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CARD12

 ◇


「あたし、ちょっと用事があるので」

 そういってギャル子は駅とは反対の方向へ歩いていった。

「優輝くん、ちょっと散歩していかない?」

 他愛もない会話をしながら、俺と先輩は歩き始めた。十分も歩くと、海に出る。

 磯の香りが強かった。

「海、こんな近かったんですね」

 海浜幕張、なんて名前をした駅を利用しておきながら、海を見たのは初めてだった。

 幕張は、一見すると都会だが、以外に人が少ない。ゴーストタウン、なんて言われたりするくらいだ。日の落ちかけているこの時間であればなおさらで、この浜にも人気はほとんどない。海にはサーファーがいたが、それくらいだ。

 そんな中で、自然と俺達の口数が減っていった。でも、それは決して居心地の悪いものではなかった。

 海を横目に歩く。塩の匂いに混じって、ふと柑橘の爽やかな香りが備考をくすぐった。

 肩が一瞬触れた。俺の目線は自然と先輩の右手に吸い寄せられた。その手を、握りたいと思ってしまったのだ。

 と、先輩が急に立ち止まった。先輩の顔を見ると、意を決した、という様子で口を開いた。

「去年はね、白河君に勝てなかった。だから、優輝くんの力を貸して欲しい」

 次の瞬間、先輩の顔が近づいた。ふわっと香る柔らかい香り。伝わってくる彼女の手のふんわりとした暖かさ。

 端正な顔が目の前に。その大きな瞳に見上げられる。その瞬間、あ、恋に落ちたな、って自分のことなのに妙に客観的に見ている自分がいた。

 こんなに可憐な少女に、吐息が感じられるこの距離で、こんなに真っ直ぐな瞳で、見つめられて恋に落ちないやつなんているわけがない。

 悩んでいたが、どこかに消え去った。

 別にいいじゃないか、周りから評価されなくたって。こんなにかわいい女の子が、俺の力を必要としている。それだけで十分だ。

「先輩」

 先輩越しに、幕張メッセが見える。近くて遠い、あの場所。無敗の男に勝たなければ、あそこに足を踏み入れることはできない。

 でも、先輩のためなら、あの男にでも勝てる気がした。

「絶対行きましょう、あそこに」


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