87話 やはり労働・・・!!労働は全てを解決する・・・・!!
キャンディ司祭の誘導によりアーク司教の希望が叶えられ、
威流をフォンガンディ教にほぼ入信させるのに成功した。
ほぼ信者化した威流は途轍もなく不安であったが、
ロームとか言う”ゴミ野郎”を捕まえてしまえば、
リリー達も安心するだろうと言い聞かせ自分を納得させた。
取り敢えず、威流は当面の方針をアーク司教に確認する。
「それで、私は今後どうすればいいのですか?」
「そうだな・・・
お主は生活の為に金が必要であろう」
もったいぶった言い方ではあるが、
久し振りに聞く嬉しいお話に威流の目は輝く。
えぇ、えぇ、必要ですともっ!!
アーク司教バンザイ!! フォンガンディ教バンザイ!!
「それで、お主には”こんにちは 労働”に行ってもらう」
アーク司教の言葉に威流は露骨に嫌そうな顔をする。
「なんじゃお主、そんな顔をして。
フォンガンディ教の信者で無い者に教会の資産を使う事は出来んぞ」
当然の話に威流は酷く落ち込んだ。
「お前は本当に・・・
いいか、そこに行って労働者登録をせねば、
何か成果を挙げても正式に功績として認めて貰う事が出来ないのだ」
キャンディ司祭がその必要性を説くが、
あの重苦しい雰囲気の場所に行く時が来たかと、
威流は更に落ち込んでいく。
「は~い、頑張りま~す」
「タケルよ、この話になった途端に気の抜けた顔をしおって」
”こんにちは 労働”に行くというあまりにも衝撃的な出来事で、
すっかり”常識人モード”が解けてしまっている威流。
威流は特段嫌な事を後回しにするというタイプでは無いが、
誰しも嫌そうな事が早く訪れたら士気は下がるのは当然の流れであろう。
「取り敢えずそこに行けば手続きしてもらえるんですか?」
「そうだ、登録料が赤貨一枚が必要だから、それは用意してやる」
そう言うとキャンディ司祭は奥の部屋に入り、
革袋を手に戻り、一枚の赤い硬貨を差し出す。
威流は赤い硬貨を受け取り、腰のポケットに入れる。
「あの~、凄く当たり前の事を聞きたいんですけど、
お金の価値ってどんな感じですか?」
「お前が本当に違う世界から来たと実感する質問だな。
どんな話をすれば良いのだ?」
「昨日ですね、変な貴族が居たんですけど、
黒い硬貨を五枚くれるって言っていたんですが?」
威流の話に驚愕したキャンディ司祭の四角い目が丸くなり、
その反応で回答としては充分だった。
「お前はそれを受け取ったのか?」
「いえ、断りましたよ。
人から施しを受けると碌な事がありませんからね」
「タケルにしては良い判断だな。
その黒い硬貨はお前に渡した赤い硬貨の千枚分の価値がある」
「そうなんでしょうね。
その時、横に居た衛兵の反応で分かりましたよ」
「はぁ~、貨幣についても説明が必要だな。
民衆の生活を見ろと言っておいたが、まずそこからとはな」
「あはは~、ご指導はお手柔らかに~」
この後、威流はキャンディ司祭から貨幣についての講義を受けるが、
黒い硬貨の価値に驚愕する事になるとは思いもしなかった。
この世界では三種類の硬貨が流通しているらしく、
ダグソ硬貨、ブラボ硬貨、エルデ硬貨と言うらしい。
”エルデ硬貨”は黄色い金属で鋳造されている事から黄貨とも呼ばれ、
果物や野菜を一つ買うのに五枚から十枚ぐらいらしい。
赤い金属の”ブラボ硬貨”は赤貨と呼ばれ、
安い宿に泊まる時に二枚から三枚くらいでよいそうだ。
黄貨が百枚で赤貨一枚に相当する。
それで、黒い金属の”ダグソ硬貨”は黒貨と呼ばれ、
赤貨千枚で黒貨一枚に相当する。
庶民は黄貨とか赤貨と呼ぶが、
上流階級はエルデ硬貨やブラボ硬貨と呼ぶのが一般的らしい。
この世界の物価はよく分からないけれど、
大まかになるが、黄貨が十円、赤貨が千円で、
黒貨が驚きの百万円になる。
「まさかのボーゲン・キモチー、五百万円を気軽に出せる男っ!!」
あの変態貴族様はなんてお金持ちなんだ。
ただ、庶民がダグソ硬貨に釣り合う程の高級品を取引する事は無く、
出されてもおつりが用意が出来ないから迷惑だとキャンディ司祭が言っていた。
「この町ではダグソ硬貨はゲーセンのコインと変わらないのかよ・・・」
惜しい事をした様な、そうでもなかった様な、微妙な気持ちになるな。
しかし、貨幣価値が分かると買い物をしたくなるのが人の性。
ましてや、お祭りムードの商店街をお金の計算をしながら買い食いして歩くなんて、学生時代に戻ったみたいで最高の気分じゃないか。
働こう!!死なない程度に働こう。
こっちは”過労死”じゃなくて”即死”の可能性もあるから、
仕事はちゃんと選ばないとダメだ。
「キャンディ司祭、明日になったら”こんにちは 労働”に行ってみます」
「そうだな、仕事をするのも文化に慣れるという意味では良いはずだ。
ただ、こちらの要件がある時の優先順位は分かっておるな」
「念を押さなくてもいいですよ。金稼ぎに熱中したりしませんから・・・多分」
「そうだといいのだが。タケルよ、他に聞いておきたい事などはないか?」
威流は突き出すように手を挙げ、
アーク&キャンディのワクワク質問コーナーを強く希望する。
「はいっ!!あります、あります。
気になっていた事を聞きたいで~す」
威流は割とどうでもいい内容で、
ただ好奇心を満たすだけが目的の質問コーナーを楽しむ事となる。




