第四十七話 銀鍛冶
狼の群れに襲われた。
「いやァ、なんか騒がしいと思ったらなんかバチバチしてたもんだから来てみたら」
長く、ひらひらとした毛の生えた尾をたくわえたその魔族は、鋭い犬歯と白い歯を見せて笑いながら、小さなちゃぶ台の向こうにいたフーガとカノンへ2体分の湯呑みを差し出した。
「やーまさかあんなにいるとは思わなくて」
「油断するからですよほんと」
向かいにその魔族は湯呑みを持ってあぐらをかき、湯気立つ中身をぐいっと一口で飲み干した。
「まァー、オレの工房の近くで良かったってもんだ」
どこか独特の訛りのその魔族は湯呑みを置き、前のめりになる。
「いやぁ、助けてくれてありがとうございます。お名前聞いてもいいですか?」
「名前? うーん……銀鍛治って呼ばれてる竜人だ」
「銀鍛治? 本名は……」
フーガが言いかけたところで銀鍛治と呼ばれる魔族が食い気味に割り込む。
「にしてもなんだ。新聞で見たことあるなァお前たち」
「新聞で……?」
「エピックさんじゃないですか」
「あーあの鳥か」
「あァ。なんか変わった、トレント? と一緒にいるスライムだろ」
「ゴーストです」
「いや僕単体でも認識、いやまあ、まあ、しょうがないか」
銀鍛治は大きな声で笑い、膝に手をついて立ち上がり、何も言わずに隣の部屋へ入って行く。
「……今笑ったのは冗談ってことだよね」
「そういう意味だといいですね」
「お前さんらァこれやるよ。あのー、トレントとスライム」
十数秒程度で戻って来た銀鍛治の両手には長い刀が二本握られていた。
「フーガ」
「ゴーストですカノンです」
「細けェこたいんだよ」
「というかなんで急にそんなくれるんだよ」
「偶然の来客が有名魔物だったら嬉しいだろ」
「ですって有名ですってぼくら」
「そっか僕ら有名だよね」
有名だと言うのに名前すら覚えられていないことは忘れ、有名という言葉を好意的に受け取った。
「で、この、なんて言った? この長い、片刃の」
「刀じゃないでしたっけ。聞いたことあります」
「そう! 東の方の」
ちゃぶ台の上に置かれた、刃の長さがフーガやカノンの背丈より若干長い60センチの銀色に光る刀。
「じゃ、さっそく拝借しよっかな」
フーガが刀の柄に触れた瞬間、フーガは一瞬にして爆散した。
「フーガさーん!?」
「あららァ」
次回 第四十八話『対魔族刀』
8/29 (土) 20:00更新予定




