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CARD23

 ◇


 先輩と別れた帰り道、顔見知りと遭遇する。

「おう、トレカ部のお二人じゃないか」

 影山先輩だ。今日も例によって派手な服装。やっぱり靴はとんがってる。

「先輩、来週こないんですか?」

 チーム戦は、三人一組で戦うがだが、学生の公式大会では一人の交代要員を認めている。デッキをそのまま使うことにはなるが、自由に他の選手と交代することができる。

 彼は“幽霊部員”。つまり、一応部員ということだ。であれば、明日の大会にでる権利はある。

 幽霊とはいえ、彼の実力は確かなものだ。彼の力があれば、明日の試合はかなり楽に進められるだろう。

 だが、先輩は明日の試合に出る気などさらさらないらしい。

「俺は女の子と遊ぶので忙しいかな」

 大きなお世話かもしれないが、このファッションセンスの男と付き合う女はいったいどんな趣味をしたやつなのか。

「それに、どうせ貴文には勝てない。お前はまぐれで一回勝ったかもしれんけど、まあそんな奇跡はそうそう起きないぜ」

 確かに、影山先輩の言葉は正しい。俺が得た勝利は、初期の成熟しきっていない環境における偶然の産物だ。それは俺だってよくわかっている。

「だからまあ、貴文と当たらないことを祈るんだな」

 彼が電車に乗って去っていたあと、ギャルが質問してきた。

「白河貴文って、どれくらい強いの」

「どれくらいって、そりゃめちゃくちゃ強いけど」 

「わたし、動画見たんだけど、すごさがわからなくて」

 無理もない。初心者に彼の凄さが理解できないのは当たり前だ。

「あいつはね、メタゲームを必ず制することができるんだ」

「メタゲーム?」

「大会でどんなカードが流行るかってことだよ。このゲームでは絶対的に強いカードっていうのは存在しないんだ。どんなカードにも弱点がある。ということは、大会に出る人たちがどんなカードを使うか、それを予想できれば、その対策ができる。それができれば勝てる。これがメタゲームを制するってことださ」

 もちろんどんな競技でも、戦略の流行みたいなものは存在する。でもカードゲームほど流行が重要な競技は他にはないだろう。例えばメッシも、イチローも、羽生名人も、今も強いし、たぶん三か月後も強い。でも、アーツでは今強いからといって、今の【ゴブリン】デッキが一年後も強いとは限らない。それどころか、まったく勝てないという可能性のほうが高い。二か月に一度は新しいカードが登場し、さらに三か月に一度は制限カードの改訂が行われる。常に環境は変化していく。だからその変化を読まなければいけない。それができなければ、どんなに輝かしい戦績を持つ選手でも勝てない。それがカードゲームなんだよ」

 どんなに強いプレーヤーでもメタゲームを読み間違えれば、まったく勝てなくなる。逆に言えばメタゲームを読み切れば、ギャル子みたいな初心者でも勝つチャンスがある。それくらいメタを考えるっていうのは大事なのだ。カードゲームは、メタが九割といっても過言じゃない。

「貴文はメタゲームの天才なんだよ。その環境で皆が使うであろうデッキを読んだうえで、独創的な対策を立てる。それが常にできる男なんだよ」

「優輝は勝てるの?」

「まぁ、負ける気はない」


 ◇


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