第三十一話 がっつりオリエンタリズム
ルースの街へと近づいていく途中、クアンと出会った。
「やっぱあの、なんだっけ、殭屍はあなたが仕向けたんですね」
「そうだよぉ。小手調べって思ってたけどぉ、なんか他の強いのもぶち当たっちゃったみたいだねぇ」
がやがやという人や魔族の声とかちゃかちゃと食器の当たる音、そしてごうっと火が中華鍋を包む音。そこはルースの街の飲食店だった。
「まあ食べなぁ。こういうのはアツいうちにだよぉ」
丸テーブルの上の皿にはいろいろな料理が乗っているが、ほとんどが湯気だっている。
「あれ、これって人間の食べ物ですよね?」
「人間食ってやつだ。マニアはいるし、クセになるとは言うけど……」
「東の方じゃみんな人間食食べるらしいから、ま、そういうことだねぇ。外から来る魔族はチャレンジメニューみたいな感じで食べに来てるけどぉ」
カノンは根を伸ばし、その先に食べ物のうちの一切れを刺した。焦げ茶色でソースの滴る肉だ。
「うぅーん。やっぱり変わった匂いですね」
「僕は匂いで無理かもなぁ……」
そしてそれをひょいと目の光る黒い穴の中へ放り投げた。そしてしばらく目を閉じ、草をかさかさと静かに揺らす。
「どうだ? いけそう?」
「ぼくはいけます。結構好き嫌い分かれるだろうなぁって感じではありますけど」
「そう、なら一個ぐらい……まあ微調整できるもんでもないんだけど」
フーガはテーブルの上に半身を乗り上げ、ほんの少し皿に被さるようにしてそこに乗っていた肉や野菜を取り込んだ。
「……ん、ん゛っ……あー、こ、れ、うーん、ん……」
「正直に言っていいよぉ」
「無理すぎるヤバい僕はスキップ」
「じゃあフーガちゃんのも全部食べていいよぉ」
カノンは差し出された皿の料理を少しずつ食べていく。
「ま、とりあえず殭屍は私がけしかけたんだぁ。どんなもんなのかなぁってテストがてらねぇ」
「あー。それなら、あの盗賊ギルドもですか」
「それは知らない」
「えぇー……」
「で、私はカデンツァさんに頼まれてきみたちに力を貸すことになったんだよねぇ。めんどくさいけど、しょうがないねぇ」
「力を貸す……か」
外へ出るとルースの街が見える。ぎっしりと密集した飲食店と人と魔族、そして虚ろな目で徘徊する殭屍。見通しは悪く熱がこもっているが、笑っている人間と魔族が多くいる。
「魔王軍が統治してる街でもこういうとこってあるんだね」
「まあやりようによるしぃ。私のやり方がこれってだけぇ」
次回 第三十二話『吸魔の魔石』
5/9 (土) 20:00更新予定




