↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】灰色の天使、金の魔法使いを婿に迎える  作者: ジュレヌク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/50

第四十五話それぞれの決意

「本当に良いんだね?マリア、サラ」

「あい、クイーンねぇしゃん!マリャ、がんばりゅの(マリア頑張るの)」

「シャラだって、できるもん!(サラだって出来るもん)」


 クマさん型の小さなリュック。中には、お菓子とハンカチ、ティッシュを詰め込んでいる。


『遠足じゃないってんだよ。』


 思わずツッコミを入れたくなったクイーンだが、あんまり可愛く敬礼するものだから、周りの大人の方が泣きそうになっていた。

 これから向かうのは、何が起きても文句の言えない場所だ。言葉を交わす相手は、敵かもしれない。


「無理だって思ったら、逃げるんだよ!」

「「ん!」」


 力強く頷くが、どこまで分かっているのか怪しい。目は、遠出ができることと、馬に乗れることでキラキラと輝いている。


「サックス、信用してるぞ」


 ジャックがサックスの肩に手を回し、脅すように耳元で囁いた。腕に力がこもってて、その真剣さが伝わってくる。


「分かってる」


 サックスは、ベラベラ無駄口を叩くタイプではなく、何事にも常に真摯に向き合う人間だ。クイーンも、ジャックも、言いたい事は山盛りあったが、それをグッと飲み込んで送り出す事にする。


 外に出ると、サックスの弟が二人立っていた。


「俺ら、二人で行く。サックスは、ここで司令塔をやってくれ」

「いや、俺も行く」

「うちとグレイ商会、エンジェル伯爵家を繋げられるのはサックスだけだろ?」


 日頃から人当たりの良いサックスは、グレイ商会でも評価が高い。

 エンジェル伯爵家のメイドにも、あたりの柔らかい彼のファンが多いらしく、執事のホーランドさんともよく話をしているのを見る。


 確かに、シャーリーとマックスが居ない今、三つを繋げられるのはサックスしかいなかった。


「マリア、サラ」


 クイーンは、二人の横にしゃがみ込み、視線を合わせた。


「スコットとこのお兄ちゃんの言うこと、聞けるかい?」


 スコットとその弟を指差すと、マリアとサラは、コクンと頷いた。

 昔のよしみで時々孤児院に出入りしていたスコットは、顔くらい知っているだろう。


 しかし、小さい子供が苦手なスコットは、殆どマリア達と話したことがない。更に、キリックと、ちゃんと会うのも初めてだ。


 サックスと一緒だと思っていたのに、突然違う人間が現れ不安になったのだろう。二人とも自分のスカートをギュッと握っている。

 その様子に気づいたキリックが、


「こんにちは!俺、キリック!」


大きな声で挨拶して、二人の前にしゃがみ込んだ。そして、マリアとサラの前に両手を突き出す。


パッ


手の平を開くと、綺麗な紙に包まれた大玉の飴が出てきた。


「お近づきのしるしに、どーぞ!」


 チビ二人は、目の前に現れた甘い物に目を輝かせた。

 しかし、何を思ったのか、クイーンの方を悲しそうに見る。


 孤児院では、


『知らない人から、物を貰っちゃダメだ!』


と厳しく教えている。眼の前の少年を、『知らない人』認定している二人は、欲しくても貰うことができない。


「マリア、サラ」

「「あい」」

「コイツは、今からアンタらと仕事をする仲間だ。知らない人じゃない」

「「仲間!」」


キラキラキラキラ


 目に見えて瞳が輝き出した二人に、皆、笑いを必死に堪えている。


 その後、仲間認定されたキリックは、手ずからマリア達の口に飴を入れる栄誉に預り、小さくガッツポーズをしていた。








 シャーリーとマックスは、朝食後、庭を散策した。木漏れ日の中、手を繋ぎ、時折立ち止まり、頬を寄せて口付けをする。


『このまま、時が止まれば良いのに。』


 シャーリーの心は、全てマックスのものだ。

 しかし、このままじゃいけない事も知っている。今この瞬間も、自分達の為に罰せられる人がいるかもしれないのだから。

 互いの両親達は、このままほとぼりが冷めるまで、二人で隠れているようにと念を押していた。親が子を守るのは当然なことらしい。

 ただ、大切な家族を矢面に立たせて、自分達だけ安全な場所に身を置くことは出来ない。


 シャーリーは、ほんの数時間でも良いから、恋人のように過ごしたかった。二人だけの思い出が、欲しかった。それが叶った今、やらなければならない事がある。


「マックス様・・・」

「分かってる」


 本当の意味での初夜はまだだが、昨日の夜は、対外的には『初夜』として扱われる。ジョンの言うように、婚姻、結婚式、初夜と既成事実を積み重ねた。


 これがどれ程の力を発揮するかは分からないけが、最後まで戦い切る為にも、王都に戻ろうと心に決めていた。


 シャーリーは、自分の指に輝く結婚指輪を見た。これまでも、ずっと彼女を助けてくれた『お守り』。


『何かあっても、必ずこの指輪が守ってくれるはず。たとえ、ジポーノ国へ行かなくてはならなくなったとしても、永遠に私は、マックス様のものだ。』


 シャーリーが繋ぐ手に、ギュッと力を入れると、マックスも握り返してくれる。


「シャーリー、その前に一つお願いがある」

「なんでしょうか?」

「マックスと呼び捨てに。あと、敬語もなしで。一晩過ごした男女が他人行儀じゃおかしいよ」

「あ・・・」


 口をポカンと開けるシャーリーの下唇をマックスが喰んだ。

 そして、そのまま深く口付けられる。息が出来なくて、苦しい。トントンと彼の背中を叩いて、やっと解放された。


「ほら、シャーリー、俺の名前を呼んで」

「・・マ・・マックス・・・」

「シャーリー、愛している。何が起きても、俺が守る」

「うん」


 マックスの逞しい腕に抱きしめられて、シャーリーは、堪えきれない涙をハラハラと流した。




 高台から見下ろすと、単騎駆で街道をひた走る馬が、舞い上げた土埃で一本の線を描いている。


「アレか?」


 キリックが、怪訝な表情で呟いた。それほど、目に映る光景は、不思議なものだった。


 美しい栗毛の馬が乗せているのは、一人の少女。長い黒髪を風に靡かせて矢のように風を切って進んでいく。

 鞭使いの巧みさ。前傾姿勢の美しさ。非の打ち所がない。

 素晴らしい騎乗に唸っていると、


「あーー、しゃくらひめしゃまー(あー、桜姫様)」


 スコットの背中におんぶ紐で結ばれたマリアが叫んだ。


「ほんとーりゃー、しゃくらひめしゃまらー(本当だ、桜姫様だ)」


 キリックの背に括り付けられたサラまで叫んだ。


「桜姫様?え?本当に?」


 聞き返すキリックの髪を引っ張り、サラがプンプン怒り出した。


「ほんとりゃもん!シャラうしょつかにゃいもん!(本当だもん!サラ嘘つかないもん)」


『うぇー、痛そう。毛根から根こそぎ引っこ抜かれるんじゃねーの?』


 スコットは、自分が引っ張られているかのように顔をしかめ、首をすくめた。


「いてててて、分かった!分かったから!ごめん、ごめん」


 キリックは、すぐにギブアップし、サラに謝った。そして、サラとマリアを宥めすかし、幼児を背負ったままで、馬に乗ってさっきの少女を先回りすることにした。


 けっこう激しい揺れなのに、


「「むにゃむにゃむにゃ」」


涎垂らして眠るチビ達の肝っ玉の太さに、スコットもキリックも降参するしかない。多少、首が濡れて冷たくても、我慢する二人だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マリアちゃんとサラちゃんのコンビは癒しですねー クイーンさんの所にいるのだからこれからますます 逞しくて強い可愛い女の子に成長すると思いますっ スコットとキリックも今回の重要ミッションが実は 人生の…
マリャシャラが可愛すぎます!2人の出番を待っていた自分に気づきました(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。