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CARD22

 ◇


 試合を来週に控えた土曜日。俺たちは朝一でカードショップに集合した。今日は新しいブースターパック、通称新弾の発売日だ。

 TCGでは、定期的に新しいパックが発売され、プレーヤーはそれにいち早く対応していかなければならない。

 新弾のカード次第で、今まで強かったデッキが相対的に弱くなったり、逆に弱かったデッキが環境トップに躍り出たりする。だから大会では、新弾のカードが環境にどんな影響を与えるかを予想しなければ勝てない。

 今回の新しいブースターパックには四十種類のカードが収録されている。その中には、今後の環境を大きく変えるカードが含まれていた。

 新弾を、俺と先輩は二箱、ギャル子は一箱づつ購入した。基本的にシングル買い、つまり一枚ずつ欲しいカードをショップで買ったほうが確実で安いのだが、しかしカードゲーマーたるもの、新弾が出れば、まずは箱で買ってパックを開ける快感を味わいたいものなのだ。

 店のデュエルスペースの一角で、俺たちはパックを開けていく。

 ちなみにギャル子は、箱買い初体験だ。

「あ、光ってるカードでた!」

 ギャル子が剥いたパックのカードを覗くと、新弾のトップレアが煌々と輝いていた。

「それ、一枚三千円」

「三千円!? 高っ」

 カードゲームに馴染みのないものは、紙切れ一枚に三千円は高いと感じるだろう。だが、その値段に見合うだけの強さを備えたカードだ。

「えっと、<ゴブリンの妨害部隊>?」


<ゴブリンの妨害部隊>サモンカード

 全てのアーツの詠唱時間は2多くなる。

 

 効果はお互いのアーツ使用を阻害するというもの。

 効果は相手だけでなく自分にも及ぶため、どのデッキにも採用できるカードではない。

 だが、アーツを使わず、サモンカード連打によって勝負を決めるデッキにとっては、相手の行動を一方的に阻害できる強力なカードになる。

 特に【ゴブリン】は、アーツがなくてもサモンカードだけで様々な場面に対応できるデッキ。アーツゼロの構築でも十分強い。それゆえ、このカードの恩恵を受けやすいのだ。

「ゴブリン環境はまだまだ続くね」

 環境というのは、TCG独特の用語だ。

 トーナメントにおいて、どんなデッキが強いとされているか、を示す。

 “ゴブリン環境”であれば、ゴブリンがほかのデッキよりも強く、その使用者が多い、ということを示している。逆に様々なデッキが活躍している場合は、群雄割拠な環境であるといえる。

 今の環境は、完璧なゴブリン一強状態だ。<角笛吹き>を得てからというもの、ゴブリンの勢いを止められるデッキはほとんどない。ゴブリンに勝つにはゴブリンを使うしかない、というのが今の環境だ。

 正直この一強環境は、俺たちにとってはありがたい。ギャル子は初心者、俺も復帰したばかりという状況で、近年使われているデッキに対する理解が浅い。だが、トーナメントで皆がゴブリンを使う、という状態であれば、ゴブリン対ゴブリン戦の経験をつんでいけば、他のデッキへの理解が及んでいなくてもさほど問題にはならない。

 もちろんゴブリン以外のデッキと当たってしまったときにボロがでるかもしれないが、群雄割拠な環境よりはそのリスクが低い。

「サモンカードを中心にデッキを構築しなおさなきゃね」

 AOSでは、スタハンというルールが採用されているの。通常、デッキからデッキからカードを引くのはランダムなのだが、このゲームでは、デュエル開始の際の五枚の手札のうち、二枚をあらかじめ選ぶことができるのだ。

 そして、今回の<ゴブリンの妨害部隊>は、あまりに強力なカード。全ての【ゴブリン】デッキ使いは、確実にこのカードをスタハンに入れてくる。

 それを想定して、こちらもアーツに依存しないデッキ構築にする必要があるのだ。

 例えば、徐々に強さが認知されてきた<強者の傲慢>も、<妨害部隊>のせいで使いづらいカードになった。

 【ゴブリン】デッキの強さは揺るがないとは言え、デッキに採用されるカードは大きく変化するだろう。

 来週の県大会予選まで大きな大会はない。ゆえに、蓋を開けてみないと、どんなカードが使われるかわからない。

 少しでも多くの可能性を考慮して、備える必要がある。


 ◇


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