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第22話:最終決戦

 五年の歳月が経った。

 元の時代に帰って来てはいたが、俺は二十歳になっていた。

 今日は、この時代の俺がタイムマシンで過去に飛んだ日。

 俺は防衛軍の研究室へやって来た。

「猪俣さん」

「え?」

 振り返る猪俣さん。

「え、聡くん? 今、過去に飛んだばかりじゃ?」

「戻って来たんですよ、五年かけて。おかげで成人になりました」

「じゃあ、あなたは未来の聡くんなのね」

「そう言うこと」

「過去は変えられた?」

「それが、無理でした」

「そう。博士は亡くなったままなのね」

「俺、修行して来ました。戦闘力も格段に上がってますよ」

「それは頼もしいわ」

「この五年でテラに行く技術は叶わなかったですけど、俺は絶対に邪神を倒しますから」

「ええ」

「猪俣さん、妹さんに会いました」

「京香に?」

「彼女も警察官なんですね」

「そうよ。部署は違うけどね」

「それと、新しい仲間もできました」

「それはよかったわね」

「過去にはメタン人が跋扈(ばっこ)してました」

「メタン人? テラ星を征服した悪党よ。奴らの技術力で洗脳したテラ星人たちを地球に送り込んだのも彼ら」

「確かに、奴らは他人を操ることに長けていた。手強かったですよ」

「聡くん、加賀美家に行ってもらえるかしら? 知り合いの預言者が赤ちゃんに危険が及ぶって、あなたが旅立ってから電話がかかって来たの」

 俺は加賀美家に急いだ。

「おじさま!」

 聡美の姿になって加賀美家に上がり込んだ。

「ああ、聡美くん」

「洋子ちゃんは?」

「寝てるよ」

「どこで?」

 赤ちゃん用のベッドを指す健の父。

 俺はベッドに歩み寄った。

「おじさま」

「ん?」

「片割れをガードマンとしておいて行きます」

 俺は、聡の体を出現させた。

「うわ!?」

「洋子ちゃんは彼に任せます。十年後にまた会いましょう」

 俺は研究室に戻った。

 タイムマシンのパネルを操作し、カプセルに入って十年後に飛び、加賀美家を訪れた。

「どちら様ですか?」

「こちらに聡さんは?」

「いますよ」

聡さん!──女の子が聡を呼ぶと、中年男性が現れた。

「帰って来たか」

「誰なの、このお姉ちゃん?」

「俺の姉だよ」

「何も変わりはないだろうね?」

「ああ。問題ない」

 俺は聡を体内に取り込んだ。

「聡さん?」

「邪神を倒すのに君の力を借りたい」

「邪神?」

「今、この星には怪物が出るでしょ?」

「うん」

「それは邪神のせいなんだ」

「それパパが言ってた」

「お父さん、元気?」

「ううん。ウィルス性の心臓病で死んじゃった」

「お母さんは?」

「ママは、出かけたきり帰ってこないわ」

「いつ出かけたの?」

「私が五歳の時だよ。優しそうなお兄ちゃんが迎えに来て、連れて行っちゃった」

 何やってたんだ、片割れ。

 きっと邪神が連れて行ったんだ。

「聡さんは止めようとしたんだけど、時間が止まっちゃって」

 俺は洋子の頭に手を翳《かざ》した。

 マナの力で、前世の記憶を解き放った。

「え? 私、こんなところで何を?」

 洋子が俺を見る。

「聡なの?」

「ああ。今、お前は洋子って幼い女の子なんだ」

「あ、そうだった。私、加賀美家に産まれたんだ。父さん、心臓病で亡くなって、母さんは宇宙船で連れ去られて」

「健が乗ってたのか?」

「うん。健さんからひしひしと邪悪な力を感じたわ」

「マデラの器なんだって」

「マデラ? 地獄で会ったわ」

「聡美、お前は地獄に堕ちたのか?」

「違うよ。地獄で素行の悪い奴が暴れてるから、えんま様に止めろって頼まれてね。その時に会ったのよ。俺はこれから復活する、って。聡、お願い。マデラを倒して! 洋子のお兄ちゃんは乗っ取られてるだけだから!」

「乗っ取られてる?」

 なるほどな。やっぱりあれは健さんじゃなかったんだ。

「あと、向こうでお父さんに会って、聡が乗って来た宇宙船を防衛軍の本部に渡してあるからって言ってた。私は驚いたわよ。双子だと思ってた聡が、実は血の繋がってない宇宙人だったなんて」

「防衛軍だね?」

「うん」

「行ってくる」

「気をつけてね。絶対帰って来て。それで、また一緒に暮らそうね」

 俺は防衛軍の本部を訪ねた。

 入り口で、警備員に止められる。

「用件は?」

「宇宙船を使いたい。邪神マデラを倒しに行くために」

「お待ちしておりました、救世主様」

 俺は中に入り、保管庫に案内された。

「これが俺の……」

 俺は宇宙船を調べた。

 大人二人は乗れそうだ。

「これが坂上博士の家に落ちて来たUFOなんですね?」

「そう預かり聞いています」

 保管庫の天井が開いて空が顔を出す。

「すぐに出発なさいますか?」

「すぐって、操作方法もわからないのに?」

「音声操作らしいですよ」

「ハッチよ、開け!」

{声紋認証、失敗}

 俺は喉仏を聡のものに入れ替えた。

「開け」

{声紋認証、ロイド様}

 ハッチが開く。

 俺は宇宙船に搭乗した。

 シートベルトが自動的に閉まる。

「テラ星へ飛び立て」

{宇宙船、ディスカリバー、発射します}

 ハッチが閉まり、猛スピードで宇宙へ飛び出した。

 宇宙船はワープを繰り返し、地球から百万光年離れた、惑星テラへと降り立った。

 ハッチが開く。

「ここがテラ。俺の故郷なのか」

 俺は宇宙船から降りる。

 マナの反応を感じ取り、マデラの居場所を探る。

「こっちか」

 俺は西の方向へと飛び立った。

 辿り着いた先には、邪神城が建っていた。

 中に侵入すると、戦闘員が現れる。

 雑魚は無視だ!

 俺は戦闘員たちの間を縫うように駆け抜け、城の最上階を目指す。

 そして……。

「やい、邪神マデラ!」

「来たか、聡美くん。いや……ロイド・スコットよ」

「ロイド・スコット?」

「お前はこの星に勇者として産まれた。それは、いずれは私の存在を脅かす存在。だから貴様が成長する前に殺してしまおうとも思ったが、この星に攻め込む前に貴様を地球に逃がされてしまってね。仕方なく、私はこの星を侵略しようとした。だが、私は城の衛兵たちに取り押さえられ、処刑されてしまった」

 俺は無言で聞き続ける。

「私は肉体を失い、霊界へと入った。その時だ。霊能力を持った私の手下が、地球に私に相応しい体があると伝えて来てな。それがこの体だったのだ。私はこの体を乗っとるため、我々の科学力でテラの民を洗脳するよう部下に指示し、操り人形と化した奴らを地球に送り込んだのだ」

「いつからだ」

「あ?」

「いつから健さんに入ってたんだ?」

「言ってなかったか。お前が異世界にトリップした時からさ」

 夢じゃなかったのか。

「私の作り上げた幻の世界で遊んでる間にこの肉体を乗っ取ったんだ」

「そうだったのか。だが、お前の悪巧みもここで潰えるさ」

「何を言っている?」

「俺がお前を健さんから追い出して潰すと言ってるんだ!」

「ロイド・スコットよ。私はお前を倒し、全宇宙を我が手中に収めるのだ。邪魔立てはさせん!」

「ふざけるな! そんな勝手な真似、赦さんぞ!」

 俺はマデラの懐に潜り込んだ。

「大事な健様の体だぞ?」

「……!?」

 俺は攻撃の手を止めた。

 その隙に、俺は蹴り飛ばされた。

 床に転がる俺。

「う、何? どうしたということだ」

「……?」

 マデラの様子がおかしい。

「聡……美……くん」

「なんだ貴様? なぜ意識がある?」

「健さんですか!?」

 俺は聡美の声で言った。

「俺のことは、いいから、こいつを早く始末してくれ」

 健さん……。

「わかりました」

 俺はマデラに迫る。

「波!」

 至近距離からの光弾。

「うお!」

 吹っ飛ぶマデラ。

「貴様、この肉体はお前の大事な健のだぞ」

「その健さんの依頼だからな」

 俺はマデラに接近し、追い打ちをかける。

「なんだ? なんなんのだ? なんで貴様はこんなにも強いのだ? 赤レンガ倉庫の時は二体のテラの民に防戦一方だったじゃないか」

「格闘道場で稽古を積んだからな」

「私の、本来の体がありさえすれば……!」

「あっても朽ち果ててるだろうよ」

 俺はマデラを圧倒し、その体をボロボロにして行く。

「これは罪もない十五年前の北高の女子生徒の分」

 マデラを殴る。

「これはお前の勝手な思想の被害者となった健さんの分!」

 マデラを気合で吹っ飛ばす。

「これは、地球で母親を連れ去られた健さんの妹の分!」

 光弾を繰り出し、マデラにヒットさせる。

「そして最後に、俺の分だー!」

 両手を頭上に掲げ、巨大な光弾を作り出し、マデラに思いっきりぶつけた。

 マデラは虫の息になり、床に倒れている。

「とどめを刺してやろう」

 俺はマデラにゆっくりと歩み寄る。

「こ、こうなったら!」

 マデラは、健さんの体から飛び出した。

 マデラの怨霊が俺に迫る。

「不本意だが貴様に乗り移ってやる!」

 俺はマナのバリアを全身に張り巡らせた。

「な、なぜ入れない?」

「貴様にくれてやる肉体はないわ」

 しかし、どうやって怨霊を倒すか。

 俺には霊の倒し方がわからない。

「聡美さん?」

 騒ぎを聞きつけてやって来たのは、健さんの母親だった。

「おばさま」

「怨霊と戦ってるの?」

「はい。しかし倒し方が」

「霊は倒すことはできないけど、成仏させることはできるわ。私がやる」

 母親が呪文を詠唱《えいしょう》し始めた。

「悪しき霊よ、強制成仏せよ!」

「何! やめろ! くそ! うわああああ!」

 マデラの怨霊は、光に包まれ、天へ昇って行く。

「あ、健!」

 母親が横たわる健さんに駆け寄った。

「か、母さん……」

「健、一体何が?」

「俺、霊に憑かれてたんだ」

 俺は健さんに歩み寄った。

「健さん……」

「聡美くん」

 痛そうな顔で起き上がる。

「助けに来てくれて、ありがとう」

「当然じゃないですか。健さんは私にとって大切な方なんですから」

 玉座にテラの民がやって来る。

「私たちを解放して下さり、助かりました」

「え?」

 俺は振り返った。

「マデラが倒れ、私たちにかかっていた洗脳も解けました。本当にありがとうございます」

「あの、ロイド・スコットって知ってる?」

「ロイドは私の息子ですわ」

 母さん。本当の母さんだ。

「母さん!」

 俺はテラの女性に抱きついた。

「えっと、お嬢さん? ロイドは男ですけど」

「わかってる。だからさ」

「あなた、ロイドなの?」

「うん」

「ああ、どうして女の子に?」

「入れ替わっちゃったんだ」

 俺は女性を放した。

「健さん、どうやってここに来たか覚えてます?」

「えっと、確か、マデラの戦艦で」

「マデラの戦艦なら、城内の船着場に」

「健さん、おばさま。帰りましょう?」

「ああ、ロイド。せっかく会えたというのに、もう行ってしまうのね?」

「ごめん」

 俺は乗って来た宇宙船を戦艦に積み込み、健さんと母親と一緒に地球へと戻った。



 マデラの戦艦が地球に着いた。

 俺は宇宙船を戦艦から下ろした。

 戦艦をテラの民に任せ、俺たちは加賀美家へと戻る。

「ただいまー」

 母が挨拶をした。

 トコトコと洋子がやって来る。

「ま、ママ……!」

 洋子が母にしがみついた。

「あ……」

 洋子が健さんに気づく。

「ママを連れてっちゃった人」

「ママはね、この人とお仕事をしていたの」

「そうなんだ。もうどこにも行かない?」

「行かないわ。ずっとそばにいるわよ」

 俺は健さんの裾を引っ張った。

「もう健さんを狙う輩はいなくなりました。だから私、帰ります」

 俺は聡を出現させる。

「洋子ちゃんには聡を」

それじゃ──と、俺は防衛軍へと足を運んだ。

 そして、タイムマシンで十年前に戻るのだった。

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