第二十四話 Bravo!
氷属性を操るリザードマン、トランクィロを退けたフーガとカノン。オブリガートとの戦いになる。
フーガとカノン。相対するリザードマンはもはやオブリガート一体のみ。オブリガートが銃撃がメインなことも考慮すれば、フーガとカノンが優勢である。
「どうする?こっちの要望を飲んでくれれば何もしないけど」
「程度によっては聞きましょう。それが合理的であるなら」
「この街から立ち退くこと。この街、元々は人間のものでしょ」
何も間を開けずに帰ってきたフーガの答えに、オブリガートは目を細める。そして、それ以上の言葉を交わすことなく、オブリガートは銀の弾丸をこめた。
「カノン」
「はい」
カノンとフーガは身を寄せ、オブリガートを見据える。
「「協和音!」」
「協和音」
フーガとカノンは声高らかに、オブリガートは静かに。
「「"フーガ砲!"」」
大きな火球とそれに渦巻く鋭い木の葉。
「"八番"」
光を放つ魔法の光線は、一発の弾丸に打ち消された。電気を纏い、ばちばちと音を鳴らしながら空を切り、熱によって空間を揺らがせていた弾丸は、光線を貫き消してみせた。弾丸は、空へ消えていった。
「フーガさん!」
「それはそうだ……詠唱もしてなかったな」
オブリガートは再び弾丸をこめようと、コートの内側から弾丸を一発手に取る。
「だけど、隙はある」
「ど、どうします?もう一度やります?」
「合わせるのに多少の時間がかかるし、早く当てられて意表を突けるほうが良い」
フーガは姿勢を低くし、素早くオブリガートへ急接近する。そして火球を作り出す。オブリガートはその姿を見ると、銃を左手に持つ。
「フォ───」
跳ねてその火球を直接ぶつけようとしたそのとき、ナイフがコートの裏から光って見えた。右手がナイフに伸びると、それをフーガに向かって振るった。フーガはすんでのところで身を反らし、身体の一部が切り裂かれる。命中させずに終わった火球を持ったままオブリガートの後ろへ回った。中心の傷がなかったために致命傷ではなかったが、地面についたときに体制を崩してしまう。
「そこですね」
オブリガートは両手に銃を持ち、フーガへ向ける。
「くっ……メタール!」
「協和音」
銃をそらそうと金属魔法を飛ばした。だが、それが到達するより先に破裂音が響く。
「"十一番"」
弾丸は冷気を帯び、絶え間なく溢れる水を凍りつかせ、氷を散らしながらフーガの中心を貫いた。そのまま四散すると思われたとき。
「フーガさん!」
オブリガートの後ろから肩に根が伸びてくる。そしてそのまま、カノンはオブリガートを後ろ向きに引っ張り宙へ跳んだ。そして頭の葉の中をまさぐり、そのまま空中で復活草をフーガへと投げた。突然体制を崩されたオブリガートは、それを阻止することが叶わなかった。復活草がフーガの近くへ落ちたとき、真ん中に空いてしまった穴がみるみる塞がっていく。
「助かった!」
「勝手に行かないでくださいよ!」
オブリガートは立ち上がり、睨みつけるようにフーガとカノンを睨みつけている。
「カノン」
「フーガ砲ですね」
「カノン砲だ」
「え?」
「カノンは同じで大丈夫。ただ名前が違うだけと思って」
オブリガートは会話をする二体を見ながら、じっくりと銀色の弾丸を選ぶ。そして静かに、一つの弾丸をこめる。視線は穏やかに、二体の魔族の若干上。
「これは賭けだ。属性の相性なんて知らないからね」
「じゃあこれ以外で勝てそうな手はあるんですか?」
「長期戦は僕らが耐えられない」
オブリガートを見ているフーガとカノン。オブリガートはただ静観している。
「金属性と木属性。協和音はできる?」
フーガとカノンの後ろから、戦闘から逃げていったトランクィロが静かに迫っていた。
「カルマンド」
そのとき、密かに背後へ回っていたカルマンドがトランクィロの後頭部を殴りつけた。蓄積したダメージと不意打ちのために、トランクィロはあっけなく倒れた。
「できル」
「了解」
オブリガートの手が、握っている銃をミシ、と軋ませる。不意打ちをさせるため、注視させようとゆっくりと選び、儀式のようにこめた、必要最低限を満たしていたはずの、ただの弾丸。
「いくぞ」
金属が作り出され、木の葉が舞う。
「「協和音!"カノン砲"!」」
大量の金属片と鋭い木の葉が入り乱れてオブリガートへ向かう。弾丸は放たれたが、金属に弾かれてしまう。そのままオブリガートは魔法に包まれる。そして魔法によって生み出されたものたちが霧のように消えると、そこには仰向けになって倒れるオブリガートの姿だけがあった。フーガがカノンを見る。
「素晴らしいな」
次回 第二十五話『人間たちの灰色の街』
3/14 (土) 20:00更新予定




