弥生の嫉妬
【弥生の嫉妬】
「テレビ取材の日取り、もう一度確認しておいて欲しいです。」
健太が鬼空に話寄ると、弥生がすかさず見ている。
健太が一人になった時、弥生は健太に聞いた。
「健太さんは、今、御師おんしさまの側近そっきんなんですか?」
「う、うん。そうだけど?」
記憶が戻ったら、直ぐに仕事に戻れて羨ましく思う弥生。
「健太さんって、鬼空さまより声が高いですね。」
「えっ?声」
「御師さまはー健太さんより、身長高いですし、性格も健太さんより、男っぽいんですよ。」
何だろう?弥生くんはと考える健太。
「鬼空さまは、健太さんを女の人の様に見ているのでしょうか?」
「えぇ!」
弥生くんの意外なセリフから、驚く健太。
「そんな事はないと思うよ。」
ビックリした。僕が女の子役なんて考えた事もなかった。
健太が女役でもなんでもそんなのは弥生にどーでも良かった。
「健太さんってどーして、寿樹さまも鬼空さまも独り占めするんですか?」
「弥生くん、まったく独り占めしてる気はないよ。」
「じゃあ、オレがくぅちゃんと仲良くしても構いませんね。」
弥生くんに宣戦布告を申し立てられたようだった。
最近の若者は、ズバズバ言うから、こっちもうかうかしていられないな。
有るとき、寿樹が言った。
「おまえの後を 弥生がつけておるが、なにか知ってるか?」
「え?」
心当たりはあった。
「さぁ、たまたまじゃないの?弥生くん髪結いの仕事終わったらヒマだし。」
「何か、バイトでもさせてやったらどうだ?」
「それもそうだね。」
健太とは仲が良くなかったので、放置していた。
健太にとって弥生は鬼空の美容師であって、鬼空にとっては美容師としても要らない暑苦しい存在の一つだった。
だから二人から放置されていたのを寿樹が可笑しいと思い始めたのだ。
「っんで、あいつがまだ要るんだよ!」
鬼空が弥生くんの存在に毛嫌いした。
「弦賀さんが、御飯の準備に助かるって。」
「弦賀だけだろ?」
「寿樹も掃除のバイトにちょうどいいって……。」
「んな、俺は要らないからな!」
「鬼空がちゃんと御師の仕事が出来てたらこんなことにならないんだよ!」
「はん?庭掃除のことか?」
「もう、土日に来る古森さんだけじゃ手に負えなくなってるじゃないか。」
古森さんがサボっているのか?鬼空がサボっているのか?わからないが。明らかに鬼空がサボっている方が多いので、庭掃除を進めないといけないのである。
「新しいバイト探せよ。」
「なんで?弥生くんはアパート引き払っちゃったらしいから行く当てないのに急には無理でしょう。」
「は!?俺はそんな話 知らないぞ。」
「バイトの収入なくて 家賃滞納してたんだって。」
「安い賃金で、ここで働いてもらってたからな。」
「じゃ、鬼空がバイト代を減らしたせいだね。」
鬼空が、してやられた顔をした。髪型のせいか前髪がかかる目元が凛々しくてカッコいい。
身長が少し高くなったような気がした。
「鬼空、なんかすごく男らしくなった気がする。」
鬼空が健太に眼をやると。
「ホルモン注射してるからな。」
とニヤッと笑った。
そのフェイス!カッコいいから女子に人気が出るのがわかる気がする。
「それって、男性ホルモンの方?」
うなずく鬼空。
「え!?体調悪くなるって言ってたじゃん!!」
「少しなら大丈夫。」
「せっかく可愛くなったと思ったのに……。」
健太の肩に腕を降ろす。
「俺、やっぱり女になるの向いてないや。女々しくなったり、嫉妬深くなるの嫌なんだ。」
凛々しい顔が近くなって、なんだか恥ずかしくなる。
「鬼空が嫌でも、身体は受け入れてくれないだろ?」
「合わなくて、また荒れるような事があったら、健太がまたサンドバックになってくれよ!」
ポンと肩を叩いて離れる。
「嫌だよ。また殴られるのはごめんだよ。アンパンマンじゃないんだから。」
健太と鬼空の距離感にじーっと見つめる弥生の姿があった。
健太と寿樹が部屋で仲良く会話をしている。
僕の記憶、戻ったけど、寿樹は僕をいたわって、以前より目を見て話し聞いてくれるなぁ。
露骨に嬉しい健太。
「僕じゃ、頼りないのかなって思って。寿樹は真正家の事、何でもできるし。せっかく里帰りしているんだから……もっとゆっくりして欲しいよ。」
「大丈夫だ、健太。私は出来る事しか出来ないし、やっていない。私は無理して働いている訳ではないぞ。」
ごもっともなんだけれど、体の事を心配する健太、寿樹の手を握る。
「無理だけは しないでね。」
寿樹は、握られた手を見つめた。
「嫁に行って気づいた事だが。」
「?」
「世の男は皆、手を握ってくれるものと思っていた。でも、健太だけだったぞ、このようにスキンシップを取ってくれているのは。」
「そ、それは 寿樹の事が好きだからだよ。近づいて温もりを感じたいって、いつも思ってたから。」
「気づいてやれなくて スマナイ。」
「そ、そんな、謝る事じゃないよ。僕の方こそ寿樹を追い詰めてしまってゴメンナサイ。熱意をぶつけてるだけじゃ、君を困らせるだけだって気づけなくて。君の信用を得ようとして焦っちゃった……。」
その時、外から声がした。
「健太さんって意外と かわいいんですね。」
驚く健太。
「うあー!!弥生くん何時から居たの!?」
「ローカを通りかかったら声がまる聞こえだったもので。あ、けして立ち聞きじゃないですよ。」
「いや、立派な立ち聞きだよ、それ。」
「健太さん、内面も外見も可愛いです。」
「新手の戦い方か!」
「オレ、健太さんになろうと思ったんすけど、なれそうにないです。」
「いや、僕にならなくていー気がするよ。弥生くんは弥生くんでいい所あるんだから。」
「優しいですね。優男やさおっすねー。」
「どーして僕になりたいなんて思ったの?」
「鬼空さまと寿樹さまの双子に好かれているからです。すっごい羨まし過ぎます。」
寿樹が口を挟んだ。
「健太は良い男なのか?」
弥生は寿樹に向き直した。
「いや、そんな事ないですけど。」
その言葉に、「え!?」と驚く健太。
「そーだろうな。」
寿樹の返しに、また驚く健太。
「納得ですか?そこ納得するんですか!?」
コケまくる健太に
「健太は心の世話焼きさんだ。なくてはならない存在だ。」
と言ってくれたので天に上る気持ちだった。
「心の世話焼きさんってなんですか?」
弥生が勉強する。
「いわば、心のエキスパートだ。外見はともかく。」
「そーっすよね。」
弥生の返事が早い。
「泣くよ。君たち僕を上げたり下げたり。」
寿樹は健太を見て言った。
「面白いだろ?からかいがあって」
「ホントっすね。」
「それをいじめって言うんですよ!」
健太がしょげた。
「こんな所が好きだ。」
「告白っすか?」
「え?何?」
健太の混乱する顔を二人が見て笑う。




