第四十話 寄せては返さぬアンデッド
カノン砲でキョンシーの対応をしようとしたがだめだった。
足場であったはずの巨大な塊はあっけなく倒された。二体の小さな魔族は、ふわりと宙に投げ出され、殭屍の波に飲み込まれんとしている。
「フーガさんどうしましょう!」
「こうなったら真正面から迎え撃つしかないでしょ」
「これやるんですか!?」
「やらなきゃでしょ」
フーガはぐっと身をひねり、自分の落下点から少しずらしたあたりに狙いを定める。
「メタール!」
黄色に光を跳ね返す金属片が数十個と現れ、狙った場所へ拡散するように発射される。鋭く硬い塊が殭屍へ命中すると、数体の殭屍がその軽い衝撃にぱたりと倒れる。その倒れた殭屍に足をひっかけ、どんどん積み重なっていく。
「あそこだ」
積み重なった上へ二体が飛び乗る。
「ようやく休憩できそうですか」
「まだできないよ」
「ですよね」
二体が乗っている殭屍の壁がぐらりと揺れる。
「カノン。足止めできる?」
「あぁっ、はい!」
カノンはいくつも根をぐっと伸ばして地面に突き刺し、今立っている場所に押しかけてくる殭屍をせき止めようとした。
「フーガさんフーガさんヤバいもげるもげる」
「ちょっと耐えて」
ふわりと金属片が宙に浮かび上がる。それの数は次第に四十、五十と多くなる。押し寄せる殭屍の圧力に根がたわむ。
「フーガさん! フーガさん! ちぎれる!」
「もうちょっと」
小さな塊が大量に集まり、殭屍が溢れ出す根源の方へ先を向ける。
「ここだっ! メタール!」
大量に集まり、ぎらぎらと互いに光を反射させていた金属片たちは一気に射出され、殭屍たちが溢れ出る大きな扉の前へ落ちた。扉の前の現れたばかりの殭屍たちへ命中すると、前の者が倒れ、後ろの者が引っ掛かり、同じように殭屍が殭屍にせき止められる壁が出来上がった。
「カノンもういいぞ」
「は、はい!」
カノンは根を元のように戻した。しかし、壁を乗り越えた一部の殭屍しか流れて来なくなり、カノンの根に与えられた圧力もすぐに小さなものとなっていた。
「すごいですフーガさん! 根本から止めちゃうなんて」
「一旦降りよう。こいつらもそのうち立ち上がるし、こんなぽつぽつした感じじゃ僕らでもなんとかできる」
フーガとカノンはぴょんと飛び降りる。壁を数体ずつ越えてくる殭屍たちに、二体はぐっと構える。
「メタール!」
「フォリア!」
自分たちのほうへ向かって来る殭屍を手分けして倒し続ける。明らかに、対処する難易度は下がっていた。
「ふぅん。上手いこと考えたねぇ……ま、でもこっちが本命だしぃ」
上から見下ろしていたクアンは、壁に埋め込まれた小さなパネルに魔法陣を一つ描いた。すると、殭屍たちが途端に現れなくなる。
「……終わりですかね? 案外あっけなく」
「デカいのがいるって言ってたでしょ」
「ああ、そっか───」
ずしん、と地面が揺れる。
「思ってたよりデカいのが来そうですねなんか」
「僕はこんなもんだと思ってたけどね」
その地響きの震源は次第に近づいて来る。殭屍たちが現れていた扉の上のほうに、ただ光を反射する生気ない目が現れた。
「屈んであれか。すごいな」
「お前ら。今こそ我を使うべき時じゃないか?」
吸魔の魔石が語りかける。
「わかってますよ。じゃ、早速使って見ますか」
「うん。よろしく」
ツギハギで質量を作り出した巨大な殭屍が、積み重なって壁になっていた殭屍を蹴破る。
「さっきも言った通り、制限時間は十秒程度だ。いいな」
「わかってるよ」
カノンはフーガの中から黄色の魔石を抜き取り、吸魔の魔石を埋め込んだ。その瞬間、フーガの内側から強い衝撃波が放たれる。
「うわぁっ!?」
カノンはそのまま吹き飛ばされたが、フーガは確かにそこに立っている。
「これは……確かに、そんな長くは耐えられないかもだな」
「だろう。さあ、力の使い方は自ずとわかる。やってやれ」
フーガは深い紫に染まり、その背中にコウモリのような翼が現れた。
次回 第四十一話『吸魔のスライム』
7/11 (土) 20:00更新予定




