32.帰郷とお野菜
光が眩しくて閉じた瞳を開く。すると、そこは緑いっぱいのど田舎だった。
エリザベータは周囲を見て、「あら、家が少ない」という感想を述べた。
「田舎だからっすね」
アーロンがそう苦笑すると、ペーターも「ここって、俺らが住んでたとこからどのあたり?」とキョロキョロする。
「少しだけ離れてるかな。東にずっと行った村だよ」
同じ貴族の領地内ではあるものの、子どもの足で徒歩では数日かかるが、馬車では半日という距離だ。
ペーターにはすでにその村が壊滅してなくなっていることは伝えている。なぜか妙に嬉しそうだったのを見たハロルドたちは「これはあの村、想像以上に何かやってたらしいな」と察した。
「じゃあ、行こうか」
ハロルドの言葉に頷いて、全員で村に向かう。すると、アーロンの弟が「あれ?兄貴」と少し驚いた顔で立っていた。その手にはクックがある。背負っている弓矢から彼が自分で仕留めたのだろう。
「ただいま、グレン」
「おかえり。ミラが寂しがってたよ。ハル兄もおかえりなさい」
「うん、ただいま。そうだ。野菜いる?」
「……!!いる!!」
ウッキウキでハロルドから野菜を受け取るグレンに、アーロンは「野菜に負けた気がする……」と少し遠い目をした。
「でもハルの野菜はうめぇからな」
「今年は例年以上だよ」
ハロルドに与えられた夏の神エスターの加護。それによって増えたスキルの名は「太陽の恵み」。
普段なら、エスターが与えるスキルの中でもトップオブいらねースキルなのだが、ハロルドが持つ緑の手と合わさった結果、効果がとんでもなく破格のものとなった。そして、夏の神が与えたスキルのせいか、『夏』との相性が抜群だ。結果としてめちゃくちゃ美味しい究極の夏野菜ができた。これを食べることでエスターの加護効果でちょっぴり健康になる。精神系の魔法は解ける。
(まぁ、他のスキルに比べたら大した効果ではないし)
この野菜が何かをもたらすなんて、ハロルドは全然、全く、これっぽっちも考えていなかった。
加護付き夏野菜の効果:心身がちょっぴり健康になる




