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第7話 神の残光

 『Desire Verse Online Next 』の始まりの町。第1のホームタウン。それは『Desire Verse Online』の時代と同じ南都ブランシュと呼ばれる街だった。

 初期リスポーン地である中央広場はプレイヤー達でごった返しており、阿鼻叫喚の様相を呈している。俺は先ほど見たスキルのことを一旦頭の隅に放り込み、まず自分の姿を確認する。顔は確認できていないが、ぱっと見の範囲ではあまり人間との差はないように見える。翼や尻尾、鋭い爪などの類は見当たらないのでとりあえず穏当なハーフの範疇で収まったらしい。


「しかしこれじゃあえび転は絶対見つからんな……」


 リアルでは凄まじい長身のえび転であるが、彼女はデザバス時代は非常に小柄なアバターを使っていた。なんでも憧れは不便に勝る、とのことだった。それがこの世界でも適応されているのであれば、この雑踏の中で合流するのは不可能に近い。踏まれていなければいいのだが。


「とりあえずメールするか……。北地区のゼルギオスの神殿に集合で、と」


 懐かしの場所を指定する。5年前の最後の戦いの舞台こそその神殿である。もっとも闘宴の間は普段封じられており、レベルカンストかつ武神への信仰値が一定以上でないとまず入ることすらできなかったのだが。

 ところどころ変わっている風景もあるが、通い慣れた道。先ほど入手した『走破Lv1』のスキルのおかげでスタミナの減少が抑えられているのが嬉しい。だがこの足取りの軽さはそれだけではない気がする。明らかにデザバス時代よりも体の動きに思考とのラグがない。ごった返す街並みを駆け抜け、神殿へたどり着く。


「ようこそお越しくださいました、冒険者様。ここは武神ゼルギオス様をお祀りした神殿でございます」


 神殿に入ると、シスターに話しかけられる。名前の表示はシスター・イルマとなっており、Lv70と横に表示されている。少なくとも今、絶対にケンカを売ってはいけない。一介のNPCにしては高すぎるのでクエストフラグを持っていると見た。


「少し知人と待ち合わせをしていまして。その間に参拝させていただけますか」

「まあ。武神様を信仰されているのですね。それではこちらへ。3柱の眷属神様たちもここに祀られています」

「眷属神かぁ。デザバスの頃は居なかったな……ってんん!?」


 見慣れた巨大なゼルギオスの像の足元に、3体の像が立っている。

 そしてその姿は――。


「槍神ギンセイ様、拳神エビテン様、剣神クロエ様です。ご存知ありませんか?」

「……いや、知っています。ええ、俺は彼らを知っています」

「かの3柱の眷属神様たちは、200年前のこの神殿にて、ゼルギオス様が天上へと誘った過去の冒険者様たちと伝えられています。あら、貴方泣いて……?」

「すみません……少し、感慨深くて」

「そうですか……心を安らかに、ごゆっくり」


 神像をじっと眺める。間違いなく過去の自分たちの姿。

 銀星は槍を掲げ、えび転は手甲を打ち鳴らし、俺は折れた大剣を携えている。俺にとってあの戦いは5年前だが、この世界では200年も経過していると。この様子だとシンシアやふぉーりなーもどこかで祀られているに違いない。

 どれほどの時間眺めていただろうか、神殿の扉が開く音が聞こえた。

 耳に届く聞き慣れた声。


「お待たせクロ坊。……うわ、これ私らだよね。ふうん……あの神ジョブってただの称号じゃなかったんだ」

「ああ……。本当に神様になってたんだなぁえび転……って、ええ?」

「……何?」

「あの……、随分と涼し気な恰好で」

「そういう君も……ええと。せ、つ、な。セツナ。なんというか色白くない?」

「鏡みてないから分かんないけど、髪は白にしたぞ」

「いや、全体的に。肌とかも」


 振り返った先にいたのは、背中から黒い翼を生やした非常に長身で軽装の少女。明らかに混魔種を選んできている。服装が簡素な初期装備のせいか、非常に胸の主張が激しい。

 プレイヤーネームはKAN7。彼女にしては分かりにくい名前のように感じる。

 名前を見ているのに気付いたのか、慣れた手つきでコマンド操作を行う。文字列が変換され環七と日本語表記になる。


「……住所?」

「私は神奈川住み。ただの本名のもじり。君も?」

「うん、クロエはもう使わないことにしたから」

「クロエも本名のもじりだったんだ?」

「バレた?」

「なんとなくそうなんじゃないかなって。クロ坊安直だったし」

「こっちではセツ坊はやめてよ?俺ももう20越えたんだから」

「じゃあセツナ。私もカンナでいい。さんが付くと距離を感じるってシンシアも言ってた」

「了解、カンナ」


 えび転改めカンナが神像に目を移す。相変わらず何を考えているのかはその表情からは読み取れない。過去の自分の像をじっと見つめて難しい表情。


「ところでさカンナ。継続ボーナスの割り振りと結果に変なのなかった?」

「……STRに半分、残りはスキルガチャに回した。その聞き方、セツナもあったんだ、レガシースキル」

「ああ。『剣神の残光』。カンナは?」

「お察しの通り。『拳神の残光』。せっかくえび転から離れようとしたのに」

「効果は確認した?これ、明らかに始めたてのレベル1プレイヤーが持ってていいものじゃないぞ」

「格闘系武器、防具の熟練度上昇率5倍、格闘系武器、防具の装備時の必要ステータス撤廃、デザバス時代の格闘武器系スキル完備。アンロックされてない部分もある……控えめに言ってこれはチートの類」

「武器種が違うだけで効果はほぼ同じってことか……」


 この世界では悪目立ちしたくないと決めた矢先に悩みの種が出来てしまった。



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