第三十四話 仕事はそんなに早くは終わらない
クアンから吸魔の魔石をもらった。
「いやー本当にありがとうございます」
「じゃあぼくたちは行きますね!」
吸魔の魔石を手に入れた二体は、クアンに礼を言って出ようとしているところだった。
「あ、待ってぇ」
クアンは軽く呼び止める。二体とも、にこりとしているそのクアンへ振り返る。
「まだその魔石がうまく扱えるのか見てないよぉ。私はそこまで任されてるんだからぁ」
「え。じゃあ一回使ってみる?」
「いや。それは今は使えない」
「え。使えないってどういうことですか?」
「我は夜にのみ力を発揮する。元からそういう性質なのだよ」
「えー限定的」
「吸魔とはそういうものだ」
「だからぁ。夜になるまではこの街で遊んでおいでぇ」
街は変わらず人と魔族が大量に行き来している。あちこちから人間食の香りがする通りは、見慣れない魔族に人々は興味を向けている。
「お。スライムなんて珍しいな?」
「スライムとトレントだってよ。もしかして、クアンのやつが言ってた客人かもしれん」
「もしかして最近噂の反逆者じゃない? ほら、フォスキアのリザードマンを倒したって!」
「クアンはやられたら困るけど、まあ流石にないかぁ?」
少し下を見ればいるフーガとカノンを見て思い思いに感想を話している。注目されている中をフーガは気にすることもなく進んでいく。
「トレントではないんですけど、こうやって知られてるなんて嬉しいですね!」
「まあ着いてきてくれるような魔族とか人間が増えてくれれば良いんだけどね。悪い感情を持たれてるわけでもないっぽいし」
しばらく歩いていると、ごったがえしていた存在たちの密度が低くなった。大きな丸い広場に、放射状に拡がる道。その広場の中心にたどり着いていた。
「やっぱり広いですね。フォスキアよりもずっと」
「だから強い魔族が任されてるんだろうね。元人間の街にしては結構統治者側が馴染んでる気もするけど」
現に街の様相は東洋のもの。周囲の文化からは切り離されている。広場から広がる道のいくつかには西洋街と名付けられたものもあるようだが、明らかに規模は小さい。
「まあでも少なからず不満はあると思いますよ」
「まあ趣味全開なわけだもんなぁ。元々住んでた人間は不満も持ってるだろうね」
フーガとカノンは少しの間見つめあう。
「あー。そういえば、あれ。出る前にクアンからもらってたやつ」
「ああ、はい。このチケット」
カノンが葉の中に根を突っ込み、二枚の紙を取り出す。赤っぽい色の紙にぐにゃぐにゃとした文字、その下に小さく「酒造入場券」。そして広場の一角を指す地図が書かれている。
次回 第三十五話『酒場の狂乱と地獄の様相』
5/30 (土) 20:00更新予定




