第21話:通夜
俺は自室で目を覚ました。
時計は四時半、早朝だった。
俺はリビングへと降りた。
楓がテレビを見ていた。
「早いね」
「起きるのこのぐらいだよ」
「そうなんだ?」
「うん」
「俺ちょっとジョギング行って来る」
「気をつけてね」
俺は外に出た。
外にはマスコミたちが押しかけていた。
どうやら昨日の一件を聞きつけた取材陣が俺に会いに来ているようだった。
困ったな。
「坂上さんですね! 怪物から女子生徒たちを助け出したそうですね」
「いや、あはは……」
「お話、聞かせて下さい!」
「話すことはありませんよ」
それじゃ──と、俺は家の中に戻った。
「マスコミうぜえ!」
「どうしたの?」
楓がやって来た。
「マスコミがいたんだ」
「そうなんだ。裏口から行く?」
「うん」
俺は裏口から外に出た。
「あ、坂上さんが出て来ました!」
やべ、ばれた!
俺は脱兎のごとく逃げ出す。
マスコミが追いかけて来る。
「こっちよ!」
何者かが俺を誘導する。
俺はそれに気づき、路地裏へ逃げ込んだ。
表通りを走り去って行くマスコミたち。
「あなたは?」
「猪俣よ。警視庁未確認生命体対策班に所属してるわ」
ああ、五年前の。
この人、五年後には俺のこと忘れてるわけか。
「もう大丈夫ね」
表に出る二人。
「猪俣さん、公安委員会じゃないんだ?」
「京子を知ってるの?」
「え?」
「私は京香。京子の双子の妹よ」
「妹さんだったのか」
「マスコミはしつこいからね」
「メタン人よりはマシですよ」
「坂上 聡美さん?」
「なんですか?」
「聞き覚えのある名前だから」
「気のせいじゃないですか?」
「いえ、気のせいじゃないわ。隕石が落ちた坂上家の長女も聡美ちゃんって言うのよね。偶然かしら?」
「五年後の未来から来ました」
「そんなことができるのね」
「助けてくれてありがとうございます」
俺はそう言って、その場を離れた。
行くあてもなく、街を彷徨う。
そういえば、今日は。
俺は坂上夫婦の通夜の日であることを思い出した。
当時はショックのあまり、葬儀に参加することはしなかったが、今回は参加しようと思った。
俺は通夜に参列し、香典を渡した。
「あれ? 聡美ちゃん?」
「え?」
俺たちを引き取った親戚の叔母が声をかけて来た。
俺たちは子どもの時から身長が高かった。
顔が同じなら間違えるかもしれない。本人だけど。
「家にいるって言ってたよね?」
「人違いじゃないですか?」
「いいや、あなたは聡美ちゃんよ。兄さんの子を間違えるわけないわ」
「私、高校生ですよ?」
「こんな時に何冗談を言ってるの?」
「私、帰ります。明日、また来ますので」
「あ、ちょっと」
俺はその場を離れた。
やっぱり来るべきではなかった。葬儀の参加はやめよう。




