33.婚約者の紹介
家に帰ったハロルドは、唖然とする祖父母にエリザベータを紹介した。
「彼女はエリザベータ・ルビー嬢。俺のお嫁さんになる人だよ」
「「お嫁さん」」
衝撃のあまり、二人の言葉が被った。『お嫁さん』。
もっと後に聞くことになると思っていた言葉だった。目の前の少女は嬉しそうに頰を染めている。最近のエリザベータはハロルドの前ではすっかり表情豊かになっている。故に、祖父母も「うちの孫のこと、好きなんだろうなぁ」なんて思った。
「ご紹介に与りました。わたくしはエリザベータ・ルビー。エリザ、とお呼びくださいませ、お義祖父様、お義祖母様」
優雅にカーテシーを披露するエリザベータを見て、二人も挨拶を返した。
そして、ハロルドを見ると、エリザベータを見て微笑んでいる。二人は目を合わせて頷いた。
彼らが好きあって婚約しているならまぁそれが一番だ。
祖父母両方の判断だった。
初めは政略的な婚約だと聞かされて不安だった彼らだが、思い合っているならそれに越したことはない。
「そう。可愛いお嫁さんねぇ」
のほほんとそう言うハロルドの祖母ユイに、ペーターは「マジィ……?」みたいな顔をした。彼はエリザベータの強さを目の前でしっかり見ているので、あまり可愛いという感じがしなかった。どちらかというと美しいと思う。
(ハロルドの隣に立っても全然許せる)
フォルテの教会ではエリザベータ込みで布教をしている少年は腕を組んで頷いた。
美しさは信仰を呼ぶ。ハロルドの一番美しいところはその心根だが、それを表したような美しい外見に並べるものは少ない。
ペーターも相変わらずぶっ飛んだ考えだった。
「じいちゃんとばあちゃんにも紹介したくって来てもらったんだ」
「あらあら、それではおもてなししないとねぇ。ペーターくんも、泊まっていくわよね?ハルと同じ部屋でいい?」
「……はい!」
受け入れられないかも、と思っていた。
当然のようにかけられた言葉にペーターは少し泣きたくなった。家族を、少しだけ思い出した。
ユージンが「お嬢さんの部屋はどうしようか」と悩んでいると、エリザベータは「心配はいりませんわ」と微笑んだ。ゆっくりと指を差した先には小屋ができていた。
「まねきねこ商会で購入した、ちょっとしたお泊まり用の小屋ですわ。使用人も数名います」
「護衛も来てる。……さすがに一緒の家では寝かせられないと侯爵にも言われてしまったから」
「わたくしは既成事実なんていくらでも作っていただいて構いませんけれど」
「俺たちがよくても、外聞が悪いんだよ」
というか、ハロルド的には砂漠を旅していた頃に一緒だった時点で割とどうこういえた話ではないと思うのだが、周囲に知られていないのでセーフ扱いである。




