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俺の相棒はクソ野郎な命の恩人

タイトルに副題を付けました。


『褐色の大地よ 赤く染まれ ~サッカー少年と隻眼の悪魔が異世界の勇者になる日~』


となります。今後もよろしくお願いします。


 一章は、 根暗で不細工な高校生が異世界転移して、ど田舎スローライフ送ってたら怪しい集団の儀式の生け贄にされて怪物にされてしまう話です。以下あらすじ。



 あの金髪とサッカー部のジャージが目に入った瞬間、悟った。彼こそが本当に選ばれた人間なのだと──



 高校一年生の野田恭兵は、ある夕暮れ時に道を歩いていると、突然謎の赤い光によって異世界転移してしまう。

 そして転移先は湖の中だった。幸い泳いで岸辺にたどり着くことが出来た為、救助を求めてひたすら山中を歩く。そこでようやく見つけた村の集落は盗賊に襲われているところだった。村の少女を助けようと投げた石が自分の左目に命中し、さらには盗賊達から暴行を受け、瀕死の状態となったところ、赤い髪と瞳を持つ美少女グレタと出会う。

 彼女に救われて、介抱を受ける恭兵はやがてグレタに恋をしてしまう。そしてラインツという名の片目の青年としてのどかな田舎生活を送るのだった。

 しかし、三年経ったある日それまでの生活をすべて奪われることとなる。

 ラインツを異世界に召喚したのはグレタだった。彼女を含む村の住民と謎の男達、彼らは『星の知慧教団』と名乗り、シュリーツベルク軍と協力して、ラインツを利用して世界を壊すための怪物を召喚しようと企んでいた。グレタと暮らした日々の大半が偽りの記憶であり、実際には研究所と呼ばれる施設で医師ヨハネによって体内にグレタの子宮を移植され、顔は整形手術されていたのだ。

 記憶が曖昧なまま強行された儀式で死ぬはずだったラインツは、自らが怪物になってしまったことに絶望し、ひたすら逃げた。知らない土地まで来て起き上がれなくなったところに現れたのは髭面の男、レイヴン。彼は三年前ラインツを弄んだ盗賊の頭だった。


 二章は儀式から一年後の話である。

 俺の頭には黒い角が生えている。生まれつきではない。ついでに肌も髪も真っ黒だ。おまけに仕事の相棒は腹黒い悪党である。喧嘩なんてしょっちゅうだ。


 そんな奴だが俺にとっては命の恩人とも言える。なんだか悔しい。


 だってあいつは俺の大切な友人の村を襲った張本人なのだから。





 背の高い二人の男が雪の降り積もった山の斜面を降っていく。

 二人とも大きくて重たい荷物を背負い、服を何重にも着込み、山越えに必要な装いをしていた。時折空の様子を確認しながら山道を進んでいる。山の天気は変わりやすい。

 ラインツとレイヴンは黙々と足を動かした。


「なあラインツ、町で一休みしたら国に戻らねえか? ま、お前が嫌でも決定済みだけどな」

「は? 何勝手に決めてんだよ」


 口を開いて数秒でこの態度である。

 しかし、ラインツがレイヴンの言い分を変えることは敵わないため、結局いつも彼のペースに合わせる羽目となっている。町の入り口へ着く頃には彼の故郷、ヴェスティア帝国への行き方に関する話を続けていた。


 現在彼らがいるのはヴェスティア帝国の隣にある、ノーマン国である。帝国の北上に位置する雪国だ。国土の大半が森林で覆われ、狩猟が盛んな文化を持っている。そして今も、二人が入った酒場では狩猟を終えたばかりの男達で賑わっていた。獣の血と酒で酔っているのか、顔を真っ赤にして笑いながら汚れたテーブルを叩いていた。


「なんでこんなうるさいとこ選んだんだよ……」

「ああ? 聞こえねーなあ!」


 ラインツはため息をつきながら豆のつまみをつついた。彼が黙っているのをいいことに、我が物顔のレイヴンは首元を寛けてジョッキを豪快に呷る。足の間に置いた荷物に腰を下ろしたラインツはフードを深く被ったまま、安い蒸留酒が無精髭の生えた喉を勢いよく通っていくのをぼーっと眺めていた。



 一年前、窮地に陥ったラインツを助けたのはこの男だった。

 月明かりが照らすあの道で動けなくなったラインツを担ぎ出し、軍や組織の人間に見つからないように、今日まで逃亡生活を続けてきたのだ。ラインツ一人ではどうにもならなかった状況を、レイヴンは汚い手を使って打破してきた。

 この一年間、ラインツは組織と軍による追っ手や、己が怪物になってしまった恐怖とその狂暴な力に何度も苛まれてきた。体内にあるグレタの子宮に封印した支配者の力。ファンタジーなどと一言で片付けられるほど異世界は甘くはなかった。

 何度も自傷行為に走り、そのたびにレイヴンに蹴る、殴るなどされて止めてもらっていた。そして彼に暴力を振るわれる度にトラウマがフラッシュバックし、何度も発狂しかけた。

 数ヵ月の苦闘の末、ようやく支配者の力をコントロール出来るようになり、ラインツは人間らしい姿をとり戻すことが出来た。しかし、肌と髪は黒いまま、そして角は無くすことが出来ない。それでも儀式のときよりもずっと人間に近付けたことに安堵した。

 そしてようやくまともに日常生活が送れると思っていたら、レイヴンにこき使われる日々が待ち受けていた。



貴殿方(あなたがた)はここの人ではないようですね」


 ふいに声を掛けられる。振り返ると十三、四歳くらいの少女が立っていた。寒さで頬と鼻が赤くなって子どもっぽさが際立っているが、えらく姿勢が綺麗である。


「折り入って、頼みたいことがあります」

「ガキんちょ、人にもの頼むときくらい名前言えや」


 レイヴンが振り返りもせずに指摘をする。一応相手にする気はあるようだ。

 少女は彼のキツイ物言いに怖じ気づくこともなく、しっかりと落ち着いた声で挨拶をした。


「大変失礼いたしました。私はヴェスティア帝国ケーニッヒブルク領認可の商工組合に在しております、ブルツァネッカ商会の会長、ナターシャ・ブルツァネッカと申します。どうかお見知りおきを」

「俺様君はレイヴン、んでこいつはラインツだ」

「レイヴンさんに、ラインツさんですね。よろしくお願いします」


 髭面とフード。二人の違いは顕著だった。口は悪いが場の空気に溶け込むレイヴンと、屋内でもフードを被ったまま顔を見せないラインツ。しかしナターシャはあくまで二人と会話しているつもりのようだ。

 彼女のぶんの料理がテーブルに出され、ナターシャはラインツの持ってきた木箱に腰を掛ける。もとより店にまともな椅子はない。


「ありがとう」


 そうして早速話が始まった。


「我々ブルツァネッカ商会は、ここノーマン国から納品物をヴェスティア帝国まで運ぶ旅路で、護衛として雇っていた者が負傷し、この町で動けなくなってしまったのです。このままでは大事な納品物がいつ奪われるかわかりません。そこで、腕に自信のありそうなお二人に護衛を依頼しに伺いました。……ご検討頂けますでしょうか?」

「荷物の量と護衛対象の人数、あと報酬次第だな」


 この調子だときっと六割方依頼を受けるのだろうとラインツはぼんやり考えた。レイヴンが人の話を聞くのはこちらに利益のあるときだけなのだ。


「報酬ですか……今回は急なご依頼ですので相場の1.25倍は出させて頂きます」

「いいやもっと出せるだろ」

「では二倍で」

「いいや……実際のところ、かなり困ってるんだろう? なら金を出し渋ってる場合じゃないはずだぜ」


 レイヴンが吹っ掛けると、彼女は少し考え始めた。


「そうね。貴方の言う通り、私達は一刻も争う状況……では三倍ではどうでしょうか?」

「そうだな、もうひとふんばりできねえか?」

「……わかりました。では3.5倍。これ以上は出来かねます」

「上出来だ。この依頼乗ったぜ! なんかあったらこっちの兄ちゃんが全部片付けてくれるからな!」


  駆け引きを終えた二人はしっかりと握手をした。

 毎度のことながら横暴なレイヴンを見て、ラインツはため息も出なかった。レイヴンが承った肉体労働はいつもラインツに回されるのである。

 だが今回ばかりはそうは問屋が卸さない。


「…………あなた方お二人にご依頼しているのでレイヴンさんも担って下さらないと報酬はお渡し出来ませんよ」


一章が終わってからかなり遅くなりまして申し訳ありません。二章もどうぞよろしくお願いします!



主人公いつの間にかお酒飲める歳になってた!

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