第12話 悪意
今更事ではありますが、ジャンル設定をファンタジー-ローファンタジーからSF-VRゲームへと変更致しました。検索の際に不都合があるかもしれませんが、ご了承ください。
キングの討伐が終わると、王に引き寄せられていたイノシシ達は散り散りとなり、戦闘は終了した。
4人のルーキー達はバレットを除き肩で息をしてへたりこんでいる。
とりあえず脱落者なく特殊モンスター討伐が完遂できてよかった。
が、問題はここからである。カンナに対して疑問をぶつけるゴドーへの対応だ。
「なあカンナよ。俺の勘違いだったら申し訳ねえんだが、お前、『拳神』なのか?」
「……まあ、うん。どこでばれた?」
「あんなデスコンボをシステムアシスト無しで繋げられる変態が何人もいるわけがない。いたら困る。……しかしまあ、適当に声かけたつもりがとんだ大物を引っかけちまったもんだ」
リザルト画面を操作しながらゴドーが頭を搔く。まさかこんなにあっさりと認めると思っていなかったのか、若干面食らった様子。
「セツナの方も内密にって言ってたし、まあ色々あるわな」
「気を遣わせて悪い、ゴドー」
「構わんさ。自分でギルド立ち上げてデカくしようってんならまた話も違うんだろうが、今のところその予定もないしな。レベルも上がったことだし、キリも良いから一度戻るか……」
「なんなんですか貴方たちは!言いがかりはやめてください!」
後方からミリンの声が上がる。カンナ、ゴドーとほぼ同時に振り返ると、ミリン達4人が別パーティのプレイヤーと口論しているのが見えた。
「どうしたお前ら、穏やかじゃねえな?」
「ゴドーさん! この人達が急にいちゃもんを付けてきたんです!」
「随分な言いようじゃあねえかお嬢ちゃん。こっちの獲物を横取り、挙句にはこっちのメンバーに攻撃しておいて保護者が来たら被害者面ってか? どういう教育してんだオッサン?」
明らかにガラの悪い男がバレットを指して攻撃されたとアピールしている。
バレットは心底あきれ果てた表情で無言を貫いている。ほぼ言いがかりだろうとは思ったが、攻撃を加えたというのは真実かもしれない。
「俺は別に保護者ってわけじゃねえんだがな。バレット、その時の状況を説明してくれ。こっちはキングの対応であまりそちらを確認する余裕がなかったんだ」
「……私たちは当初の予定通り、ゴドーさん達の方から溢れた取り巻きのイノシシを狩っていた。そこに彼らが手負いのイノシシを追って乱入してきて、そのままこちらが攻撃していたイノシシも狩ろうとした。2度警告をしたが聞き入れられなかったので撃った。それだけ」
非アクティブ状態のモンスターが誰の物か、という問いであればそれは最初に殴ったプレイヤー、或いはパーティの物である。
同じ狩場にポップしたモンスターを他人が狩ったところで咎められることはまずない。だが戦闘状態にあるモンスターを横から攻撃するというのは明らかにマナー違反だ。
「都合の良い様に言ったもんだ。俺らの獲物を先にやったのはお前らじゃねえか」
「それはあなた達が、イノシシを私たちの射線に追い立てたから!」
「証拠がねえなあお嬢ちゃん。仮にそうだったとしても、横取りしたのは事実で、ましてやそれを咎めたのを逆ギレして攻撃してきたんだ。回復薬だってタダじゃねえんだぞ、ああ?」
「そんな……!」
理解した。デザバス時代にもあった迷惑行為の一つ、当たり屋である。
モンスターを追い立てて他のパーティに倒させ、それにいちゃもんをつけて金品をせしめるやり方だ。
プレイヤーが追い立てられるような小型のモンスターでしか成立せず、そのようなモンスターの補償など雀の涙以下のものでしかなかったため、早々に廃れたと聞いたが、リリース開始直後の今ならば、ということだろうか。
「こちらにも非があることは分かった。補償しろというのであればイノシシ1体分のドロップ品、それに回復薬を提供しよう」
「お前らさっきでけえイノシシと戦ってたろ。アレのドロップをいただこうか。弓で射られた身内が怖がってそのままログアウトしちまってよ。トラウマになったんじゃあねえのか? それをたかだかイノシシ1体分の肉に回復薬だあ? 寝ぼけてんじゃねえぞおい」
俺の隣でカンナの機嫌が刻一刻と悪くなっていくのを感じる。
初心者には優しく、身内にはもっと優しくがモットーの彼女からすればこいつらのような屑を許容できるはずがない。
「言っとくが俺たちが全員で挑めばあんなでけえだけのブタあっという間に倒せるんだ。それが欠員が出て狩れませんじゃ機会の損失ってやつだよなあ? さっさとドロップ品置いて帰りな!」
「……言わせておけば」
「待て、カンナ。言いたいことは山ほどほどあるが、あちらさんの言い分も一理ある。キングならまた狩ればいい。俺とカンナとセツナがいれば難しくないことだ。そうだろう?」
「あんな連中とはさっさとおさらばするに限るぞカンナ。屑が伝染る。」
「はんっ、女の陰に隠れてじゃねえと悪態もつけねえガキは引っ込んでろ。口だけなら何とでも言えるってのに、それすらお姉ちゃんにヨシヨシされてねえと出来ねえとはお笑いだよなあ?」
相手のリーダー格と思われる男が嘲笑し、取り巻きが同調する。
カンナの顔から表情が抜け落ち、ゴドーも額に青筋が浮かんでいる。
ルーキーたちは事の次第を見守って震えているが、バレットだけは俺をじっと見ていた。
「……ゴドー、悪いけどキングのドロップ品出してくれ」
「お、おう。完品の牙の大剣が痛いが、どうせ牙を街に持っていけば作れるくらいのもんだ。ほらよ」
「サンキュ。確かにこりゃあ良いもんだ」
ゴドーから預かった肉、牙、毛皮、大剣をオブジェクト化し、未だ俺を嘲笑う相手の足元にそれらを放り投げる。
「こんだけ笑われて言い返しもしねえ、つまらねえ男だなテメエは」
「無用な喧嘩はするなと、元ギルメンに言われてるからな」
「お利口さんでえらいねえ~。とっとと失せろ腰抜けが」
アイテムを拾おうと男が屈む。あまりに無防備なその恰好を見て。
「ごめん、銀星。シンシア」
届かない2人への謝罪とともに、渾身の力で男の顔面を蹴り上げていた。




