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Desire Verse Online Next ~悪童と呼ばれた剣神、次の世界では悪目立ちせずに過ごしたい~  作者: 廿楽
第二章 『アフター・グロー』

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第37話 執念の目

 サンダーバードの時もそうだったが、エリアボスとされているモンスター名に聞き覚えは無い。しかし、名前からだけでも推測できることはある。

 船上、あるいは水中での戦い。またしても俺の戦闘スタイルでは困難な相手。同様にエタニティもそこまで得意な相手ではないはず。というよりは、まともに戦えそうなメンバーが、飛行を解禁したバレット以外に思いつかない。



「おっ、今回の挑戦者たちは早かったな。見なよ、なかなか壮観だぞ」



 お姉さん(♂)が船着き場を指差す。俺が目で追うと、そこに次々と赤い死亡マーカーが増えていく。

 30分のカウントダウンが刻まれているこれらが、死亡したプレイヤーのリスポーン地点となる。流石に水上で全損して、水中にリスポーンなどということは無いらしい。



「ひのふのみの……うん、30人全員死亡。マーカーの増えるタイミング的に、船ごと水中に引き込まれて溺死したのが多いな。これがあるから厳しいよなぁ」


「積極的に船を狙うように、AIが組まれているのでしょうか……」


「可能性はある。今のところ船が無事な状態で帰ってきた奴がいないからな……っと、悪いな、話し込んでしまって。挑むのなら頑張りなよ」



 お姉さん(♂)はそう言い残すと、足早に行ってしまった。親切な人だったが、名前を聞きそびれてしまった。



「どう思いますか、お兄様」


「ボスのことか? それともあの男のことか?」


「両方と言いたいところですが、後者ですね。流石に行動が非合理的過ぎます」


「だよなぁ。バレットはどう思う?」


「……私はそんな経験がないけど。よっぽど譲れない何かを、戦場に置いてきちゃったんじゃないですかね。だからそれを解決するまで、ここを離れられない。私の勝手な想像ですけど」


「……ボクとしても気になることができたから、少し離れるね。セツナが呼んでくれれば分かるから、じゃあね」



 そういうとヨルは、ててて、とどこかへ行ってしまう。自由か。

 俺個人的には話を聞くぐらいならしてもいい、くらいの温度感だったが、みんなもそれなりに気にはなる様子。……ヨルはよく分からないけど。

 船着き場に並ぶ死亡マーカーの群れ、それを眺めて項垂れる男、牙刃丸(キバマル)の元へと足を運ぶ。



「随分と熱心にパーティ募集をしてたな、あんた」


「おお、君たちもエリアボスに挑むのかい? じゃあ俺を連れてっちゃあくれないか? これでもあのイカ野郎には6回も負けてる、情報ならあるぜ」


「悪いが現状はまだ挑むつもりはない。メンバーも足りていないからな。それよりは、なんでそんなに必死なのかが気になってさ」


「……俺はあのイカ野郎をぶっ殺さねえといけねえ。何回死のうと、必ず」



 そう呟く牙刃丸(キバマル)の表情は暗かったが、その眼だけが血走っていた。明らかに普通の精神状態ではないように見える。その剣幕に、エタニティとバレットがややたじろいでいるのがわかった。



「いやすまねえな、クラーケンに挑むつもりになったら言ってくれや。俺ァここでずっと居るからよ、待ってるぜ」



 そう言い残すと、また募集の呼び込みを再開していた。

 当然彼の言葉に耳を貸すものは、いない。



「なんなんでしょう、あの人……明らかに目が普通じゃないですよお兄様」


「バレットの言っていたことが当たってるのかもしれないな。取り返しのつかない何かをクラーケン戦で失ったような、そんな感じが」


「私の勘だと、多分ビンゴです。でもなんなんだろう、このゲームにおいて取り返しのつかないことって。装備やアイテム、お金、プレイヤーの命ですら取り返しがつくのに……」



 昨日のバレットの発言を思い出す。

 次のレベルに至るまでの経験値、所持金が膨大なハイレベル帯ならともかく、今の私たちにデスペナで失うものなんてほぼない。それは彼にとっても同様のはず。

 でなければ最初に死んでから続けて5回も死にに行っておらず、何度死んでも殺してやる、という発言にはならない。

 つまりは彼個人の損失ではなく――。



「NPC……か?」


「ああ……なるほど。そういうことですか」


「どういうこと? NPCってヨルちゃんたちのことですよね?」


「ああ。バレットはデザバスをプレイしてないもんな。そりゃちょっとズレるか」


「そうですけど、何が――」


「このゲーム内のNPCは、一度死亡したら基本的に復活することは無い。文字通り、取り返しのつかない命なんだよ」


「えっ……」



 バレットが息をのむ。この場にヨルがいなくてよかった。

 あいつはあいつで俺たちプレイヤーを外に行ける者、として自分たちと区別していたあたり、その辺についても自覚はあるのかもしれないが。



「NPCの命を巡って、デザバス時代にもいくつか事件がありました。その中で最もゲームそのものに影響を与えたものに、皇城壊滅事件があります。皇都ミドラの城を、中にいた皇帝を含む600名以上のNPCごと爆散させたプレイヤーは、監獄送りよりも重い、あの世界からの永久追放処分となりました。あの時は運営の介入によってロールバック処理が行われましたが、いくつかのNPCのAIが損傷して死亡したと聞きます」


「その他、メインストーリー内のイベントで死亡したネームドNPCも、当然生き返らない。後でアンデッドになって感動の再会というクソッタレなことはされたが」


「じゃああの人も、誰か大切なNPCを……?」


「そこまでは分からねえ。昨日がリリース初日、クィリナスの開放後、彼が最初にクラーケンに死亡させられたのも昨晩だ。そこまで入れ込めるNPCが居たのかどうかは正直分からん……」


「わたくしたちでいえばヨルちゃんが死亡したようなものでしょう。短い付き合いでも、仇討ちに注力することはあると思います」



 こればかりは本人に聞かないと分からない。だがある程度の見当はつけた。

 現在は木曜日。ギルド内でのドラコニス水系の冒険の予定は土日。

 どうやら穏やかな週末にはなりそうにない。

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