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異世界偏食飯  作者: 愛姫
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世界一の女神

 私は世界一可愛くて世界一慕われてて世界一人望のある女神。欠点なんてない持ち合わせてない。強いて言うなら少し食べ物に興味があるくらい?そんな私も今はハンカチを噛んでいる。どんな場所でも覗ける水晶⋯⋯通称ドコデモ・ミ・エール君。彼がいれば世界の果てだって見えちゃう。そんな私が今覗いてるいるのはとある国のとある厨房。


「キィィィ!! 着いて早々になんて美味そうなもん作りやがんだ!

 デロンデロンに輝いた鶏肉! 油にコーティングされて私といい勝負するぐらいに⋯⋯

 ちくしょう! 何か作ってもらうべきだった!」


 一人悲鳴をあげる女神。誰もいない部屋でただ、悶えるだけ。その事を方の本人は知る由もない。




「キエエェェェエ!」


 突然の悲鳴のような声で俺は目が覚めた。窓を開けると六、七メートルぐらいはありそうな鳥⋯⋯のようなものが飛んでいた。


「昔のプテラノドンてあんな感じだったのかな⋯⋯」


 見たことない大型生物に関心を持っている時、突然ドアが開いた。


「おっはよう飯郎〜」


「おはよう姫龍」


「よく眠れたか?」


「まぁね。それよりさっき大きな声なに?」


「あれはな。城の中央に住んでいる仲間の龍の声だ。いつもこの時間になると起こしてくれるんだ!」


『な、なるほど⋯⋯(にわとりじゃねぇか⋯⋯)』


「あ! そうだ姫龍。朝は何が食べたい?」


「うーん⋯⋯パン?」


「そこは普通なのか⋯⋯よし! 承った!」


 この世界に来て二日目の朝。どんな料理を作ろうか悩みながらキッチンの扉を開けた。


「おはようございまーす!」


「グッドモーニング! 飯郎〜」


「りょ、料理長は朝から元気ですね⋯⋯」


 出会って早々、俺の手にキスをしてきた。


「そりゃもちろん〜昨日からワクワクが止まらないのさ〜所で、今日のメニューは何かな☆?」


「はい。姫龍がパンがいいと言ってたのでサンドイッチでも作ろうかと」


 俺は手を洗いながら答えた。


「ん〜サンドウィッチ! 作り手の個性が光る食べ物だね?」


「そうなんですか? ここではいつもどんなの挟むんです?」


「そうだね。ここではお肉を挟⋯⋯」


(なんだ。サンドイッチは普通っぽいな)


「挟むだけだーね」


「⋯⋯え? それだけ?」


「おうソーリ〜すまない。後はレタスを⋯⋯」


(なんだ、レタスも挟むのか)


「レタスだけを挟んだヘルシーなサンドイッチとかだね!」


「⋯⋯もしかしてだけど、一種類しか挟まないの?」


「⋯⋯まさか⋯⋯飯郎の世界では色んなものを同時に挟むのかい!?」


「うそだろ⋯⋯?」



 女神が言っていた離乳食以下発言。食材や調味料は揃っているのに。何かがおかしい⋯⋯


「俺らの世界ではハムとかレタスとか色んな具が入ってるけど⋯⋯」


「トレビアーン! なんだいその食のフルコースは!?」


(大袈裟すぎるだろ⋯⋯)


「ま、まぁとにかく。姫龍に食べさせるの作るか」


「とても気になりマース!」


「そうだな⋯⋯まずは定番なの行くか。料理長! ゆで卵は作れるか?」


「お任せ〜それぐらいなら朝飯前さ☆」


「そうか、少し固めに頼むぜ。なら俺は⋯⋯」


 食料庫を覗くと、空っぽだったのがある程度補充されていた。


「お! ピーマンとウインナーあるじゃん。それと⋯⋯」


 当たり前のようにある冷蔵庫。その中から“ある物”取り出した。


「まずはピーマンのヘタを取って半分に。それから一センチぐらいに切ってくぜ〜」


「ぴ⋯⋯ピーマンですか? サンドイッチには合わなそうな⋯⋯」


「料理長⋯⋯サンドイッチって言ったけど今回はサンドしないぜ」


「――それサンドイッチ言わないんじゃ――」


「まぁまぁ〜細かいことは気にするな。それからウインナーを斜めに切る!」


「な! 斜めですと!? こんな形、見た事アーリマせん!」


 ウインナーを切り終わったらコンロに火を付けた。


「フライパンが温まったら少量の油を引いて⋯⋯切ったウインナーを入れる〜」


「ほうほう⋯⋯ウインナーに火を入れるのですな?」


「その通り。そして火が入ったらピーマンを入れる!」


「な〜るほど! 火の入りにくいものから入れたんデースね!」


「そうだ。そしてある程度火が入ったら、ピーマンを端に避けて溶いた卵を入れる〜」


「ンノーーーォォ!? 飯郎正気ですか!?」


 頭を抱えて信じられないと言わんばかりの顔をする料理長を横目に、卵をすかさず回した。


「この卵をスクランブルエッグみたいするのが狙いなんだ」


「ほ、ほんとですかぁ?」


 カシャカシャと音を立てて箸を回す。火が入りどんどん細かくなる玉子。


「仕上げに塩胡椒をちょろっとかけて〜こいつは一旦置いとくぜ」


 タイミング良く鳴るタイマー。


「おっ!? 卵が出来上がったようです〜」


 ボコボコと沸騰する音。鍋を持って台所にお湯を捨てる。立ち上る湯気。


「オウ! 熱いデース! でも卵は熱いうちに剥けと言いマースからね!」


(誰が言ったんだよ⋯⋯)


 苦戦しつつも綺麗に剥けた卵。


「料理長! 茹で加減バッチリだぜ!」


「あったりまえデース! 卵料理はお手の⋯⋯」


「そんじゃ、早速潰すか〜」


 ボウルの中に乗った卵。それを上から押しつぶす。


「わ、私の大事に育てた、ゆで卵⋯⋯が⋯⋯」


 ぐしゃぐしゃにされるゆで卵を見て泡吹いて倒れた料理長。そんな事は気にせずに潰していく。


「ふぅ⋯⋯少し粗めでいいかな? ゆで卵の食感が少しある方が好きなんだよな〜」


 潰したゆで卵に大量のマヨネーズ。これでもかと入れる。そして仕上げに胡椒を散らして


「完成〜定番の卵たるたる! 料理長、いつまでも倒れてないで味見してくれよ!」


 泡吹いてる料理長の口に無理やり突っ込んだ。意識は無いが動く口。ゴクリと飲み込む音がした。


「トレビアーン!! マヨネーズと胡椒が繰り広げる舞踏会! 鼻に広がる香りに、卵の味! たまに当たる粗い白身も一つのアクセントになっていてまさにフィナーレを飾るヴァイオリンのよう!」


 倒れてたのが嘘のような饒舌。


『う、美味いなら良かったけど⋯⋯(何言ってるか一つも分かんなかったぜ⋯⋯)』


 その時、鳴ったトースター。


「お! 出来上がったか〜」


「め、飯郎様! それは!?」


「美味そうだろ〜? ケチャップを敷いてその上にチーズを乗せたんだ」


「そ! そんなの美味いに決まってますぞ!」


「そうだ、それだけでも美味い。ただ、この上にさっき作った奴を乗せればなんちゃってピザの完成だ!」


「クレイジー!? ピザですと!?」


「まぁ、はっきいって味は全然違うけど。美味いのは間違いないぜ」


「な〜るほど。ん?飯郎様、もう一枚焼くのですか?」


「そう⋯⋯これは最後のお楽しみだ!」



 ◇◇◇



「お待たせしました姫様。こちら飯郎様お手製のサンドイッチでございます」


「ほほぉ〜? サンドイッチか。どれどれ⋯⋯」


 次々に机に運ばれるお皿。


「サンド⋯⋯イッチ? 料理長よ。サンドされていないぞ?」


「め、飯郎様が言うにはそんなに大差ないから気にするなとの⋯⋯」


「まぁ美味ければ問題ない! して、この上には何も乗っておらぬが?」


「そちらはですね、もう一つのお皿の卵たるたるを好きなだけかけて食べるそうです」


「す、好きなだけ⋯⋯なんといい響き! これでもかと乗せてやるわ!」


 周りを見渡す姫龍。


「あれ? 飯郎はどうした?」


「とっておきを準備するようですので先に食べててと⋯⋯」


「そうか。なら先に頂こう。まずはこの沢山乗ってるやつから!」


 口を大きくあけてかぶりついた。その時、鳴り響くカリカリのパン。ザクッと音を立てて。


「こ、これは!? 広がるケチャップの香り! それに合わさるように来る卵のクリーミー! そして味の決め手のウインナー! ほろ苦く、しかし邪魔をしないピーマン!皿の上は溢れかえっているのに、 一人一人が欠かせない役割を保っておる!」


「飯郎め⋯⋯なんと恐ろしいものを⋯⋯さて、次はこの卵たるたるを、かける! 乗せる! 溢れ出る!」


 タワーのように積み重なり、パンの上からはみ出る程。


「んむ! これも美味い!」


「私も味見させて頂きましたがとても美味びみでした」


「飯郎あやつ⋯⋯」


「なんだ? 今名前呼んだ?」


 オシャレなお皿に蓋をして料理を運んできた。


「飯郎! 待っておったぞ! ソナタこんなに美味く恐ろしいものを!」


「楽しんでもらってて嬉しいが多分、姫龍的にはこれが一番だぜ?」


「な! なんだと!?」


「とくとご覧あれ。スイーツの砂糖トースターだ」


 そう言いながら蓋のしたお皿を開けた。途端に香る甘い匂い。


「こ! これは!?」


 こんがりときつね色になった砂糖。


「これはパンにマーガリンを塗ってその上から砂糖をかけたものだ。簡単だけどむちゃくちゃ美味いぞぉ?」


 いくら唾を飲み込んでも口の中から溢れ出る。


「い、いただこう⋯⋯」


 口に入れた途端広がる甘み。マーガリンと砂糖のダブルパンチ。少しシャリシャリと口に残る砂糖が甘さを引き立たせる。こんがりと焼けた、小麦の香るパンの上で甘さの争いが起こっている⋯⋯


「こ、降参だ⋯⋯」


 思わず白旗を上げた姫龍。


「え? ありがとう?」


 何に対しての降参か。慌てる飯郎。


「私も食べたいボーノ!」


 お皿の上の料理に目を惹かれる料理長。


「うますぎる⋯⋯」


 未だに机の上で白旗を上げる姫龍。


「な!何それ! 絶対美味しいじゃない!」


 水晶を見てハンカチを噛む女神。


「あ、兄者よ⋯⋯美味しそうきぎますぞ!」


「お、弟よ⋯⋯気持ちはわかるが⋯⋯」


「あぁ⋯⋯今にも食べられてしまいますぞ!」


「くっ! 弟よ、次⋯⋯次は頂こうではないか!」


「あ! 兄者!」


「あんな美味そうなもの⋯⋯罠と分かっていても我慢出来ない⋯⋯」


 そう言って、影から首を振った片割れ。

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