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獣達

三日連続で更新!

プロットではかなり話進んでますが、きちんと書こうとするとなかなか終わらないですね。タイトルの回収もほど遠いようです。


早く二章終えたい……


「うあああああ!!」


 小さな身体が雷に包まれ、ノインは全身が焼かれる感覚に気を失いかけた。異国の剣士は()を使って雷を起こし、テサックを使ってノインを感電させたのだ。


──術、それは特定の人が持つ、学問では解明出来ない特殊な能力のことである。


 けれど意識を無くすことは試合放棄となり、昨年の二の舞である。それだけは意地でも避けたい。剣を交えず負けるなどあってたまるか。雷の中で剣を握る手に力を込めた。


「うおおおーっ! 負けるもんかー!!」


 両足を踏ん張り、金髪を逆立て叫ぶ。身体の奥から雷を追い出すかのように剣を振るい、痛みで(つぶ)った瞳を()じ開けた。


「うらあっ!」


 なんとか気力で雷を霧散させる。髪や服を所々焦がし、肩で息をするノインにギースウェイルは嬉しそうに言った。


「ククッそうだその意気だ、さあ全力で楽しもうではないか!」


 来る、と確信したとき既に異国の剣士の剣が振り落とされようとしていた。ギンッと金属が削れるような音を立てて剣が交わる。十歩ほど距離があった場所から一瞬で間を詰めたギースウェイルに驚く暇もなくノインは応戦する。相手の攻撃パターンはすでに把握できている。あとは己の技量にかかっている。

 ノインはあえて挑発することにした。ギースウェイルの踊るような独特なステップはランダムに見えて、法則性がある。そしてノインにも己のパターンというものがある。先程までの攻防で剣士にもそれは把握されている。()()()()()、それを利用した。

 大人に対し力では決して敵わないノインは誰よりも頭を使い考える。


『なんと、これは……北ノーマンの剣士が圧されている!? あの強烈な術が効いていない! 流石はツェットコダック家だ!』


 少年の変幻自在な攻撃パターンに、ギースウェイルの滑らかだった動きが狂い始める。剣を交えるごとに彼には少年の長剣の軌道(きどう)が読めなくなっていった。このままでは圧されるばかり。再び雷を呼び寄せる。


「あっ! っつう……」


 ギースウェイルはテサックに雷を(まと)わせ、剣が触れるたびノインに感電させる。

 されど少年はますます丸い瞳を吊り上げ、髪を振り乱し獣のような気迫で攻める。その勇姿は小さくも立派な剣闘士であった。


 さらに、術を操るのはギースウェイルだけに限らず、ノインもまた無意識に術を巧みに操っていた。それは目に見えないため、本人はおろか誰ひとりとして気付く者はいない。ただひとりギースウェイルを除いて。

 ノインが長剣を振るうたび、彼の纏う空気が()()()

 今競技場では風がほとんど吹いていない。にもかかわらず、ノインの周囲にだけ風が起こり彼の動きに合わせて流れる。関節の細かな動きや、長剣の切っ先の角度、すべての動きに有利になる風が起こり、また雷の術を払いのけ、ギースウェイルとの力の差を縮める。むしろ彼のほうがテサックを振りにくそうに握る。試合開始時は剣舞のように美しかった剣の軌道は歯切れが悪くなり、今はノインのほうが流れに乗っている。


 二人の剣士が汗を飛ばし激しい攻防を続ける。


「ハハッ楽しいぞ、ノインフンダート殿! モルニィヤが怯えている、このようなこと滅多に見られないぞ!」


 鋭い歯を()き出しにし、独特の緩急(かんきゅう)をつけてテサックを振るう。圧されてもなお異国の剣士は胸を踊らせていた。風を生み出し味方につけた少年も心のなかで精一杯叫ぶ。


 ──僕のほうがもっと楽しい!!──


 どちらが勝ってもおかしくないほど猛烈な闘いを繰り広げる剣士達。盛り上がる歓声。そしてついに決着がつく。


 少年は異国の剣士の身体中の関節の動きを把握していた。己の身長でテサックの斬りかかるタイミングを僅かにずらせること出来るのは最も近い急所、彼の右膝が最も成功する確率が高い。しかしそれは相手も予測出来ること。ならばあえてそこを突く!


「ダァッ!」


 少年の予測通り異国の剣士は右膝を身体の内側に向きを変え、スピードを緩めず順手に持ち替えたテサックで少年の左肩目掛けて袈裟懸けに斬りつける。


「ヒゥ……ッ!」


 しかし長剣の切っ先は右膝横を通り過ぎるとさらに下方へ進む。その軌道の先は剣士の踝があった。


「……ッ!?」


 素足(すあし)に直接長剣の突きを喰らったギースウェイルの足さばきに僅かなズレが生じる。その瞬間をノインは逃さなかった。


 瞬きするより速く柄を逆向きに構え、ギースウェイルの右脇腹から心臓を目指し貫く。


「降参だ!」


 切っ先が肋骨の隙間を潜り抜ける直前、幕が()とされた。


 少し悔しそうな顔をするギースウェイルより、荒い息で彼の腹からゆっくり長剣を抜くノインのほうが今にも倒れそうな表情をしていた。


「中のほうまでは刺さっていないから安心するがよい。ノインフンダート殿」

「っ…………ぅ、はい」


 赤く染まった長剣を凝視(ぎょうし)するノインの柄を握る手をギースウェイルは毛織物を切り裂いて止血しながら優しく声を掛けた。


『第三試合は西方、ノインフンダート・ノインツィヒ・ツェットコダックの勝利!!』



 実況と観客の声援にノインはようやく現実を受け入れ始める。長剣をゆっくり下ろし、ふんわりと目を細めて笑顔を浮かべた。


「やったぞノイン、僕は勝ったんだ!」


 そのときノインの天使のような微笑みが、数多の婦女子を(とりこ)にしたことは彼の知る(よし)もない。







 続く第四試合。

 三試合目と比べると、あっさりと勝敗が決まってしまった。


「お姉ちゃん、頑張って!」


 観覧席から妹のメメの声がして、ククは目配せで応える。口を開くとメメを膝に乗せたフックス卿に汚い言葉を吐いてしまいそうで唇をぐっと噛んだ。


 東にフックス卿の剣闘士、ファルキウス・ディン・バートン。西に同じくフックス卿の剣闘士、ククが立つ。

 前者は大きく分厚い両手剣を担いだ立派な体躯の剣士で、後者は獣の耳と尻尾を持つ若い娘。しかし得物はククのモルゲンシュテルンのほうがはるかに物々しく、鉄球から生える夥しい数の鋭い突起は威圧感を放っている。


 男は背中から両手剣を外して切っ先をククへ向けるとギロリと(にら)み付けた。


「地下では世話になったなあ、だが二度も幸運が降ってくるとは限らねえぞ?」

「…………」


 両手剣の男が嫌味たらしく挑発すると、ククは黙って肩に掛けていたモルゲンシュテルンを一振りし低く構えた。


 実況の解説もそこそこに開始の鐘が鳴る。

 その鐘の音が止む前に、ククは飛び出した。


 ──ドゴッ!


 競技場内に砂埃が舞い、観覧席から咳をする声が漏れる。観客達が砂で隠れた競技場に目を向けると、ククのモルゲンシュテルンが男の立っていた場所の地面を砕いていた。男はすんでのところで回避したようだ。


「っんな、……ふざけんな! まだ鐘鳴ってるだろ!」

「私は鐘がちゃんと鳴った後に走った。鳴り終わるまで待たなきゃいけないなんて決まりないわよ」


 地面に半分めり込んだモルゲンシュテルンを引き抜くと再び構える。

 男は舌打ちすると、急いで両手剣を掴み体勢を整え相撃した。双方の大振りな武器が振られるたび空気が唸る。

 二人の力量はほぼ互角かと思われたが、重装備の男に比べて防具をほとんど身に付けていない軽装のククのほうが機動力、瞬発力に優れており攻撃するまでの時間が短い。逆に男は両手剣を一回振るうともう一度振るために一呼吸を要する。そのためククに攻撃を入れられる回数が多くなり、すぐに切羽詰まる状態になってしまった。


 そうして何戟か合わせた後、ククがモルゲンシュテルンを叩き込み、男を甲冑ごと砕いて勝利した。



 そして続く第五試合は、アルム・ガイスト──エルの出番である。

ようやくラインツの出番!


次話の更新は少し間が開きます。

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