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55話 価値観の違いで片付けられない事はある・・・

謎の男の魔法により、死人兵ムカデを撃退したアーク司教達。

だが、多数の敵は今だ健在で油断が出来る状況でも無かった。



先程投げつけた物から放たれた石礫いしつぶてが、

しこたま身体を打ち付け、アーク司教は思う様に身体が動かない。



「どうにかなるか、このまま殺されてしまうのかは五分五分といったところか」



死人兵ムカデを撃退した今、ここに居る必要は無いと考えたアーク司教は、

残った力を振り絞って村の入り口まで戻った。



入り口で戦う僧侶達は体力も気力も限界寸前で、

満身創痍のアーク司教も含め、残存戦力はもう無いに等しい状態であった。



マティオンがデイジー親子とあの”謎の男”を守って戦っているのは、

あやつが襲撃の犯人では無いのだとアーク司教は理解した。



「では、一体誰がこんな事をしでかしているのか」


首魁を捕えねば、この戦いは終わらない。

だが、どうやって探す。



数々の戦いを生き抜いてきたアーク司教は打開策を考えるが、

”首魁を捕える”以外の方法は無いと悟っていた。



そんな時だった。突如、戦場が静寂に包まれる。

全ての骸骨兵が動きを止めた。




「アーク司教、こちらへ来て下さい。他の者もだ!!」


ティキンの呼びかけに全員が村の入り口の外に出るが、

何故か謎の男も当たり前の様な顔で僧侶達に付いて来る。



村の外側に居た骸骨兵が左右に分かれ道を作る。

そして、その中心を歩いて来る一人の男。



ぼさぼさの長い髪を垂らし、その間から見える目は生気は無く、

半開きの口からは鋭く尖った黒ずんだ歯が見えた。


曲がった背筋とやせ細った身体が小柄な印象を与えるが、

鍛えられた僧侶達とそんなに変わらない体躯の持ち主であった。



一番注目すべきだったのは、法衣らしきものを着ているのだが、

その殆どを”赤黒い染み”が覆っており、その法衣が元は”白”であったと思われた。



声が届く範囲まで来た男は口を開く。


「いやー、君たちが私の材料採取を邪魔していたのかね?」


この問いかけに、誰も返事をしなかった。

すると、男は話を続ける。


「その上、完成間近の作品を壊してくれたみたいだね」


陰気な見た目に反して、ハキハキとした声で話すが、

途中でブツブツと独り言を言い始める。



誰もが男の様子を伺っていた。


男は重要な事を思い出したというような顔をして話す。


「そういえば、自己紹介がまだだったね。

 

 我らは神の御使い” アリアンデル ”

 

 その” 七つの大功 ”が一人

 

 ” 勤勉 ”のロームである」


言い終えると男はうやうやしく一礼をした。



誰もが何を言っているか分からなかった。

だからこそ、聞かなければならなかった。



ここで、アーク司教が口火を切る。


「ロームとやら。此度こたびの件、一体何が目的なのだ」


強めの語気でアーク司教が問いかける。



此度こたびの件?あぁ、素材採取の事かな」


悪びれる事も無く答えるロームに、

アーク司教と僧侶達は絶句する。



穏やかな漁村の”アンブリラ”を襲った理由を”素材採取”と言い、

その素材が”人間”であるという事。



そして、その素材で作るのが”死人兵ムカデ”だったのである。



「なんで君達は、私の邪魔をするのかな?」


「何を言っている!?。人を”素材”と呼ぶのかっ!!」


アーク司教は怒鳴るが、ロームは気に留める様子もなく溜め息を吐く。


「はぁ~、凡人には崇高な使命が理解出来ないか・・・」



骸骨兵達からカタカタと音が鳴り始める。


「君達は邪魔だから、ここで”素材”になり給え」


そう言うと踵を返し、その場から立ち去ろうとするロームに、

アーク司教が飛び掛かろうとするが骸骨兵に行く手を阻まれる。



骸骨兵が動き出し、僧侶達を取り囲んみ、万事休すと言った状況に陥る。



この時、この状況をずっと静観している者が居た。

そう、謎の男である。



謎の男はロームの言葉に何の反応も示さず、

ただ黙って立っているだけだった。



だが、この窮地に奇跡を起こした。



謎の男の胸から、これもまた謎の茶色の生き物が顔を覗かせる。

骸骨兵に囲まれた状況を見たその生き物が大きな声で鳴いた。


すると謎の男が着けている緑色の指輪が淡い光を放つ。



どこからともなく聞こえてくる奇声。


「キャアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーー」


この声を聞いた途端、謎の男はガタガタと震えだし周囲を見回していた。

近くの森から地響きが聞こえ、砂塵が巻き上がっている。



森から飛び出して来たのは、謎の男の胸に居る茶色の生物を巨大化させただけの、

単なる巨大生物であった。



その巨体の前では骸骨兵など「ただの骨だ」と言わんばかりに、

その全てを轢き潰し、ついでにロームまでも吹き飛ばした。


こうして、この戦いは終結した。

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