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【完結】灰色の天使、金の魔法使いを婿に迎える  作者: ジュレヌク


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第四十八話花嫁行列(ざまぁ⑧)

「陛下は、それで宜しいのですか!」


 アイオライトが、桜姫を伴い乗り込んできたと思うと、今までに無い激しさで王である祖父を糾弾し出した。


「確かに、ジポーノ国との国交は、戦争の無い世の中にするために必要でしょう。しかし、相手の要望に頷くばかりが友好なのでしょうか?弱き者を犠牲にして守られる平和など、まやかしに過ぎない」


 彼は、その勢いのまま、ジョンに向き直った。


「エンジェル伯爵!貴方は、このままご息女を生贄になされると言うのか?」

「そのような事、誰が好き好んでするとお思いか?」

「望まぬ事であれど、それを行えば、喜んで娘を差し出した事と何の違いがある!」


 正論を真正面から突きつけられ、ジョンの暗かった顔が、ハッと息を呑んだあと、かすかな微笑みに変わった。


『十四の小童のくせに、なんと剛毅な。』


 多少状況が不利だからと、諦めかけていた心を恥じた。


「分かりました。娘が居なくなれば、どうせ跡継ぎもいない。このまま娘を連れて出奔し、二度とこの国に戻らないとしよう」


 なんて事はない。愛する者さえ居れば、こんなにも自由だ。フローラ国は、エンジェル伯爵を逆臣とし、ジポーノ国と手を組んで追跡すればいい。己も被害者であると訴えれば、あとは、外務省が手練手管の交渉で、勝手に落とし所を見つけるだろう。


「領地は、王領として統治してくだされば良いでしょう。いつかアイオライト殿下が臣下に下られる際、その領地としていただければ幸いでございます」

「ま、待て!」


 高位貴族の一人が手を挙げた。


「そなたが居なくなれば、国境沿いの防衛をどうされるのだ?」


 エンジェル伯爵の領地は、長年境界線を巡って、隣国と小競り合いを続けてきた。ジョンの代になって、貿易の有用性などを根気よく説く事で、相手の態度が軟化しだしている。


 ジョンが居なくなれば、その交渉も頓挫するだろう。

 しかし、そんな事、彼の知った事ではない。人の娘の幸せより、他国との国交を重んじた奴らに、情けをかける必要が何処にある。


 心が決まり、謁見の間を出ようとした時、


「伝令!伝令!王宮の前に、多くの平民が集まってきております!」


風向きが変わる知らせが届いた。




「シャーリーしゃま、きれぇーねーぇー、キリックにぃたん(シャーリー様、綺麗ね、キリック兄さん)」


マリアがうっとりとした目で、シャーリーを見ている。


「ほんと、しゅてきねぇー、キリックにぃたん(本当、素敵ね、キリック兄さん)」


 サラも、キラキラとした眼差しをシャーリーに向けている。


 結婚式の衣装を纏ったシャーリーの頭には、二人が作ったベールが飾られている。再び見られた事が、余程嬉しいらしくて、手足をバタバタ動かしていた。


 そんな二人を小脇に抱えたキリックは、人の波に飲まれない様に、必死にシャーリーの真後ろをキープしている。


 隣には、白蘭を両脇から挟むサックスとスコット。


『なんで俺ばっかりチビの世話なんだ?』


 多少の不満は残るが、チビ達がキリックから離れないのだから仕方ない。この行列の数は、進むほどに追随する者が増えてきている。


ある者は、鍋とお玉。

ある者は、フライパンとすりこぎ棒。

ある者は、おもちゃのトランペット。

音の出るものを手に、ゾロゾロ歩く。


 王宮前には、魔導士団、騎士団の面々が警護に立っていた。その表情が晴れやかでない所を見ると、王宮内で何が行われているか、知っているのだろう。


「止まれ、これ以上進む事は許されん!」


 血気盛んな若い騎士が、功を焦って飛び出そうとした。

 しかし、マックスの展開する見えない防壁に阻まれ、こちらに入って来ることすら出来ない。民衆の圧力で、正門ギリギリまで押し切ると、シャーリーが右手を上げた。


バンバン


コンコン


トントン


パフゥパフゥ


 様々な音がリズムを奏で、それに合わせて民衆が歌い出したのは国歌。


 フローラ国の花と緑に溢れる景色と、そこに住む幸せと誇りを歌詞にした、フローラ国民が愛してやまない歌。鳴り物を持たない者は、肩を組み、左右に揺れながら歌う。


「国民を守るべき者が、彼らに刃を向けるのですか!」


 シャーリーの一喝に、元々戦う気がなかった魔導士団が、先に引いた。


 騎士団の中には、未だ息巻く者も居るが、結局マックスの結界に阻まれて手出し出来ない。


「エンジェル伯爵令嬢、この様なことをして、タダで済むと思っておいでか!」


 騎士団の団長が、両手を広げ『これ以上一歩も通さぬ』という気概を見せた。その剣幕にも、シャーリーは、動じることなく微笑んだ。


「何を勘違いなさっておいでなのかしら?私達は、結婚のご報告に上がったのです。後ろの皆は、お祝いのパレードをして下さっているのですよ」


大した度胸だ。マックスに守られているという100%の信頼があっての事だろうが、上手くいかなかった事を考えると付き従ってきた全ての人間の肝が冷える。


「それに・・・遠路遥々お祝いに駆けつけて下さった貴賓を、いつまでここに立たせておくのですか!」


 今度は、叱責。その気迫に、空気が震えた。


「こちらは、ジポーノ国第四王女の白蘭姫様。陛下との謁見を望まれております」


ザワザワ


 反乱を抑えようと集まった兵士達に、混乱が生じる。


「早く、陛下にお取り次ぎを!」


 シャーリーの凛とした声が響くと、魔導士団のシュリーマンがゲラゲラ笑いながら騎士団の面々を退け始めた。


「どけ!どけ!道を開けろ!お姫様と鬼嫁のお通りだ!」


 シャーリーを鬼嫁とは、命知らずも良いところだ。マックスの眉間にシワが寄っている。


 しかし、あながち嘘とも言えない。

キリックは、俺だったら、恐れ多くて嫁になんて貰えないなと思った。そして、マックスの図太さを垣間見た気がして、彼の背中に向ける視線に、少しだけ尊敬の念が混じった。




『お初にお目にかかります。白蘭でございます。この度は、お時間を作っていただき、大変感謝しております』


 衣装は男物のズボンを履いた可憐な少女が、ジポーノ国流の挨拶で頭を下げた。


 王の傍に立つ外務局第一課の通訳が、彼女の言葉を一言一句間違いなく皆に伝える。


『この度は、姉上の親友の婚姻とあり、母上から祝いの品を預かって参りました。馬車にして、3台。後ほど届くとは思いますが、先ずは、わたくしめが、ご挨拶をと思い、早馬にて馳せ参じました。これを』


 白蘭から渡された目録には、黄金、白銀、翡翠、絹織物、多種多様な珍しい食材がこれでもかと列記されている。

 その多さと質に、ジポーノ国の豊かさを知ることができる。


『母上は、フローラ国で姉上が心安らかに過ごせる事をお望みです。その為にも、舎利・天使シャーリー・エンジェル伯爵令嬢を、姉上の義理の姉妹としたいと申しております』


 それは、エンジェル伯爵令嬢に、ジポーノ国の女王が後ろ盾に立った事を意味する。


 しかし、先に訪れた使者が持参した書状にも、確かにジポーノ国国王の印があった。


「橘氏が持って来られたものと、内容が異なるが?」


『其方は、破棄して頂ければ』


 ニッコリ微笑む少女には、言い知れぬ迫力がある。


『橘を始めとする兄上の取り巻きは、こちらで一掃させていただきました。上の者が誤った道を進もうとすれば、命を賭しても止めるのが家臣。逆に煽り、己の私利私欲を満たす者など、我がジポーノ国には必要ありませんゆえ』

『白蘭姫!その様な事、貴方様が決める権限などないはず!』


 飛び出してきた橘が、白蘭に駆け寄り腕を掴んだ。


 しかし、彼女は、逆に相手の勢いを利用して、橘をクルンと床に転がすと、馬乗りになって首元を押さえた。


ガハッ


 呼吸が出来なくなって、顔面を赤黒く染める男の顔は、驚きと恐怖に固まっている。


『橘、頭が高い。妾は、そちの上に立つ者ぞ!』


 橘は、泡を吹いたかと思うと、白目を剥いて意識を手放した。


『見苦しいものをお見せしてしまい、大変申し訳ございません』


 男から降りると、再び優雅に礼をした白蘭。何事もなかったかのように、笑みを浮かべる。


『我が国の恥部は、排除致しました』


 彼女の話によると、葵が作り上げた後宮には、既に小国の姫君が数人拉致されるように連れて来られていたと言う。


 それを男どもは戦果だと胸を張るが、女王は、許した覚えはなかった。


 泣き暮らす姫達を慰め、救い、母国との連絡を取り続け、いつか帰してやると機を狙っていたと言う。


 そこに降って湧いたフローラ国への恥ずべき行為。女王は、女にうつつを抜かす息子を締め上げ、役に立たぬ側近の首を文字通り切って捨てた。


『世継ぎの再教育は、母上を筆頭に、将軍なども交え、肉体的にも改造をしておる最中でございます。死なずに済めば、いつか陛下にお目通りすることもございましょう。その時は、一発頭を殴りつけ、腹に足蹴りでもかまして頂ければ幸いでございます』


 王は、この時確信した。ジポーノ国の次期王は、この少女なのだと。


 ただ、女性である事。若年である事。まだ、機が熟していない事。


 それらを全て抑える力を彼女が持つまでのお飾りとして、葵は、命を長らえたのだ。


 末恐ろしい怪物が、ニヤリと笑う様は、背筋をゾクリとさせながらも、痛快さを持って王の心に残った。


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― 新着の感想 ―
フローラも、ジポーノを見習ってね。
フローラ国の恥部も排除致しましょう。役立たずの王も要らないな。
アイオライト王子と桜姫さまの婚姻となるかなー やっーとアイオライト王子が少しだけ覚醒したかな? 陛下に臣下として進言出来ないのもどうかと思うし 国内だけではなく諸外国との外交を考える立場なら これから…
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