第四十五話 調子に乗るとロクなことにならないからやめろ
ゴーレムに喧嘩売って逃げた。
「アホスライムフーガさん」
「ほんとマジすんませんなんでしょうか」
復活したばかりでとぼとぼと進んでゆくフーガ。その前を軽快に進むカノン。左と前方は草原、右は湖。風は涼しかった。
「もう怒ってないですから。次から気をつけてくれればいいんですよ浅慮スライム」
「はい」
「ただまあ、次からは状況を考えてやってくださいって言いたかっただけですよ昇進できなかった理由が強さ以外にもありそうなスライムさん」
「やっぱまだ怒ってるよね」
「怒ってないですよ」
「本当?」
「本当ですよ」
2体は少しずつ東へ東へと向かって行く。スライムの足取りは次第に跳ねるようになり、意気揚々という様に変わっていった。それに比例してカノンにはため息が多くなり、左右をきょろきょろと確認して面倒ごとを警戒するようになっていった。
「今度は何も起きないといいな」
「やめてくださいそういうこと言うと」
「おいそこのスライムとゴースト! 前は決闘から逃げやがって!」
「ほら」
湖からばしゃばしゃと騒々しい音と共に何かが飛び出してきた。その存在たちは華麗な着地と共に2体の前へ出た。
「盗めぬ物無き我らこそ、世界を救う大義賊!」
「名乗れば人が湧き、盗み去れば拍手喝采!」
「盗賊ギルド!ここに参上!」
「さあお前たち、オレたちとの決闘をさっさと受け入れるんだ!」
水を滴らせながら、決め台詞に決めポーズで決め切ったというふうだった。
「さあ、さっさと盗賊ギルドとの決闘に応じやがれ!」
格好良く指差し、威勢よく叫んだ先には何もなかった。全員がそれぞれ目をぱちぱちとさせてからさっと後ろを振り向いた。
「フーガさん調子に乗らないでくださいよマジで逃げますよマジで本当に」
「わかってるわかってるもうでももう一回ワンチャンあるんじゃないこれ!」
「ワンチャンなんてないですよ!」
必死に逃げようとしている2体へ、盗賊ギルドのノアは一瞬で追いついた。
「加速だ!」
2体の前に一瞬で移動すると、目の前の格下の魔族へ不敵な笑みを見せる。
「クソしょうがないなカノンここは必殺フーガ砲か? いやカノン砲だっていいな」
「そういえばさっき身分の良さそうなゴーレムがいましたよ」
技の名前を呼びながらうきうきとした様子のフーガの言葉は聞こえていないように、カノンは目の前のノアに話した。
「ん? だからどうした」
「多分そっちのほうが金目のものというか、いいの持ってますよ」
ノアはぐるっと後ろを向き、残りの1人と1体の隣を走り過ぎてゆく。
「よし決まりだお前ら! 身分の良さそうなゴーレムから盗むぞ!」
「わかったわ!」
「抜け駆けは許さんドギャ!」
盗賊ギルドはフーガとカノンに背を向け、騒々しく去って行った。
「……僕らの力ならワンチャンあったよね」
「諦めてください」
次回 第四十六話『唸り声と丘の上の月』
8/15 (土) 20:00更新予定




