担任管理官スペンの「我ながら甘いな」と、その後の絶望
場所:次元管理委員会・上級監査室 ―― から、いつもの3人の空間へ
委員会の上司「――スペン管理官。君が提出した、アルーフ、ガルフ、バートの3世界の監査報告書だがね。……どう見ても完璧すぎて、逆に怪しい。あのポンコツ3神が、こんなホワイトな優良世界を維持できるわけがないだろう。君、また裏でログを書き換えて、彼らを庇ったな?」
スペン「……滅相もございません。私はただ、彼らが提出した『フィットネス計画』や『暗号化デトックス』という最新のシステム運用を、規約に則って正しく処理したまでです」
委員会の上司 "ふん、白々しい。君が昔からあの3人に甘いのは知っている。……だが、規約違反を犯してまで、なぜそこまでする?"
スペン「(眼鏡をそっと押し上げ、真剣な目で)……彼らは確かに、加減を知らないポンコツです。ですが、自分の作った生き物たちのために、毎日必死に、不器用な愛を注いでいる。彼らが世界を愛する熱量は、規約の数式なんかよりも、ずっと世界の寿命を延ばしていると私は確信しています。彼らの世界が、お役所仕事のペナルティで消されるのは……管理官として、私は納得がいきません」
委員会の上司「……はぁ。君がそこまで言うなら、今回は『不問』にしておこう。ただし、次はないぞ。彼らの手綱はしっかり握っておくんだな」
スペン「――失礼します」
(上院の重い扉を閉め、誰もいない廊下に出たスペンは、深く、深くため息をついた)
スペン「(ふぅ……危なかった。我ながら、あの3人には甘いところがあると反省しなければな。昔、ニルが暴走した時、私を庇ってくれたあの日の傷はもうとっくに治っているというのに……。まあ、彼らが笑顔で神様を続けられるなら、たまにはこんな裏工作も悪くない、か……)」
(少し優しい笑みを浮かべたスペンは、3人から没収した「言い換え前の元の報告書」を、カバンからチラリと取り出して広げた)
スペン「(さて、彼らが一体どんなやらかしを隠そうとしていたのか、一応目を通しておくか。……ん? 最初のページは……ライクのアルーフ世界か。ええと……【メロンパンを地面に3個置くと、空から大量の100円硬貨データが優しくフワフワ降ってくる仕様。金塊メテオは修正済み】。……ふむ、これなら安全だな、偉いぞライク。……って、いや待てよ?)」
スペン「(降ってくる量が……【100トン分の100円玉】……!? 計算すると、一回の発動で【約20億1600万円相当の硬貨】が無限に供給される……!?
これ、一瞬でハイパーインフレが起きて通貨価値が紙クズ以下になり、経済システムが木っ端微塵に崩壊するやつじゃないか!! 優しい顔して国家転覆レベルの経済テロバグを仕込んでるぞ、この神!!!)」
スペン「(……い、いや待て、次のページはニルか。【ウサギの前で14分間放置すると世界がフリーズし、私の生歌賛美歌が鳴り響くホラー仕様】……。そしてサルムは、【美味しいパンを食べると街全体で3万人が強制的にフラッシュモブを踊り、全住民が重度の筋肉痛になるディストピア仕様】……!?)」
(スペンの顔からみるみる血の気が引き、書類を持つ手がブルブルと震え始める)
スペン「(ち、ちょっと待ちなさい……! 私が裏工作でセーフにした世界って、無限インフレによる経済崩壊と、呪いの生歌フリーズと、強制筋肉痛パレードが、全部同時進行で起きている超絶大災害の世界じゃないですかーーー!? 合法どころか、今すぐ世界線を爆破しなきゃけないレベルの超重罪グリッチ(不具合)だぞ、これ!!!)」
(その頃、いつもの狭間の空間 ―― )
サルム「ねえねえニル、メロンソーダにポテト浸して食べると、なんか新しい概念の味がして超美味しいんだけど!」
ニル「……味覚までサルムに汚染されていく。あ、でもこれ、ちょっと悪くないかも」
ライク「あぁ、ポテトとメロンソーダの糖分が私の脳の数式を刺激して……。いや、待てよ? 私のメロンパン100円玉無限増殖バグ、スペン先生に没収されたってことは、あの書類を先生が今頃読んでいるということで……。ということは、因果関係を計算すると、あと3秒で――」
(ドガァァァーーン!!! と空間の壁が爆音と共に蹴破られ、記録簿を両手に持った、般若のような形相のスペンが乱入してくる)
スペン「あなたたち3人ともーーーーー!!! 今すぐそのポテトを置いて、私の前に正座しなさーーーい!!!! 説教です!! 今から140時間ぶっ続けで、利用規約の音読とデバッグ(バグ修正)作業の刑です!!!」




