。

「蒼って強いんだね。」

蒼は不思議そうに首を傾げる。

「そう?」

「喧嘩してたじゃん。」

「仲裁しただーけ。」

灯は呆れたようにため息を吐いた。

「火に油注いでたけどね。」

蒼は納得いかない顔をする。

「いやいや、冷静に対処したって。」

灯は即座に反論した。

「弟と兄弟喧嘩した事無いから新鮮って言った時は相手が可哀想だった。」

蒼は目を丸くする。

「そうなの?」

「プライドズタボロでしょ。」

灯が断言すると、蒼は少し考え込んだ。

「なるほどねぇ。」

そして灯はふと思った事を口にする。

「蒼って正義感強いの?」

蒼は微妙そうな顔をした。

「正義感ねぇー。」

「違うの?」

「いや。」

蒼はコーヒーを一口飲む。

「正義感って言葉があんまり好きじゃないかな。」

「え? なんで。」

「言ったもん勝ちだから。」

灯は首を傾げた。

「そんな事無いでしょ。」

蒼は窓の外を見ながら尋ねる。

「憲法が正義だと思う?」

灯は少し考える。

「うーん……そうなんじゃない?」

蒼は笑った。

「それより上があるよ。」

「何?」

蒼は即答する。

「ローカルルール。」

灯は顔をしかめた。

「いや……そんな事無いと思うけど。」

蒼は肩を竦める。

「イジメなんて良い例だよ。」

「社会的には犯罪になり得る事でも、学校だと『イジメ』っていうローカルルールで処理される。」

灯は反論する。

「いや、イジメも良くないでしょ。」

「もちろん良くない。」

蒼は頷いた。

「でも学校では、警察沙汰になり得る事が教師の説教で終わる。」

「前科すら付かない。」

灯は黙り込む。

「それはそうだけど……。」

蒼は続けた。

「知人の話なんだけどさ。」

「迷惑かけたからって一万円取られた事があるんだよね。」

灯は目を見開く。

「酷……。」

「かけた迷惑なんて、ごめんなさいで済む程度だったのに。」

「正義感で正当化された。」

灯は顔をしかめる。

「犯罪でしょ。」

蒼はあっさり答えた。

「正義なんでしょ。」

「取った人にとっては。」

灯は納得できない。

「その人も罰が当たれば良いのに。」

蒼は苦笑した。

「言ったじゃん。」

「ローカルルールだって。」

「周りもそれを正義だと思ってる人達だよ。」

灯は少し黙る。

蒼は穏やかに続けた。

「まぁ、それも仕方ない事だよ。」

「自分が生きやすいローカルルールを持つ集団に所属するしかないね。」

灯は頬杖をついた。

「蒼はどういうローカルルールなの?」

蒼は一切迷わなかった。

「弟大好き。」

沈黙。

灯は額を押さえる。

「聞いた私が馬鹿だった。」

蒼は楽しそうに笑った。

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