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修羅場

灯がいつも蒼と会う場所へ向かう。

まだ肌寒い風が吹いていた。

「お姉さん、遊ばない?」

男が声を掛けてくる。

灯は視線だけ向けた。

服はボロボロ。

行く当ても無さそうな少女。

弱みにつけ込もうとする人間は居る。

灯はため息を吐いた。

「気持ち悪いんだよ。」

思わず本音が漏れる。

男の顔が引きつった。

「は?」

空気が変わる。

その時だった。

「灯ー。来たよー。」

聞き慣れた呑気な声。

蒼だった。

蒼は二人を見比べる。

「ん?」

数秒考えた後、楽しそうに笑った。

「ありゃまぁー。修羅場だ!」

男が灯へ殴りかかる。

だが、その拳が届く前に蒼が割り込んだ。

「お兄さんー。ドードー。」

肩を組むように見えて、そのまま重心を崩す。

男の身体が傾く。

「テメェ!?」

怒りの矛先が蒼へ向く。

男は膝を振り上げた。

蒼の腹を狙う。

「落ち着いてー。」

蒼は半歩身体を捻る。

膝蹴りは空を切った。

代わりに。

パチン。

額にデコピンが入る。

「っ!?」

男が額を押さえる。

蒼は楽しそうだった。

「こいつ……!」

男が拳を握る。

腕を振り上げる。

「はい駄目ー。」

気付けば蒼は男の背後に居た。

首へ腕を回し、そのまま抱きつく。

まるでじゃれついているだけのように。

だが男は身動きが取れない。

「全くぅ。」

蒼は困ったように笑う。

「灯も駄目だよー。」

灯は顔をしかめた。

「なんで。」

蒼は男を押さえたまま言う。

「ごめんなさいしないと!」

「先に殴ったのそっちじゃん!」

「そういう問題じゃないんだよなぁ。」

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