33.栄華を求める者1
デイビッドがハロルド(in ネーヴェ)に急かされてドラゴンを必死の思いで説得していた頃、狡猾な蛇のような男は逃げ惑っていた。
おかしい。
こんなはずでは。
そんなことを考えながらも、ある一点を目掛けて飛び出していく魔物の間を縫って走る。
「遅い」
そんな彼に飛んでくるのは混じり気ない殺意と魔物の首である。それはすぐ近くの木にぶち当たると潰れて血が舞った。
そうして足を止めると、レンガ色の髪、次いで不気味に光る緑色の瞳が目に入った。
「魔物も数は多いが、どいつもこいつも一振りで薙ぎ払える程度。黒幕面してやがるのは自分では戦えない頭でっかち。本当にこんな単純作業で変わるもんかよ」
「だからいつまで経ってもアホに利用されるだけなのよ。いーい?アンタが一振りで薙ぎ払った魔物たちは、放っておけばこの先の人たちを食い散らかしてた連中なの!」
いつものハロルドならば、ロナルドにサポートをつけようだなんて思わなかった。リリィの口の悪さや手の速さを考えると、彼女を一人にする方が不安だが、思考にネーヴェが混ざってしまった。ハロルドがいくつか脳内で立てた案の中から、ネーヴェが多少問題はあってもハロルドにとっては一番害が少ないと判断した案を、ハロルドの理性を凍結させてまで押し通した。
ローズは不服そうに腕を組んで、フンと鼻を鳴らした。ロナルドの制服の裾が若干焦げている。これは彼が要らないことをしようとした、とローズが判断した際に燃やしたからだ。妖精は別に人に優しいわけではない。彼女たちはハロルドが好きだから優しいだけだ。
「そんな連中片付けたら感謝されるに決まってんでしょーが!!あと、コイツを捕らえたら背後関係もわかって、大助かりらしいの。これも感謝されるわよ」
「チッ、一思いに首を斬る方が早いってのに」
そんな返しをしてきたロナルドに、彼女は素直に「アンタ、蛮族なの?」とジト目で口にした。
「んなこと言う割には、あのガキ……ベッキー家がなんたらって言ってたやつの首斬っても何も言わなかったな」
「あ、あれは何も知らなさそうだし、生かしとくと碌なことしなさそうだから。それにしても、女は生かすのね」
物騒なことを、世間話でもするかのように口に出す。
その姿はいっそ彼らが侵略者だと言われた方がしっくりくるほどだ。
圧倒的な暴力と命に対する興味のなさ。
「化け物……」
「化け物はお前だろうが。面倒なマネしやがって。……まぁ、お前のおかげで俺は文字通り、『勇者』として扱われることになる。それは良いことだ」
不機嫌そうにロナルドは男に近づいた。
彼の目には栄光と称賛の未来だけしか見えていない。
そのためならば隣の国一つ、滅びたところで問題だとも思わなかった。
ロナルドは興味がないことは覚えないので「ベキリー伯爵家」をベッキー家って言ってるし、例のアイツは死んだ。
正気のハロルドは妖精をロナルドつけようと思わない。




