第三十話 高ランクの魔族はだいたいそのへんをフラついてる
盗賊ギルドから逃げると今度は謎の女と出会った。
走って逃げていたフーガとカノンは、ちょうど横から聞こえてきた声のほうを向いた。そこには、ちょうど良い高さの岩に座っている女がいた。緑基調のワンピースのような服に身を包み、スリットから覗く白い脚を組んでいるその女は、自分の脚の上で頬杖をついてフーガとカノンを見ている。
「誰だ? 魔力の感じからして人間だろうけど」
「どうもぉ。狂詩曲だよぉ」
「……なん、カン、サン、ん?」
「呼びにくいでしょ。クアンでいいよぉ」
「クアンさん……もしかして、ルースの?」
「うん。緑色の。ネクロマンサー……あ」
クアンという女が言い終わるころには、フーガとカノンは背を向けて遠くへ逃げていた。
「まったくぅ……早とちりなもんだねぇ、ほんとに」
ゆっくりと、だらりとさせていた左手を上げ、フーガとカノンの逃げてゆく先を指差す。
「なぁんでこうやってすぐああいうのに相対しちゃうんでしょうね」
「情けないよ僕こんなに逃げてばっかで」
そのまま逃げ仰せようというそのとき、突如目の前に蒼白い小さな塊が二つ現れる。
「わっなんですかこれ」
「うーん見覚えある色……これ───」
魔力が集中してくるのを感じ、何かに気づいたフーガが言おうとした途端、目の前のそれが二体の殭屍へと変貌した。
「うわぁ!」
「クソっ、やっぱりこいつらだ!」
目の前の殭屍はその場でゆらゆらと立ち尽くし、二体を見下ろしている。
「ストップしてもらっただけぇ。攻撃の意思はないよぉ」
後ろからクアンが、ヒールを土に軽く埋めながら歩いてくる。
「大丈夫ぅ。ここで君らを仕留めちゃったらカデンツァさんに怒られちゃうからねぇ」
「……そういえば、話はつけてあるって言ってたっけ」
「でも、魔王軍じゃない魔族の話なんて聞いてくれるんですか?」
「聞かなきゃいけない相手なのぉ。変なことしたら殺されちゃうかもぉ」
「いよいよ何なんですかあの魔族」
クアンはふふっと笑い、二体の殭屍を退けるようにしてその間を通った。
「こんなとこじゃ誰が聞いてるかもわかんないでしょ? しばらく移動しよっかぁ」
次回 第三十一話『がっつりオリエンタリズム』
5/2 (土) 20:00更新予定




