不安と恐怖と混乱した街
研究所へと招き入れられた、ウカ達。
変わりゆく周りの環境を感じながらも、不安を未だ拭えないまま─
未来への希望は、見出す事は出来るのか─!?
─第6話─
目を開けると、見知らぬ天井が目に入った。
そこは異空間の様で、それでいて温かみのある光に包まれていた。
昨晩はネリ研究所に泊まった事を、一瞬忘れていた。
『おはようございます。マスターレン。』
ウカが声を掛けて来る。
その声に反応をしながらも、携帯も何もかも捨てられた事を思い出し、時間を尋ねるともう昼過ぎになろうとしていた。
今日は、この後に自宅に戻り身支度や着替えを持って来ると言う、最優先でやるべき事が残っている。
幸い、今日は土曜日で学校は休みであったのだが、不意に片付けの途中であった事も思い出していた。
『ウカ、学校の片付けが途中なんだけどさ。』
その声に反応するかの様に、研究者の男が口を挟んで来た。
『しばらくは、学校へは行かない方が良い。』
その声にはしっかりとした力がこもっていたが、どこか説得力のある、それでいてどこかで聞いた事のある様な、聞き取りやすい声でもあった。
どこで聞いたかは思い出せずにはいたが、ふと見ると、昼食の準備が整っていた。
作るのに一緒に手伝ったらしいリンも、昨夜から目を開けずに眠り続けていたレンを心配する様に見ている。
『あんたさぁ〜、少しうなされてたよ?』
そう言いかけて、リンは昼食のパンを頬張った。
『そうなのか?』
怪訝な表情を一瞬浮かべたレンではあるが、特に気にする様子もなく、食事をする事にした。
満面の笑みで食事を続けるリンを見ていると、不安すら消し飛びそうになるくらいの、どことなく可愛さが見て取れる。
何より、リンの笑顔は久しぶりに見た気がする。
コイツは昔から当たりは強いが、笑顔だけは可愛いのだ。
それを改めて、思い出していた。
『アタシの顔に、何か付いてる?』
リンに不意を付かれ、少し焦ったが何も言わず誤魔化す事にした。
可愛いと言えば、何をされるかわかったものではない。
きっとまた、蹴り飛ばして来るかもしれない。
昼食を終えると、ウカを防護役として自宅へと戻る準備を始めた。
出発前には研究者の男が、コレを!と、リュックを渡してくれた。
その中身は、護身用と称して何やら色々詰めてくれた様だった。
そんなに危険にも思えなかったが、一応受け取っておく。
必ず何かあれば連絡をする様にと、念を押され新しい携帯端末を渡してくれた。
更にGPS端末もあるから、迷う事もなく帰っては来れるはずだった。
必ず生きて研究所に戻る事を何度も念押しされ、出発をする。
『じゃあ、行ってきます。』
そう研究者の男に言い終わると、ウカとリンと共に研究所を後にした。
ここから自宅までは、片道で徒歩ではあるが、約30分もあれば到着出来るであろうと、計算をしたウカの予測を元に、ナビをしてもらいながら安全なルートを歩き始める。
公共交通機関は使えないと語るウカに、研究者の男の事を尋ねてみた。
名前はネリ博士と言い、未来のウカ達を作り上げた生みの親であり、AIによる独立戦争に巻き込まれた被害者の1人であり、未来の指導者レンやリンを守る為に、未来からウカを派遣した張本人だと言う。
それを聞いて、改めて疑問をぶつける。
『俺は、、、死ぬのか?』
率直な疑問だった。
指導者とは言われても、未来にもし自分が生きているのなら、守る為に派遣する事はないのではなかろうか?
『マスターレンは、死にません。』
ウカは自信を持って答えていた。
なぜなら、ワタシが守るのだから─と。
そんなウカとレンのやり取りを聞いていたリンが、ねぇ?アレって?と、何かを指差している。
その方向に目を向けると、街のシンボルでもあった電波塔の形が、何かを取り付けた様な異様とも言える歪な形に変形していた。
元々この街の電波塔は、古代のトウキョウタワーの様なスラッとした形で途中に展望台があり、赤と黄色で鮮やかな色をしており、この街のシンボルとして建造されていたのだが、今や見慣れたいつもの光景はそこにはなく、黒と赤に塗られた毒々しい色をしており、展望台があったであろう場所には禍々しい花の様な形をかたどった、6本のアームが伸びていた。
『なんだよ、あれ。。』
道行く人達も、変わり果てた電波塔を見ては口々に話している。
携帯を使い、撮影をしている者もいれば、テレビカメラの取材班らしき人達もいた。
街は一夜にして、大混乱に陥っていたと言っても良いだろう。
だが─
そんな変わり果てた風景の中でもウカは周りを常に警戒し、いつでも戦闘が出来る準備を整えている様にも見えた。
ドォーン─
突然、電波塔の方から聞こえた爆発音。
見れば、空中に車が浮き上がっていた。
『あっ……!』
声を上げたが、何も出来る訳ではない。
よく見れば、撮影する為に近付いたであろうテレビ局の撮影用の車だった。
電波塔の周りを飛んでいたヘリコプターも右往左往しながら、墜落して行く。
その光景に目を奪われながらも、歩く足を止めてはいけないとウカに言われ前に進み続けた。
何も出来ない無力な自分がもどかしかった。
目の前の惨劇を見つめるだけの自分が歯痒かった。
しかし─
ウカには今は何も出来なくても良いと、言われた。
むしろ、近くに居たとしても、足はすくみ何も動けすらしないだろう事は、誰よりも自分が1番良く知っていた。
この世界を変える事は出来るのだろうか?
この俺に、そんな事が??
不安と恐怖に包まれながら、無言で歩き続けた。
混乱し、変わり果てた街を見て、改めて世界が変わり始めた事を認識する─
しかし─
現状は何も出来ない事を、痛感するだけだった。
明日への不安が押し寄せる中、歩き始めたのだが…
今後の展開を、お楽しみに─




