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異世界偏食飯  作者: 愛姫
16/25

昨日のポンコツは今日の相棒

「私はね、私のせいでおかしくなってしまった食文化を変えたい。そしてあわよくば、もっともっと美味しい料理が食べたい!」



 神様の根底にあるのは結局の所、食欲らしい。ただそれでもいいと思う。少し不純な動機ではあるが、誰一人傷付かず、回り回って自分に帰ってくるのだ。犯してしまった過ちを変える。その為に一歩を踏み出した。惰眠と悪魔的な食欲で上から見下ろすだけだった人が、自分の手で何かをなそうとしている。



「なるほど⋯⋯それで、俺と旅と言うのは一体?」



「私はね、様々な種族の代表に料理と、とある調理器具を与えたの」



「調理器具⋯⋯まさか!?」



 初めて異世界に降り立ち、キッチンを開けた時の記憶が蘇る。



「そう⋯⋯龍族には、“あの”」



【神器圧力鍋を! そしてパスタ料理を教えたわ!】



 知恵の輪のように謎が一つ一つ解け、全てを理解した。



「なるほど⋯⋯それで龍族の皆さんは圧力鍋の使い方を模索していたと⋯⋯」



 点と点が繋がった。そしてわかった。やはりこの世界は神様が中心に回っていると。神様ありきの、いや、

 神様無くしてあの世界は成り立っていない事に。



「それでね、飯郎。貴方は私と一緒に各種族の代表に会いに行って欲しいの。そして⋯⋯」



【本物の料理がなんなのか教えてあげて!】



 神様の指が俺を指した。メラメラと燃える瞳。口に出さずとも問いかけてきた。

 世界を変えれるのは俺しかいないと。唯一、本場、地球に住んで、料理人として腕をふるってきた俺にしか出来ない事。ある意味、一番料理事情に詳しいとも言える。



「神様。貴方には命を救ってもらった恩も、死ぬしか無かった俺に、新たな道を示してくれたことも、何もかも感謝してます。それに、料理人として、食の道を突き進む者として、あの世界の現状を変えたいと思っていました。なので⋯⋯」



【俺からもお願いします。一緒に行きましょう!】



 神様となら絶対に出来る。世界の全てを知り、今起きている現状も把握してるはずだ。起こりうる料理の問題は俺が、そして誤って撒いた種を狩る神様。間違いなく、一番の⋯⋯いや、世界一の⋯⋯俺ら以上にイケてるコンビは居ない!



「そうか! そうと決まれば我も下界に降りる準備をしなくては。飯郎よ、お主は一足先に戻っておれ。強制的に魂だけを連れてきたからな、馴染むのに時間がいる」



「まぁ、よく分かりませんが了解です! それじゃあ向こうで会いましょう!」



「あぁ! それじゃあ向こうで!」



 神様はジャンプし、俺の額に指を触れた。途端、視界全てが暗闇に包まれた。



 ◇◇◇



(あれ⋯⋯どうなってるんだ⋯⋯)



 手足の感覚もなく、ただ意識があるだけ。目に映るのは全て黒。何も見えない。



「おい! ###」



(なんか今、どこからか声が聞こえたような⋯⋯)



「飯#!」



 間違い。俺の名前を呼んでいる人が居る。



「おい! 飯郎! 起き⋯⋯ろおぉぉお!」



「うるせえぇ!」



 耳元で叫ばれ、脳が揺れた。反対の耳に音が貫通するかと思うほど。あまりのうるささに目が覚め、飛び起きた。



「ん? ここって⋯⋯」



 辺りを見渡しても見たことの無い場所。恐らく俺の知らない城のどこかなんだろうが⋯⋯

 ベッドが列をなし、並んでいる。鼻から香る消毒液のような匂い。



「飯郎! 先に返したのに私より遅いとは随分な寝坊助のようだな!」



「あれ、この声神様⋯⋯」



 そういえば聞き覚えのある声。それに随分下半身が重い。視界の下にチラチラ映る髪の毛のようなもの。



「ふん!」



 鼻息を荒立て、何故か俺に乗っかっている。



「神様⋯⋯いくら小さくなっても重いもんは重いです」



「飯郎⋯⋯お前はデリカシーというものが無いのではないか?」



「すみません。何故か神様相手だとなくなってしまうんです」



「いやいや、神相手にこそ、デリカシーを持って接するのが普通だろ?」



「⋯⋯言われてみれば確かに⋯⋯」



 本当はこんなぞんざいに扱っていい人ではないのだが、本人の雰囲気と、それほど気にしてなさそうな態度からか友達のように接してしまう。



「態度改めて、崇め奉りましょうか?」



「いや、遠慮しとく⋯⋯君たち日本人は神に対する敬意がないからな。それを分かっていてわざわざやらせるつもりは無い。それに、飯郎が私を崇めるとか鳥肌出てくるからやめてね⋯⋯」



 本気で嫌悪感を抱いてる顔。こっちの真面目な提案を冷ややかな目で拒絶した。



「飯郎はまだ起きないのか?」



「姫様⋯⋯このような症状は初めてです。飯郎様は異世界の方なのでもしかしたらそちらの病気かも⋯⋯」



 扉の前から誰かの話し声が聞こえた。



「そういえば神様。俺が倒れて何時間経ったんです?」



「んぇ? あー⋯⋯まぁ⋯⋯」



 明らかに目を逸らした。嫌な予感がする。何度も体験したこの感じ。間違いなく、なにかやらかしたと分かる。



「神様? 怒らないので言ってください」



「ほ、ほんとに?」



「ほんとです!」



「⋯⋯に、ニカゲツ」



「ん? なんて言いました?」



「にかゲツ」



「にかげつ? ⋯⋯二か月!?」




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