キャラ強すぎだろ
「姫様! そのお方は?」
白い袖を通した料理人らしき人物。
「お前ら聞いて驚け⋯⋯この人は女神様が連れてきてくれた異世界人だ!」
それを聞いた途端皆が俺の方を向いた。厨房に響き渡った姫龍の言葉。
「うおおおおお!!」
厨房にいる全員がガッツポーズをして声を張り上げた。
「まさか⋯⋯女神様が与えてくださった食材の世界の住人⋯⋯!!」
(ん? 何を言ってるんだ?)
「oh⋯⋯まさにトレビアーーーン! 我らの食文化を進めた世界の方がお見えになるとは......」
金髪のコック帽を被った奴がそう言いながら俺の手にキスをしてきた。
「あの⋯⋯ついていけないんですが⋯⋯」
あまりに盛り上がる皆。ここで俺は一つの疑念が浮かんだ。
【――もしかして女神、俺に伝えないといけないことないよな?――】
いやいやまさか。二度あることは何度やら。いくら女神でもそんなミスするわけな⋯⋯
「あ、そう言えばまだ言い忘れてたことあったわね」
ポテチのサクッと弾ける音がした。
「とりあえず皆、落ち着け! これからうちで働くことになった飯郎君だ! みんなよろしく頼むぞ!」
「うおおおおお!!」
「よし、飯郎! とりあえずだが何か料理を作ってくれないか? 私お腹が空いちゃって⋯⋯」
「ぬぉおおおぉ! 姫様ズルいですぞ! 我らも食べたいであります!」
「ちょ! ちょっと待って!」
皆の歓声を止めるような大声で言った。
「俺⋯⋯この世界に来たばっかだからまだ勝手が分からないんだ。だからとりあえずキッチン見ていいかな?」
「そうだな! 少し急かしすぎたな! よいよい!存分に見て回れ! 料理長〜案内を頼んだぞ」
「んふ⋯⋯トレビアーーン! 任されました姫様。この私、ボンジョルノ・パスタ・ユデールにお任せ下さい!」
(パスタ⋯⋯茹でる?)
「それでは飯郎様。 どうぞキッチンへ」
◇◇◇
「なるほどなぁ⋯⋯」
俺はキッチンを見てわかったことがある。それは、
「元の世界の調味料、それにキッチン道具。全部揃ってるやん⋯⋯」
明らかに見覚えのある物ばかり。死ぬ直接に買ったカレールーまで。中華鍋に中華専用厨房にIH、ガスコンロまで。ありとあらゆる物が揃っている。
「えっへん! 女神様が送ってくれたからな!」
両腕を組んで、俺の発言に嬉しそうな顔をした姫龍。
「送った⋯⋯? それってどういう⋯⋯」
「うぎゃああぁぁ!!」
その時、悲鳴が聞こえた。
「ど、どうした!?」
「りょ、料理長⋯⋯食材が⋯⋯もうありません!」
「なに!?」
さっきまでの付けたような設定を忘れたのか、部下の言葉を聞いてすぐ、食べ物部屋に駆け込んだ。
「全てが⋯⋯食い尽くされている⋯⋯オウノォォォォオ!」
泣き出す料理長、それに釣られてか部下達まで泣き出す始末。阿鼻叫喚の空間が出来上がった。
「まさか⋯⋯あやつの仕業か?」
「姫龍⋯⋯どういうことだ?」
心当たりがありそうな、意味深な発言した。
「姫様⋯⋯恐らくは⋯⋯あの、二首ケロベロスの仕業かと⋯⋯」
「⋯⋯はい?」
「くそう! あやつめ⋯⋯最近は大人しかったのによりによってなぜ今なんだ⋯⋯」
爪を噛んで、何やら言っている姫龍と料理長。この空間に俺だけ取り残された。
絶望してる皆の横を通って食材部屋に入る。
「すまない飯郎⋯⋯今回ばかりは私たちのミスだ⋯⋯」
一同、手を丸め込んで悔しそうな顔をする。
「あれ? 鶏ももと玉ねぎあるじゃん」
「飯郎⋯⋯いくらお前の腕が凄くてもそれだけでは⋯⋯」
「なんでみんなしてそんな顔してるか分からないですけど、これだけあれば作れますよ。最高の料理が」
皆が一斉に顔をあげる。
「いやいや⋯⋯流石にそれはお前でも無理だ。二つの食材だけじゃ美味いものなど⋯」
「大丈夫ですよ。幸い調味料がありますから。なんとでもなりますって〜」
俺はしまわれてる包丁を吟味する。
「うーん⋯⋯この世界での俺の相棒になれそうなのは⋯⋯こいつだ!」
一見普通の包丁。だがそれでいい。世のお母様たちが使うなんでも包丁だ。
「それじゃあ始めるぜ。この世界で初めての料理をな!」




