第四十四話 自称最強スライムフーガ
ルースの街を出発することになった。
ルースの街の騒がしさはもはや遠くになったフーガとカノン。スライムは浮き足立ち、ゴーストは落ち着いて、太陽の昇る方向へ何もない平原を進んでゆく。
「ほんっとうに凄かったんだぞカノン。僕に翼とツノが生えて」
「はいはい」
何十回目かの自慢話に適当な相槌を打っていると、向こうのほうからゆっくりと歩いてくる影がカノンには見えた。
「あ、フーガさんあっちの方に誰かいますよ敵か味方かはわかりませんけども」
「前のリザードマンのときみたいに即撃たれなければいいな。ま、そんなことになっても僕は」
「はいはい」
大きな影はのしのしとフーガとカノンへ歩いて来る。その姿は岩石で形作られ、大きな腕と大きな脚を持っている。四角い頭部には一つ穴が空いていて、そこに一つ光が灯っていた。
「ゴーレムか」
2メートルほどある巨体は目の前で止まり、威圧的に言う。
「お前ら、フーガとカノンだな?」
「いや、そんなの知らないで───」
「そうだよ」
「バカスライム」
どうにかなるかと誤魔化そうとしたカノン、調子に乗り続けているフーガ。
「え、マジかよ、ん?」
あまりにあっさり認められて困惑しているゴーレム。
「よし逃げましょうフーガさん逃げましょう今ですよフーガさん」
「そうだ、僕たちが反逆者だ」
「アホスライム」
「まだわからないのか? 僕には吸魔の魔石があるんだよ? それさえあればどんな敵だって───」
「我は月の夜にしか扱えないぞ。気をつけろよ」
「ちょっと許してもらえませんか僕ら反逆者とかじゃないんで」
「フーガさん手遅れです、手遅れです」
フーガとカノンがいつのまにか向かい合い言い合っていると、ゴーレムがどすんと地面を勢いよく踏みつける。
「おめぇら、俺をおちょくってんな?」
「すみませんほんっとうに違うんです、ね、ほら、フーガさんも謝って」
「反省してまーす」
「謝り方の一つも知らないんですかこのバカ」
「だーってこれ多分もう謝ったってさあ」
フーガが勢いよく踏みつけられた。フーガが話している途中で痺れを切らしたゴーレムが割り込むように踏み潰し、四散させた。
「バカスライムさーん!」
ゴーレムは肩をゆっくり回し、残ったカノンを見下ろす。
「お前ら、随分と舐めた真似してくれるじゃねぇか?」
今すぐにでも四散した破片をかき集めて復活させたいところだったが、威圧的で明らかに強いゴーレムの前でそんなことはできなかった。目の前のゴーレムは余裕を見せるように一度鼻で笑う。
「まあいい。反逆者のスライムとゴーストを殺してその証拠さえ出せば、俺たちの隊の評価も上がるってぇことよ。でも、こんな楽な仕事で評価されちゃうなんて他のヤツらに悪い気もするな」
「カノン、カノン」
吸魔の魔石がひそひそとカノンに話しかける。
「我を投げつけろ」
意気揚々と語り続けるゴーレムへ、躊躇することなくカノンはすっと吸魔の魔石を投げつけた。
「は?」
ゴーレムがそれに気づいた瞬間、吸魔の魔石はゴーレムに向かって魔力を放出した。発せられた強大な魔力によって、ゴーレムはリアクションする暇もなく、頭部の穴の中の光が消えて後ろ向きにどすんと倒れてしまった。
「……全部それでやればいいんじゃないですか?」
「あまり魔力を出しすぎると目立つのでな」
次回 第四十五話『調子に乗るとロクなことにならないからやめろ』
8/8 (土) 20:00更新予定




