86話 問題解決に近道は無い。地道にやっていくしかないのだ・・・
アーク司教の狙いは威流をフォンガンディ教に入信させる事だった。
そんな事はご免被りたい威流だが、
帰還方法のヒントがフォンガンディ教の歴史の中に眠っている。
いかにして入信せずに情報に辿り着けるか、
そこが当面の問題となった。
「それでタケルよ。お前は何をしようとしているのだ?」
キャンディ司祭が当然の質問を投げ掛けてくると、
威流はどこまで話せば良いのかに困ってしまう。
「う~ん、そうですね・・・
雑に言ってしまえば、故郷に帰りたいだけなんですけど」
「それとフォンガンディ教に何か関係があるのか?」
「関係がありそうとしかお答え出来ませんね」
「要領を得ない話だが・・・
お前はあのアリアンデルとかいう輩と関係があるのではないか?」
「アリアンデルとは?」
どうにも、何かを誤魔化そうとしている威流に、
キャンディ司祭は疑いの目を向ける。
「キャンディ司祭よ、流石にそれはないであろう。
あの化け物に向かっていった姿勢は疑いようが無いぞ」
「アーク司教はタケルに過剰に肩入れをしてる様に思えます」
「ですから、アリアンデルとは何ですか?」
「ああ、お主が以前に相対した大きな化け物がおったであろう。
あれを造った男がロームと名乗り、アリアンデルという名も残していった」
「やはり、あの化け物を造ったのがあの男だったんですね。
吹き飛んで行って清々しましたよ」
アーク司教は威流の苛ついた態度を見て、
敵では無いとキャンディ司祭を諭す。
「もし敵であるのならば、我らを見殺しにする事も出来たはずだ。
リリーを想う気持ちに嘘があった様にお主には見えたのか?」
「そうは言っておりませんが、
タケルが何を隠しているのか気になりませんか?」
「タケルよ。キャンディ司祭はそう言っておるが、どうなのだ?」
「分かりました、私の本意をお話しします。
ですが、信じてもらえるとは思っていませんので判断はお任せします」
威流は話せる範囲で今迄の事を語る。
別の世界から来た人間であり、勝手にこの世界に飛ばされた事。
帰還方法が分からず、情報を集めている事。
シンランやライレンと同じ世界から来たという事などを出来るだけ丁寧に伝えた。
アーク司教もキャンディ司祭も最初は九割ぐらい疑っていたのだが、
言葉が分からなかった事やこの世界について何も知らないなど、
この突飛な話が事実であるという要素が無い事もなかった。
ただ一つだけ、
威流は魔石については一切語らなかった。
威流にとっての切り札である魔石についての詳細は、
誰にも話さすべきではないと以前から決めていたからだ。
だが、ここで”魔法使い”という設定が情報を隠蔽するのに一役買う事になった。
話を聞き終えた二人は暫く考えが纏まらず腕を組み唸っていたが、
アーク司教がおもむろに口を開いた。
「つまりだな、元の世界に帰る為には、
シンランやライレンと同じ方法でなら帰還出来ると考えたのだな」
「仰る通りです。
今はそれを確かめる以外の方法が無いだけですが・・・」
「だから教会が所有する古い書物を調べたいと言ってきたのか」
「すいません、その書物とかは部外者が見れるものではないんですよね」
「その通り。司教という立場であってもそう簡単な事ではない」
「あはは、ですよね~
ご迷惑でなければ、何か良い案とかお教え頂けませんか?」
眉間に皺を寄せ、アーク司教は考え込むと、
ここでキャンディ司祭が割って入る。
「アーク司教のお立場では言い難い事もあるので、
代わりに私が話そう」
「そうなんですね。キャンディ司祭、是非お願い致します」
キャンディ司祭は真剣な顔で話を始める。
「良いか。お前の望む古い書物は王都にある教会本部の所蔵庫に保管してあり、
そこへ立ち入りが許可されているのは、教会幹部や王族のみとなっている。」
「それじゃ、絶対に無理って言っている様なものじゃないですか」
「話は最後まで聞かぬか馬鹿者。
これから話すのは、何事にも例外が有るという事だ」
「例外ですか・・・」
「左様、方法としては二通りある。
ます一つ目は、フォンガンディ教に入信して枢機卿まで上り詰める」
「それ、どのくらいの年月が必要ですか?」
「人にも寄るが、十数年掛けても無理な時は無理だ。
ましてや、いずれ故郷に帰ると分かっているお前であれば、
入信自体が嘘であるというのもバレてはいけない」
「確かに、その話をアーク司教にして頂くのは良くありませんね。
キャンディ司祭、本当にありがとうございます」
威流がキャンディ司祭に深く頭を下げると、
常に仏頂面の男の堅い頬が緩んでいる様にも見えた。
「まあ良い、この方法は本命では無いからな。
二つ目として、王族の目に留まる程の功績を挙げるというのがある」
「それは戦争にでも行けと言ってます?」
「確かに戦争で武勲を挙げれば話は早いが、
魔法を使えると言っても、お前にそこまでの力は無さそうに見えるが?」
「仰る通りですよ、剣も握った事がありません!!」
「であれば人間同士の戦いでは無く、国を混乱に招くものの討伐、
例えばアリアンデルとかならどうだ?」
「それって、そちらの仕事を手伝えって言ってるんですよね」
「まあ、そうだな。悪い話ではないだろう」
フォンガンディ教への入信は免れたが、
結果、「その指示系統に組み込まれるのであれば入信と同じじゃね」と思う威流。
だが、今のところ従うしか手立てが無いのも事実であり、
フォンガンディ教の尖兵として戦うしかなくなるのであった。




