表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Desire Verse Online Next ~悪童と呼ばれた剣神、次の世界では悪目立ちせずに過ごしたい~  作者: 廿楽
第一章 新たな旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/52

第20話 壊滅のサンダーバード

 レイド戦で最も大事なことは何か。それは穴を作らないことだ。

 作戦上の穴があるならその時点で勝率が下がる。戦闘中、戦列に穴が開けばそこから突き崩される。個々人の構築上の穴はそれ以前。そもそも参加すべきでない。

 今回のサンダーバード戦、俺は完全に穴でしかなかった。

 近接戦闘しかできない上に、作戦上も浮き駒。戦列の形成にも寄与できていない。控えめに言って寄生と呼ばれても差支えがない。


 カンナが自分を犠牲にして作ってくれた、この好機だけは。絶対に逃すわけにはいかない。



「だあああああ――っ!!」



 右手に構える牙の大剣、荒々しい造りの刃に灼光が灯る。

 重剣初級単発スキル、アークスラッシュ。地面を削りながら描いた孤が、サンダーバードの左脚に一条の斬線を刻み込む。



(硬い! 鱗で覆われている分、体より頑丈か!)



 最もダメージ期待値が高い初撃の失敗を悟り、スキル硬直後の体を強引に捻らせる。サンダーバードの爪による反撃が地面に突き刺さった。

 俺の回避とほぼ同時に、後衛からの投射攻撃が飛来するのが見えた。矢が、魔法が、サンダーバードへと、そして自分へと降り注ぐ。

 後衛班に気を取られたサンダーバードの胴体に、大剣を叩きつける。

 大したダメージにはならない。だがそれでもこの怪鳥の意識を揺さぶり続ける。モンスターのAIに正着手を選び取らせる余裕を与えない。



(迷え、迷え。足元の虫けらと、遠くの虫けらと。生きるためにお前が先に処理すべきなのはどっちだ?)



 ぎょろり、と目が合う。

 どうやら足元の虫けらを踏み潰すことに決めたらしい。



「正解だ」



 爪、嘴、爪、翼による殴打、嘴。

 巨体に似合わない俊敏さで攻撃が続く。

 俺に狙いを定めている間は、遠距離攻撃が素通り。俺が耐える時間が延びれば、それだけ削れる体力が増える。タンク役というのも案外悪くない。



(とは言え、こいつが何時飛び立つかはわからんからな)



 爆撃に竜巻、雷球。その辺りが使われ始めるとまずい。

 だからこそ今、可能な限り地上戦を引き延ばす。

 何度目かも数えるのを忘れた斬撃を、右の翼に叩き込む。飛び散った羽が赤く発光するのが見えた。



「まず、い」



 この至近距離で爆発はまずい。

 後方へ飛び退ろうとした一瞬の間隙に、嘴が伸びてきた。



「ごっ、あ!?」



 俺の右胸に嘴が突き立てられ、自身のHPバーが急速に減少する。

 直後、視界の端で羽が爆発した。


 

「おるァ!」



 飛び込んできたのはゴドーとガンマ。

 ゴドーは爆破の衝撃を大楯で緩和し、ガンマがサンダーバードの横っ面に一撃を加える。

 俺に刺さっていた嘴が引き抜かれ、痛みに顔が歪むのを感じる。



「悪い、カバーが遅れた」


「死んでないならセーフだろ。ありがとうゴドー」


「今の爆破は相手にもリスクだったみたいだな。見ろよ」



 土煙の向こう側、サンダーバードがこちらを睨み据えていた。

 しかしその姿はかなり痛々しい状態である。今の爆破に巻き込まれたのか、翼の一部が黒く焼け焦げている。胴体にもまだ火が点いており、火傷の状態異常が付与されている。

 流石に地上では分が悪いと見たか、サンダーバードは大きく翼を羽ばたかせ、空へと帰還する。



「ボーナスタイムは終わり、か」


「まずは回復しとけ。まだ相手のHPは三分の一は残っている」


「もう一度叩き落してやる。休憩してこい」



 ゴドーとガンマにその場を任せ、後方へと引き下がる。

 サンダーバードの敵視はまだ俺に向いているようで、追撃の羽が飛んでくるが、かろうじて回避した。



「セツナ、カッコよかったよ」


「どうせならとどめまで行っておきたかったんだけどな」


「自爆覚悟の爆破は聞いてたパターンになかったからね」


「カンナは大丈夫か、足」


「もう行けるよ。今は指示まで待機中」


「そっか……じゃあ俺も回復、と」



 回復薬をがぶ飲みし、胸の傷を癒す。体力は回復するものの、右手には痺れた感覚が残っているような気がする。



「セツナさん! バレットから伝言を預かってきました!」


「ミリンか。君のアイスショットは良かったぞ……伝言って?」


「はい! 今から数えて、2回目の竜巻の予兆が来たら、カンナさんと全力で接近して、攻撃態勢に入ってください! 地面に引きずり下ろす、とのことです!」


「2回目ね、了解」


「こっちも了解」



 遠隔アタッカー班に駆け戻っていくミリンを見送り、右手を何度か握りなおす。痺れはもうない。

 見ればタンク班に今まさに竜巻が叩きつけられている。

 竜巻の持続時間は、5秒。

 その間にも羽が投下され、体の周囲を旋回しているだけだったサンダーボールも、緩い狙いと共に飛来している。弾速は速くないが、如何せん大きい。



「発狂タイムってところかな」


「地上戦の分の悪さも学習したし、下手すると最後まで降りてこないかも」


「でもバレットが出来るって言ったんだ、信じるしかない」


「あの子、セツナが戦ってるときの援護射撃すら、一度も外さなかった」


「通りで。矢は一本も俺には飛んできてない」



 本人にそのつもりはないのだろうが、ミリンのものと思われる氷弾や、その他プレイヤーの火球は俺の体を何度も掠めている。乱戦の中への援護射撃だ、そこは仕方ない。

 だからこそ、バレットの特異さが際立つ。

 亜音速の鉄風雷火の中で培われた才能は、本物だ。


 サンダーバードが、再び蒼穹(ソラ)へ舞い上がる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ