超絶めんどくさい!『普通の神様』10分間耐久レース
スペン「追加審査の内容はシンプルです。今から10分間、あなたたち3人は【自分の喋り方のクセや、おかしな思想を一切出さずに、完璧に真面目で普通な神様の会話】を演じなさい。1回でもボロが出たら、その時点でゴミ拾い100年確定です。……それでは、スタート」
(チクタク……と、空間に10分間のタイマーが表示される)
サルム「(うぐぐぐっ……! いつもノンストップで喋ってないと死んじゃう私に、静かにしろってこと!? 脳が、口と直結してる私の脳が、言葉を詰まらせて爆発しそう……!)」
ニル「(……冷静に、普通に。ひねくれたツッコミを入れたらアウト。ポテトを食べるのも禁止。ただの綺麗な、冷徹で美しい神を演じるだけ……)」
ライク「(調和……そう、世界の調和について語るんだ。ええと、私のアルーフ世界の住民が、健やかに暮らせるように……。いや、待てよ? 『健やか』の定義とは一体なんだ? そもそも私は、なぜ今『健やか』について考えようとして――ああっ、ダメだ! 考え始めたら14時間ループの迷宮に入ってしまう……! 止めろ、私の脳内の計算式を止めろ……!)」
スペン「(腕組みをして、ストップウォッチをジッと見つめている)」
ニル「……コホン。ライク、サルム。今日も私たちが管理する各世界は、大いなる慈悲のもとに、大変平和に、そして健やかに、回っておりますね……」
サルム「そ、そうだねニル……! ガルフ世界の住民たちも、みんな毎朝、健康的に……爽やかに、ステップを……あ、違う、普通に歩いて、学校や仕事に向かっているよ……!(言いたい!『激辛ラーメンでバズる』って言いたいよぉぉぉ!)」
ライク「素晴らしい、素晴らしいよ二人とも……。世界が完璧な調和のピースとして、一滴の無駄もなく、美しく噛み合っている。……あ、いや、噛み合っているのは良いことだね。そう、良いことんだ。うん。私は、世界を愛する、ただの一般的な神様です。うん、間違いない」
スペン「……ほう。意外と耐えますね。残り時間、あと1分です」
サルム「(あと1分……! 喉が、喉が痒い! 大声で『せーのっ!』って叫んで、ニルの耳を鼓膜ギリギリまで攻めたい……!)」
ニル「(……頼むからサルム、大人しくして。あんたの顔が引き攣ってるせいで、こっちまでモールス信号のウインクが出そうになるから……)」
ライク「(……1分、1分とはつまり60秒。あの奇跡の14秒を4回以上繰り返す時間……。ああっ! 脳内で『14』という数字が、ゲシュタルト崩壊を起こしながらネオンのように光り輝いている……! 叫びたい! 『じゅうよん!』って叫びたいーー!!)」
(ピピピピ、ピピピピ ―― タイマーがゼロを告げる)
スペン「……はい、10分経過。終了です。あなたたちの必死で醜い、震えるような『普通の演技』、しっかりと見届けました」
サルム「ぷはーーーーっ!!! 死ぬかと思ったーー!!! もう無理、脳みそが沸騰して耳からサンバの音が聞こえる!!」
ライク「じゅうよん!! じゅうよん秒が長すぎる!! スペン先生、私は耐えたよ! 14時間耐久デトックスを、今ここで完全にやり切ったんだ!!」
ニル「……はぁ。心臓に悪すぎるでしょ、この審査。これならネトゲの超高難易度レイドボスにソロで挑む方が100倍マシ。……で、スペン。これでセーフになったの?」
スペン「(フッと小さく笑い、記録簿を閉じる)……ええ。お見事。あなたたちが、自分の世界(バグだらけだけど愛おしい命)を守るために、そこまで必死になれる情熱があるなら、今回の定期審査は『合格』にしておきましょう。提出書類は、私が裏で【優良世界】として処理しておきます」
スペン「ただし。次に監査に来た時、もし1匹でも『サングラスをかけて静かにサンバのステップを踏む新種のモンスター』を見かけたら、その時は問答無用でゴミ拾い200年ですからね。……では、私はこれで」
(スペンが書類を抱えて、光の中に静かに消えていく)




