第二話 「何もない」
テスト期間中にちびちび書いてた2話目です。
水の魔法陣の一件をなんとか終えて、さぁ寝るぞという時にエマがやってきた。
「なんですか?」
「いや、仮様を拝みにね」
神様扱いするならこんな馬小屋はやめていただきたいのだが。
それに、
「それで、本当は?」
このタイミングで来るということは何かしら意図があるに決まってる。
俺の言葉にエマは少し目を細め
「拝むついでに話そうかなと、ね」
俺はため息をついて
「はぁ……なにを話しに来たんですか?」
「いやなに。君がここのことを何も知らなそうだから教えてあげようかなと。
ここはさっき言った通りアーリノ村。バーダント大陸っていう世界最大の大陸の南の方にある、アイギス山脈の盆地にある村なの。 盆地だから雨も少なくてね。半ば死んだ土地で、なんとかあの魔法陣で耐えてたんだけど……」
そういうとエマはこちらを睨んで
「誰かさんが壊したからね」
くっそ、それが本題か
「そ、それはすみません。ですが明日からはなんとか」
「いやぁ。別にいいんだよ。いざとなったら君をまた生贄にするだけだしね」
「へ?」
「なんてね。冗談冗談」
目は笑ってないように見えるがそういうことにしておこう。
「さぁ、こんな時間だ。さっさと寝て明日に備えよう」
異世界生活二日目が始まった。
昨日は転生していきなり村人に殺されかけて、夜中もいつ寝込みを襲われるかたまったもんじゃなかった。
そんな状況で眠れるかと言われたら
「──まったく眠れなかった」
そりゃそうだろう。
あんな状況で寝られる奴なんているのか。
ていうか、何なんだ馬小屋って。
そりゃまともな家泊まらせろとは言わないけど。
マットが藁なのもあって二日目からいきなり寝不足だ。
そんな事を心のなかで愚痴っていると
「おはよう。昨日は眠れた?」
「おはようございます。えと、村長?」
「ハハッ、エマでいいよ。それに敬語もなしでいい」
「じ、じゃあ、エマ」
「よろしい」
そんな事を話しながら外に出ると
「寒っ」
外はめちゃくちゃ寒かった。
あれ?
「何で馬小屋の中はあんなにあったかいんだ?」
「あぁ、それは馬小屋のなかに出力の弱い、火の魔法陣があるからだよ」
そうだったのか。馬小屋をバカにしてすみません。そしてありがとう
「てゆうか、神様なのにそんなことも知らないの?」
できる限り平穏を維持したつもりだが顔の引きつりを抑えられたか怪しい。
おそらく彼女は軽口のつもりだったのだろう。
だが、昨日の一件もあり、寝不足な俺にはそんなことを考える余裕もなく、異常に驚いてしまった。
「えと、それは、」
「それは?」
「……神は全知全能じゃないからね。俺だって知らないことはあるよ」
すると、エマは目を細めて
「ふ〜ん。まぁ、『今は』そういうことにしておこう」
そう言って彼女は笑いながら俺の肩を軽く叩いた。
「……それより、昨日も言ってたけど魔法陣ってのはなんなの?」
「魔法陣?」
「うん。結局なんなの?」
そういうと、彼女は少し悩んで
「難しいな。まず前提知識として魔法を使うためには空間を漂う魔力を集める必要なんだけど」
「その魔力とは魂の言い換えなんだ」
「……魂の?」
「そう。」
「それで、普通の魔法程度ならこんなふうに」
──火種
そうエマが唱えた瞬間、俺は思わず目を見開いた
「指から火が……」
あまりの衝撃に喋ることができずにいると
「──とまぁ、こんな感じで……どうしたの?そんなに驚いて」
「いやいやそりゃ驚くだろ。だって指から火がいきなり」
エマの顔は少し曇って
「ふ〜ん。魔法陣の存在を知らなかったり、魔法に異常に驚いたり、いくら全知全能じゃないとしてもあんまり使えないんだね。神様って。やっぱり昨日も偶然だったのかな……」
そういうとエマはまた少し悩んで
「じゃあ仮様。いますぐに雨を降らせてよ」
は?
「だって昨日はすぐに降らせてたでしょ?もともとここは雨少ないんだしさ。水の魔法陣がなくなった今、君だけが頼りなんだよ」
「いや、昨日降らせたし今日は……」
「たくさん降るに越したことはないでしょ?それとも」
エマは笑みを消さなかった。けれど、その声からは先ほどまでの軽さが消えていた。
「まさか、神様じゃないの?雨を降らせないの?それじゃあもう用なしだね」
(まずい。どうする、なにか、なにかないか……)
周りを見渡す。畑、人、晴天の空、家。
しかし
(……なにもない)
「あれ?急にだんまりだね。やっぱり、昨日のはハッタリだったのかな?」
「いや、ハッタリではなくて、その……」
「さっきから思ってたけど、誤魔化してばっかだね」
もう逃げられないか……
「それはすみません。実は、昨日のは完全に俺の力ってわけじゃなくて、知り合いの神の力を借りただけでして。さすがに連続でお願いしちゃうと怒らせちゃうのでね」
心臓がうるさい。
冷や汗が止まらない。
それでも、なんとか顔だけは平静を装った。
「なるほど。なら仕方ない、ともならないかな。だって水はそこまでためておけないんだし」
場の空気がさらに凍りついた
「やっぱり君を生贄にしたほうがいいのかも」




