表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
60/100

60話 どんな複雑な問題でも、考えた先に待っているのは結局単純な答えだ・・・

「アカネ・・・タケル」


変わった名前だな。

言葉が分からぬのであれば、ここいらの者ではないのだろう。



リリーが”アカネ タケル”を指差して言う。


「タケル」



そうか”タケル”が名で、”アカネ”がうじなのだな。


それにしてもアーク司教といい、マティオンといい、

タケルのお陰で面白いものが見れた。



リリーはこの男についてまだ知っている事はあるのか?



ティキンはリリーに声を掛ける。


「リリー、タケルから何か教えて貰った事はあるかい?」



リリーは首を傾げて考える。


「何も教えて貰ってないよ。リリーが教えてあげているの」



その言葉にティキンは笑いが込み上げ噴き出してしまう。



このタケルについて何一つ分かっていないのに、

”この男と夜を徹して語り明かしたい”と言っていたマティオンと、

”何やら画策をしていた”アーク司教。


二人の事を考えると、ティキンは笑いを止める術が見当たらない。



「ティキンおじちゃん?何がそんなに楽しいの?」


「いや、何でもないよ。リリーは良い子だね」



平時は勿論の事、非常時であっても冷静さを保ちながら状況を判断し、

他者には寛容を持って接する一方で、己には厳格さを求めるティキン。

彼の信仰への姿勢は真摯そのもので、自己研鑽も忘れてはいない。



そんな真面目なティキンには、こんな些細な出来事が愉快で仕方が無い。

ティキンは信頼している相手に、少々意地が悪いという一面もあったのだ。



「ねぇねぇ、お母さん。お腹空いた」


リリーはこげちゃんを小脇に抱えながらお腹を擦る。



「そうね、お家に帰ってご飯にするから、その子をタケルさんに返しあげて」


「うん、分かった」


リリーは威流たけるにこげちゃんを手渡すと、

威流たけるは胸のポケットにこげちゃんを戻した。



リリーの寂しそうな顔を見たデイジーは、

思い切ってリリーに聞いてみる。



「ねぇ、リリー。タケルさんと一緒にご飯食べるのはどう?」


リリーの顔がほころぶ。


「ふふふっ、それじゃあ、タケルさんに聞いてみてくれる」


リリーは何度も頷いてから威流たけるの元へ行き、

外を指差しながら威流たけるの服を引っ張る。



「うまい」


それを聞き、威流たけるは頷く。

いつも通りだと、それはご飯を食べに帰るという意味だ。


だが、今回は違う。



リリーは威流たけるの手を取り、

威流たけるを指差し伝える。



「うまい」



威流たけるが驚いた表情を浮かべ、

自分を指差して問う。


「うまい?」



威流たけるの視線はデイジーに向けられる。



デイジーは柔らかな笑顔を見せ頷くと、

威流たけるの顔がほんのりと赤く染まっていく。



そのやり取りを見て、手で顔を隠しながら、

笑いを押し殺すティキンでなのあった。



リリーに手を引かれ、威流たけるが教会を出ようとした時、

高らかに片手を挙げ、その後アーク司教とマティオンを指差している。



「あぁ、二人の事を気遣ってくれているのか」


私は左右に手を振り、

”放っておいて問題は無い”と意思表示をすると、

タケルは何度も頭を下げながら去っていった。



ティキンは思った、タケルは随分と腰の低い男であると。

そして、こんなにも腹部を鍛え上げられよう日が来るとは思ってもいなかった。



ほうけていたマティオンが意識を取り戻し、

ティキンに詰め寄り、肩を掴んで揺さぶりながら嘆く。


「こんな無体な話があるか!!言葉が通じないなんて・・・」



悲しみに暮れるマティオンに同情の念が無い事もないが、

この前まで「この邪教徒がぁ!!」とか言っていたのを思い出し、

また腹部が強化され、目から水滴がこぼれ始める。



それを見たマティオンは”無念を理解してくれた”と誤解し、

ティキンを強く抱きしめた。



熱い抱擁が交わされた所で、アーク司教が意識を取り戻す。

辺りを見回し、タケルが居ない事に気付く。


「タケル、タケルは何処に行ったのだ!!」


そこに丁度、村の巡回を終え帰ってきてたビーフィーとポーキーは、

アーク司教の知りたかった事の答えを持っていた。


「アーク司教、さっき謎の男とリリーとデイジーが仲良く歩いてましたよ」


「見つけてたら教えて下さいよ。兄貴と俺はまだ探してたのに」



うろうろとしているアーク司教に、

込み上げる笑いが治まったティキンが小声で伝える。


「他の者の目もありますので、一旦落ち着いて下さい」


ハッとして周りを見ると、村の者の誰もが見なかったフリをしていたが、

”大笑いをしていたティキンが言う事でもない”とも村の者は思っていた。



マティオンがビーフィー兄弟に事の経緯を伝えたら、

二人共驚きはしたものの、ポーキーが冷静に


「それじゃ、タケルに言葉を教えてあげればいいじゃないですか」


と当たり前の発言をした事で、その場が静寂に包まれた。



その後、アーク司教はいつもの調子を取り戻し、

マティオンに”この地域の地図”を持ってくるように言い付けた。



その地図に、アンブリラから行ける町までの道筋を書き込むよう指示し、

村の者にも協力を仰ぎ、安全な順路の情報を集める様に命じた。



アーク司教の野望は、まだ潰えてはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ