第三十九話 しかばねランナー
キョンシーが押し寄せてきた
目の前の光景に圧倒されるフーガとカノン。ガラス越しの情報に目を丸くするラルゴ。ただ笑みを浮かべて見ているカデンツァとクアン。そこにあったのは、押し寄せる殭屍の壁だった。
「カノンカノンカノン早くあれだあれフーガ砲!」
「いやいや火属性はあのとき効かなかったから金属で!」
「んぅあぁとりあえず!」
フーガとカノンがいた場所さえも、大量の殭屍はもみ合い前線を押し上げて覆い隠していく。
「あっぶねぇ本当にあぶねぇあぶねぇ!」
「フーガさん落ちないでくださいよぐちゃぐちゃになったら復活めんどくさいですよ!」
二体の小さな魔族は押し寄せる殭屍の頭の上をぴょんぴょんと身軽に飛び移っていた。それぞれが不安定に揺れ続け、あるものは倒れあるものはそれを踏みつけて一方行へ走り続ける。
「一般殭屍はぁ、あと数分ぐらいやればいっかぁ。ラストにデカい殭屍一体出すからよろしくぅ」
「バーカ!!!」
「フーガさん口が悪いですよ!」
「カノン! あれ、吸魔の魔石! 地面に降りたい!」
「わかりました! 使い時ですね!」
「だめだ」
切羽詰まった状況の二体へ、落ち着きを払ったまま吸魔の魔石は口を挟んだ。
「もったいぶる必要ないだろ!」
「今のお前だと、我を持っているだけでも長く見積もって十秒以上は耐えられないぞ。デカい殭屍とかいうののために取っておくといい」
「そこなんとかなんないかなぁ!?」
「なんとかしてこれだ文句言うな!」
「あぁ、あーもうっ、カノン砲だ! 質量攻撃! 潰しちゃおう!」
「お、やっぱここはカノン砲ですよね!」
カノンは黄色の魔石を取り出して、不安定な足場の上でフーガへと投げる。少し奥の方へ逸れそうになったのをフーガはぴょんと飛んで受け取ってみせた。魔石を中に取り込むと、ぽこぽこと中で気泡が生まれる。
「……いける、カノン。上で」
「上ですね! はいっ!」
二体はぴょんと飛び空中で身を寄せ、
「せーのっ」
放つ。
「「カノン砲!」」
角ばった雫型の巨大な金属の塊が形成され、鋭い木の葉がその周囲のものを切り裂かんと渦巻く。それは地面へとゆっくり落下し、殭屍たちを押しつぶし切り裂いて地面に刺さった。
「ふぅ。ちょっとは安定しましたね」
「そうだね。平らってわけではないけど」
二体は大きな金属の塊の上に落ち、下を走り抜ける殭屍たちを見下ろす。
「ま、とりあえずデカい殭屍が来るまでここでゆっくり待ってればいいかな」
「そうですね。ここでゆっくり待ってれば……待ってください。傾いてません?」
「わかる」
巨大な金属の塊は少しずつ傾き、安定性を失っている。殭屍たちが押し寄せるのとは別に、下から持ち上げられるようなぐらぐらとした感覚を覚える。
「ふふ。アンデッドと結束の護符の真価だよぉ」
重く巨大な塊はみるみる持ち上がり、押し寄せる殭屍たちに横倒しにされていく。
「フーガさんフーガさんフーガさん!」
「おしまいだ」
どしん、と大きな塊が倒された。
第四十話 『寄せては返さぬアンデッド』
7/4(土) 20:00更新予定




