第三十三話 吸魔の魔石こそが最強キュマねぇ……w
吸魔の魔石の金庫が開かれた。
「誰が我を呼び覚ましたか? 汝ら、我が崇高で強大なる力を欲さんとするか。好かろう。我は吸魔の魔石。我が名は───」
「ていうかなんでこの魔石喋るの」
「あ、おい」
「魔石にされたんだってぇ。つよーい魔族がぁ」
「おい! まだ名乗っている途中だろう!」
デスクの上に置かれたその魔石は、ほんの少し揺れながら語りが中断されたことに怒りを示しているところだった。
「強い魔族がこんなのになったんですか?」
「うん。強い魔族がねぇ」
「そうだ。強い、魔族がだ」
「そんな強い、って強調しなくても」
「我が強いのは重要だろう。汝らに力を貸す者であるのだぞ」
「まあそれはそうだけど気取ってるようにしか見えないし」
「そんなに強い強い言われてもですよねぇ?」
「よく初対面にその態度でいることができるな?」
「はいはい。じゃれ合いはそこまでねぇ」
クアンがひょいと吸魔の魔石を持ち上げると、それを見つめながら椅子に落ちるように腰掛ける。
「吸魔の魔石。その昔に魔王軍に反逆を決行したけど、結果敗北して捉えられたの。だけどその不死性から、そのまま魔石にされて動けなくされちゃったーって感じの話」
「あー。魔王軍に……」
「そうだ。魔王軍にやられた」
「あの、吸魔の魔石さん」
「どうした」
「ちょっと急に喋られるとびっくりしちゃうんで喋る前もって何か言ってくれませんか?」
「は?」
「それはちょっと思った。石だから誰が話してるんだって一瞬なる」
「ネクロマンサー。こいつらの神経イカれてるんじゃないか」
「よくそんな真っ正面から言えるなぁとは思うよぉ」
「誰が喋ってるかは明確にしたいから、ほら。一人称アレにしよう。吸魔の魔石」
「一人称をか?」
「一人称を」
「たわけが」
「我よりはいいですけど長いですってそれ。吸魔とかどうです」
「じゃあキュマとかで」
「いいですねキュマ」
「いいじゃんキュマ」
「勝手に話を進めるな」
「キュマ語尾もキュマでよくないかなぁ」
「いいじゃんキュマ。やりなぁ?」
「やらぬわ」
「キュマいいじゃないですか」
「ねぇキュマぁ?」
「キューマキュマキュマ」
「いい加減にしろよ!?」
静まり返った夜、ルースの街の外でラルゴは火属性魔法で照らしながら懐中時計を見つめている。
「偉いわね。年頃の竜族にしてはまともなのね」
「ん……まあねぇ。あんたみたいな大御所が来るってんならそりゃあ早く来ますよぉ。カデンツァさん」
片手には黄色の魔石。ふわりとした黒い髪は、魔石から発せされる黄色の淡い光を反射している。その姿は、突然、ラルゴの目の前に現れたものだ。
「あんた、そんなに長い間外にいるのも危ないんじゃなかったのかねぇ」
「時間は短いけど、探知妨害ぐらいはできるわ」
「ふぅん……」
ラルゴは大人しく、足を少し開き、懐中時計に落としていた視線をカデンツァへと向けて離さない。見るからに警戒しているそれを見てカデンツァはにこりと笑みを見せた。
「で、何の用だってぇ?」
「仕事の依頼よ。ちゃんとやってくれれば、魔法の稽古でも四天王試験の対策でもなんでも教えてあげるわ」
「ちゃんと教えてくれれば頼もしいねぇ。まったく胡散臭い」
カデンツァはくすり、と笑む。
「これからあなたには、私の指示通りに、反逆者たちのサポートをしてもらうわ」
次回 第三十四話『仕事はそんなに早くは終わらない』
5/16 (土) 20:00更新予定




