34.栄華を求める者2
ロナルドの後ろでローズは溜息を吐く。
正直なところ、ハロルドの『らしくない』様子が心配だった。
目の前の少年はいつか勝手に自滅するだろう。目に見えている。こういう男は欲に目が眩みやすいのだ。だが、その過程できっとハロルドを利用しようとするだろう。
それが予想できるから、ハロルドは彼との関わりを絶っていたはずだ。だというのに、いきなり利用しようだなんて思うはずがない。
(フォルテ様はこういうことしないし、ユースティア様はむしろハル自身を英雄にしたそう。薬学馬鹿は手を出さないだろうからぁ……うーん……)
いくら隙を狙って狡猾に物事を仕組んでいたとしても、男が得意なのは暗躍で、勇者なんてジョブスキルを抱えた規格外と戦うなんて想定されていない。それでも男がここに引っ張り出されてきたということは、おそらく相当に追い詰められているということだろう。
何せ、マーレ王国は雪の勢いが弱まるどころか増しており、病は蔓延して多くのものが死に瀕している。医師も薬師も、解決に至る薬を得ることができず、彼らすら倒れていった。王と彼の寵妃、そして目の前にいる男の主人は薬を得てピンピンしているが、愚かにも贅沢を求めるだけで打開策を得ようと努力することすらなかった。
数多くいた王の子もすでに五人しか生き残っておらず、そのうちデイビッドを抜いた二名は這々の体で国から逃げた。残る一人は寵妃の第二子であるが故に国に残ることを余儀なくされている。親と兄が恨みを買いすぎて、下手に城を出ると殺される可能性が高いからだ。
(まぁ、いっか!ハルのところに戻ったら分かることだろうし!)
頭脳労働は自分の仕事ではないと、ローズが思考をぶん投げた瞬間だった。
ドラゴンの咆哮が聞こえる。それを聞いた男は勝ち誇ったような顔を見せた。
「は、ははは!お前たちがここで遊んでいる間に、ドラゴンはこの王都で暴れ出す!」
男はそう笑う。
けれど、それを聞いてもロナルドはつまらなさそうだ。
「ドラゴンなんか、一部除いてそんなに強くねぇじゃん」
「ハルだけでも十分」
シャルロットの名前を出せば、ロナルドが女の名前に反応すると予想してローズはその名前を伏せた。実際に今のハロルドであれば自力でなんとかできるだろう。力をセーブしているだけで、力がないわけではないのだ。
そんなわけがないと勝ち誇った顔をする男は、自分が狙った神の寵児がユリウスのドラゴンを相手に怯えていたと聞いている。それから後にどれだけの強化が入ったか、彼は知らないのだ。
男はゆっくりと地面に魔力を吸わせる。すると、男の身体が地面に埋まっていく。
「何だ?きも」
意識を奪おうと、剣の鞘ごと男にぶつけようと振り落とす。すると、硬いものに弾かれるような、少し高い音がした。
それに気付いたローズが炎の魔法を向ける。それにぶつかるように黒い炎が彼女に降りかかる。
押し返された魔法にローズは目を見開いて回避するが、その魔法が少しだけ掠った。
「こっのぉ……!」
「は、今回は引いてやろう。勇者……、なるほど良い。次はお前も手に入れる」
「キッメェ。こんなのに狙われてるからあのクソガキ、あんなに擦れたのか」
ドン引きした顔でロナルドはそう呟いて、男に攻撃を与えることを諦めた。
そして舌舐めずりをする。
逃亡に特化しているとはいえ、外敵にこれほどの魔法の使い手がいる。
「この防御すらもぶっ壊せる力、手に入れて見せる」
モブがこれだけやれるのならば、主人公の自分ならばもっと強くなれるはずだ。そうなれば、ロナルドを袖にした少女も魅了されるはずだ。
薄ら笑うロナルドの後ろに大きなムーンベアーがいた。その後ろにも多くの魔物が列をなしている。男の撒いた薬は確かに魔物を集めていた。
それから僅か数分後。
騎士団が駆けつけた時には折れた剣を握り血塗れで笑う、それはそれは楽しそうなロナルドが最後の獲物の首を投げ捨てていた。
ロナルドは自分を主人公だと思ってたりする




