第五十一話 東へ東へ
カノンが燃え上がった。
「まあそりゃ木だからなァ。火も付くわ」
鍛冶屋の中に戻ったフーガとカノンは、少し遠くのほうで何か準備をしている銀鍛治に笑われているところだった。
「だーってそんな、まあそりゃ木だけどさ、かっこいいじゃん。実際あの状況で最適だったじゃん。それに銀鍛治が言ったことやっただけだし」
「熱かったです」
「わァってるよそんなの。オレも、うすうす燃えるだろなァとは思ってたしよ」
「じゃあメタール飛ばせば良かったって?」
「火属性じゃないと手こずっただろうなァ」
「じゃあいいじゃんか」
「そもそも怒ったりなんかしちゃねェっての」
銀鍛治はまた笑いながら、いくつかの金貨と復活草を両手に掴んで戻って来た。そして、何を言われるより先にカノンの葉の中にずぼっと突っ込み、ゆっくりその場にあぐらをかいた。
「アレだろ。東の方行くんだろ? アジタートってこたァよ」
「あー、そうだね。このまま東に行くよ」
「じゃあァーよ。アレだ。その後オレらのとこも行ってみるといいんじゃねェか」
「俺らのとこ、って言うと?」
「オリエントのことだろう」
カノンの葉の中から、吸魔の魔石の声が出てくる。カノンは根を葉の中に伸ばし、さっき突っ込まれたものをかき分けて吸魔の魔石を取り出した。
「さっき熱くなかったですか?」
「そんなに」
銀鍛治はその白い魔石をじっと見つめてから、あくびをする。
「ああ、そうだ。この辺じゃオリエントって呼ばれてる3つの都市のことだ」
「オリエント……」
フーガが一度反復する。
「そこにしかない魔法の使い方も技術もある。反逆者やんなら強さも必要だろォ?」
「そうですね……寄れそうなら寄っておきますか?」
「船に乗って行ける暇があったらなァ」
「行けますかねぇこれ」
「あー、そう言や、オリエントに反応して出た吸魔」
カノンが持っている吸魔の魔石へ、目だけを向ける。
「どうした。オリエントの竜族」
「贔屓に会えたらよろしく言っとくよ」
「ふん……狻猊でも簡単には会えない訳か」
「元だ、元。強さを失った落ちぶれた爺さんに似合う名前は無かったからなァ」
「僕らの分からない話してる」
「ですね、なんか」
「爺さん2体の話にあからさまに退屈そうにするんじゃねェよ」
「俺を巻き込んで爺さんとか言うな!」
「ジジイだろオレらァよォ!」
一方は怒り勢いよく、もう一方は大笑いしながら大きな声で言った。
「クソ、頭イテェ……」
許容量以上の魔力を受け倒れていたゴーレム。暗い夜の中、頭を抱えて立ち上がった。辺りを見渡しても、どこにも反逆者の姿は見当たらない。
「チャンスを逃したな……」
ゴーレムは思わず天を仰ぐ。すると静かな夜の中、どこからともなく騒がしい音が聞こえてくる。面倒臭さをどこか感じながら、それが聞こえる方向を見た。
「いたぞ! 身なりの良さそうなゴーレムだ!」
「本当! 身なりの良さそう!」
「身包み全部剥がすドギャ!」
「クソ面倒臭そうなの来やがった!」
次回 第五十二話『狼の街』
9/26 (土) 20:00更新予定




