13.思い出せないって言った
翌日。拾った責任者なのに放置した罪悪感と心配が酷く、いてもたってもいられなくて、朝早くギルドに向かいました。
ちなみに今着ている服は昨日ミシェルさんからもらった騎士服風のワンピースです。孤児院の子供達のリクエストである。昨日見せた後かっこいいとかまた見たいとか騒いでて、仕方なく。
「……朝早くお邪魔しまーす……」
ギルドの中にはまだミシェルさんしかいない。
「ふぁぁ〜〜……あれ?マルちゃん?」
「おはようございます、ミシェルさん」
ミシェルさんは大きな欠伸をした。眠そうだな。早すぎたかな?
「おはよう……こんな時間にどうしたの?」
「いやその……状況が気になってて」
「状況……ああ、あれね。じゃあ見に行ったら?」
「はい、そのつもりです」
今日で目覚めるといいんだけど……。あ、この部屋ね。
「……あれ?いない」
扉を開けて中に入ったら、ソファの上に誰もいない。
「っ!」
突然後ろから少しだけ殺意を感じ、反射的に刀を抜き出した。一秒も経たず、何かが剣を持って襲いかかってきた。
わぁ、いい動きねーとか、エメラルドみたいな目だねーとか、思わず現実逃避しちゃっても仕方ないと思う。なぜならただいま、襲いかかってきたのは昨日拾った男の子なのだから。
「…え…?」
あ、動きが止まった。声を初めて聞いた。
「……天使…?」
……はい?
動きが止めたと思ったら、天使だとかわけわかんないことを言い出した。自分が死んじゃったと思ってるのかな。
「残念ながら人間だよ。ところでそろそろその物騒なものをしまったらどう?傷つけたりしないから安心して」
「あっ、ご、ごめん……俺、てっきり敵かと」
「いいのいいの。私もノックせずに入っちゃってごめんね」
お互い剣をしまった。
「まずは、体調はどう?まだどこか痛いとこ変なとこない?」
「ない、けど」
まだ顔色が少し悪いけど、問題なさそうね。昨日用意したパンも食べたみたい。
「……あの、ここは…?俺は、一体…?」
「ここはシャルク冒険者ギルドだよ。あなたは……いや、その前に。名前聞いてもいい?」
「あっ、ごめん、言い忘れてた。俺はルーk……あれ?ルー…?いや違う。俺は……俺はっ」
あちゃー、これってもしかして……。
「大丈夫、焦らないで。ほら、深呼吸」
「すー…はー……すー…はー……」
「どう?」
「……だめだ。思い出せない。……なぜっ……」
男の子は眉を顰めた。
「……知識は覚えてるのに、人に関しては何も……自分が誰かさえも」
やっぱり記憶喪失ね。漫画によくある展開だから、もしかしたらと思ってた。
「……そっか。じゃあ一先ず名前をルークにしたらどう?」
「ルーク……うん、そうするしかない」
男の子改めルークは、かなり落ち込んでいる。記憶喪失するってのは怖いだろうな。そっとルークの頭を撫でて、できるだけ柔らかい笑顔を見せた。
「焦らないで。無理して思い出そうとするのは体に毒だよ。そのうち思い出せるんじゃないかな。それまではここにお世話になってもいいか聞いてみるよ」
「う、うん」
あれ?なんかルークの頬がちょっと赤くなった気が……はっ!まさか、熱?!
「ルーク、ちょっと失礼」
「えっ」
ルークのおでこに私のおでこを当ててみたんだけど、体温は大丈夫でした。よかった。……あれ、なんか更に赤くなったような……?
「なっ、おまっ、何を…!」
「うん?熱がないか体温を測ってみただけですが……そんなに慌ててどうしたの?」
「ち、近いから!近すぎだから!」
「……え」
よく考えたら今の距離、やばい。やばすぎる。前世はよくこうやって翔流の体温を測ってたから、つい……!恥ずか死ぬ!
「ごごごごめ…」
「ゴゥーグゴゥゥ~」
「「……」」
謝罪しようとした時、ルークからちょっと…かなり激しいお腹の音がした。ルークは涙目で耳まで真っ赤になって。
「……えっと、サンド食べる?」
「……お願いします」
ルークはどうやら超腹ペコらしく、カバンから取り出した三つのカツサンドを全て食べ終わった。早食いしながらも上品に食べた。育ちの良さが見えるな。……もしかしたらどっかの貴族という可能性も……。
「あっ、ご、ごめん!俺、全部食べちゃって」
「いいのいいの。美味しかった?」
「う、うん。とても」
あ、ルークがはにかんだ。か、かわいい……。
「そりゃよかった。実は自信作なんだよねぇ」
「えっ、お前が作ったのか?」
「そうだよ?」
この世界には元々豚カツをサンドイッチにする概念はなかったが、どうしてもカツサンドを食べたくてこっそり魔法で豚肉を揚げてサンドイッチを作ってみた。ルークも気に入ったみたいだから、カツサンド仲間ゲット!




