いよいよ本戦!
お久しぶりです。
サブタイトルをタイトルにしました。内容に変更はございません。今後もよろしくお願いします。
キャラ名:アルム・ガイスト=エル=ラインツです。
『さあー! いよいよ猛獣枠の本戦が始まります! 実況は予選に引き続き、私プロウ・デ・ヴェーバーがお送りします! よろしく!!』
観客に一礼をした実況の男に拍手が送られる。男は顔を上げると闘技場へ手を伸ばした。競技場の中央には本戦出者達が一列に並ばされており、端から順に名前を読み上げられるのを待っていた。
『さて、まずは本戦出場者のご紹介をいたします。一般枠に予選落ちした者、あえて猛獣枠に出願した者、なぜか本選まで残ってしまった者……皆様心からの声援をお願いします!』
『フックス卿の剣闘士、ダリウス・ショーン』
『フックス卿の剣闘士、ヤン・デ・ブラウン』
『モーリッツ氏の剣闘士、リュディガー・ブリック』
『フックス卿の剣闘士、クク』
『ロダン卿の剣闘士、ハルト・コウイェン』
『フックス卿の剣闘士、ドゥルドバジャーン』
『アーノルド卿の剣闘士、コルト・ターコイズ』
『フックス卿の剣闘士、ギースウェイル・アルムスベルク』
『フックス卿の剣闘士、ファルキウス・ディン・バートン』
『フックス卿の剣闘士、エドウィン・カーン』
『ツェットコダック氏の剣闘士、ノインフンダート・ノインツィヒ・ツェットコダック』
『アーノルド卿の剣闘士、アルム・ガイスト』
『フックス卿の剣闘士、ジョー・ブラウン』
『フックス卿の剣闘士、エーゴン・バティルス』
『アーノルド卿の剣闘士、アイス・ハーゲン』
『ハインケル卿の剣闘士、フェルス・ディ・ベルガー』
『ここで今一度本戦のルールをご説明いたします。本戦は総勢十六名による一対一の勝ち上がり制で、一度負けたらそこで敗退となります。誰と対戦するかは予選と同じくじ引きで決まります、もちろん不正はナシだよ! ちなみに勝敗の判定は、相手が降参するか意識を失うことが条件! つまりどれだけ急所を当てられても諦めずに頑張って戦えば勝つ可能性もあり! しかぁしっ、一試合中に使っていい武器はひとつだけ! 万が一失ってしまったら降参をオススメします、とっても危険だからね。あ、でも自信がある選手は素手で戦ってもいいよ! それこそ猛獣枠の醍醐味だ!!』
実況の煽るような熱い言葉に観覧席が沸く。中には雄叫びに似た歓声をあげる者もいた。そんな中、少女が両手を握り締めてひとり懸念していた。
「お姉ちゃん、怪我しないかなあ。どうか怖い人に当たりませんように……!」
そしてその少女を膝の上に乗せている身なりの立派な男は、傍らに控えさせている秘書に何か言付けると少女の頭を撫で始めた。触れた男の手にメメは身を固くする。
説明を終えたプロウは観客に手を振って台から降りた。しゃがみこむと青い顔をして床に向かって深いため息を吐いた。
「う……もうムリっ、……人混み怖い、つらすぎる……っ!」
◇
選手の紹介が終わり、本戦が始まる直前。競技場の一階にある、本戦出場者であるリュディガー・ブリックとその後見人モーリッツのいる待機室には客人が来ていた。
「悪いなモリー、無理を言って武道大会に参加させちまって……」
アレックスは柄にもなく他人がいる空間で素顔で謝った。暗殺をも請け負う秘密結社『コルンブルー』のリーダーとしてではなく、一人の男として目の前に立っている彼に、モーリッツは優しく微笑みかける。
「気にするな、他でもない親友の頼みだ」
それに、とモーリッツは部屋の奥で弓の手入れをしている男を見やる。
「強い相手と戦えるのなら喜んで猛獣枠に出る、と意気込んだのは彼自身だ。親友の援助と、武人の願望の二つを同時に叶えるなんてなかなか出来ない経験だ」
「けどお前んとこの親父さんが許してくれるか……これだけ目立つことやったら今まで以上に立場が悪くなる可能性もあるだろう」
アレックスは神妙な顔で言った。そんな彼の肩にモーリッツが手を置く。
「アレクシウス。それ以上はいいよ、今回のことは僕が自分の意志でやってるんだから。それに僕の根性と才能を見くびってもらっては困る。無一文の納屋住みからたった三ヶ月で不動産会社を立ち上げた天才だよ?」
眼鏡をクイッと上げて光らせた彼にアレックスは笑った。
「ははっ久しぶりにモリーの自慢話を聞いたよ、そういやあの頃もお前に助けられてたな。あの日、あの納屋に泊まることが出来なかったら今頃俺は…………っと思い出に浸ってる場合じゃなかった」
ふとアレックスはこの部屋に来た目的を思い出した。立ち上がってリュディガーの前に行く。
「あんたの力が必要だ。アルム・ガイストを殺してほしい」
「言われなくてもやる。私の矢は一度狙いを定めた相手を必ず仕留める」
武人は弓から目を離さずに返事をした。
「それを聞いて安心したよ、本気で倒してもらわなきゃこれまで築いてきた俺の計画は総崩れになる」
部屋の扉を閉めて一人不適に笑うアレックスの瞳は冷たい色をしていた。
◇
ちょうど本戦の第一試合が始まったころ、アーノルド卿の黒い奴隷、エルは競技場の建物内にある広い医務室へ、予選二回戦で共に戦ったマルクとボリスの見舞いへ来ていた。
医務室には二人の他に怪我をし手当てを受けている大会出場者の姿もあった。
幸いマルクのほうは命に別状はなく、ややダルそうにボリスの寝ている寝台に腰掛け二人で談笑していた。会話から察するに、ボリスは怪我の程度が酷いためしばらく泊まることになったらしい。エルはマルクとボリスになんと言葉を送ったら良いのかわからず、ただ二人のそばに立っているだけだった。二人のおかげで本戦に出場できるのに二人は怪我で棄権してしまったことに、罪悪感を覚えているのだ。そんなエルにボリスのほうから声をかける。
「エル、本戦もう始まってるんだろう? 出番に遅れるといけねえからここはもういいぞ」
でも、と口を開き掛けたのをボリスが手で制する。
「エル、おめえは何も気負うことなく戦ってこい」
「***……」
エルにはなぜ二人が己に優しいのかわからなかった。二人とも優勝を目指していたのに関わらず、結果的にエル一人のために尽力をしてくれたのだ。まだ会って数時間しか経っていないというのに。
「ほら、行けって。おまえは強いから絶対優勝できるぞ」
「勝ったら一番最初に伝えに来いよ! 頑張れ、戦友!」
笑顔で送り出してくれる友の声にエルは一度出入り口まで行った足を引き返し、二人のそばに寄って耳元で小さく囁いた。
「ありがとう……」
黒い奴隷が去った後の医務室で二人はぽつぽつと再び会話を始めた。
「ところでマルク、このあとどうするんだ? おめえも元傭兵だろ」
「いや、まだなんも。でもそろそろ身を固めておきたいなー。っていうかさ、あいつ俺達の言葉わかってたよなあ……?」
「何か事情があるんじゃね? なんだってあの陰湿で有名な伯爵の剣闘士になっちまったんだ。見せしめに首輪まで着けられてよお」
ボリスのように同情するのは単純すぎる気がしたが、彼を見たときから気になっていたことは確かだった。あの見た目ではたとえ剣の腕があっても職に就くのは難しいはずだ。気が付くとマルクは口が勝手に開いていた。
「なあ、あいつがもし助けを求めたら、ボリスさえよければ一緒に協力しないか?」
「いいなそれ、けどまずエルが勝つとこ見届けようぜ」
そういやまだ一試合目中だったな、とマルクが答えると二人は顔を見合せ、同時に吹き出した。
「いってえっ! つつ……、 笑わすなって。おいらはこの通り一歩も動けねえ、代わりに応援してやってくれ」
「了解した。しっかり療養しとけよ」
マルクは寝台から腰を上げると、左手で手を振り、包帯で巻かれた右腕を庇うように医務室を出た。
本戦の様子の描写がない!すみません、次話から続けてバトルやります。
明日も同じ時間帯に更新します、よろしくお願いします。




