寿樹の身籠り・告白
寿樹は、赤城家の子供を身籠ります。DSD疾患を持っていたので、一度は健太との子供が自分のお腹では育てられず、代理出産という形で舞夕璃が産まれています。
それから、初めての自分のお腹での妊娠となりました。健太は自分の子供ではないけれど、寿樹の正常な妊娠に喜びます。
BGM:♪[Mela!]緑黄色社会
健太の記憶が安定した。春。
寿樹が身籠って、お腹が大きくなった春。
真正家に、寿樹が戻って来た。
「大きなお腹だね。」
鬼空に言われる。
「6ヵ月だって。」
「ちょっと体調不良なので、弦賀の元で診てもらえるように、里帰りだそうだ。」
「誰が里帰りだって?」
「親も居ないのに」
「いいじゃないか、寿樹にとって、安心する場所が古里だよ。」
「それにしても、よくあの赤城家が寿樹を真正家に戻る事許したね。」
「清一郎とは信頼関係が成り立っている。」
単なる清一郎が 健太に勝てた気になっているだけである。
「健太、寿樹が帰って来るけど大丈夫か?」
と鬼空に聞かれていた。
もちろん健太は大丈夫だと答えていたが、
実際、帰って来ると、寿樹の手取り足取りデレデレして、なんだあの有様。と鬼空は言いたい。
まるで、寿樹専属の召使いみたいになってる。
「いいか、健太。あのお腹の中は確かに大事な赤ちゃんが入っているが、赤城家の赤ん坊で健太のではないからな。」
「わかってるよ、それくらい。」
健太は口を尖らす。
弥生が鬼空の袖を引っ張る。
「欲しい。」
「何を?」
「赤ちゃん」
健太と寿樹が仲睦まじくしている姿が羨ましくなったのだろう。
「だったら、とっとと彼女作ればいいだろ?」
「鬼空でいい。」
「わたしに子供は産まれない。」
弦賀によれば、鬼空の子宮は未発達のまま止まってしまったらしい。
以前からのどぼとけが消えなかったり、睾丸が残っているのが邪魔をしているらしい。
毎月1回の町の検診に健太は寿樹の付き添いで一緒に電車に乗って行った。
健太は脳の手術をしたので、およそ2年は車の運転が出来ない。
帰り道、街中へ寄って、新しくなったモール街で買い物を楽しんだ。
まるで、はたから見たら恋人のようだった。
そんな気分になった延長で、恋人だったら未来が気になる占いをやってみた。
カップルじゃないのに、そう言われたり、二人の将来かい?とか聞かれる事に1人でテンションが上がりMAXな健太。寿樹はそれを面白く見ていた。
「これから先は、目の色を変えて視る暗示が出ています。」
目の色?
二人は考えた。
寿樹にワンデーアキュビューのカラコンをするよう進める健太。
初めてのコンタクトレンズに驚く寿樹。
その様子が可愛らしくて、1人で胸を弾ませる健太。
お店の人に指導されて、ソフトコンタクトをつける。
うるうるの目に垢抜けたカラコンが別人を装う。
「寿樹!可愛い‼️」
健太が黄色い声を上げる。
店員さんが「お似合いですね。」というから健太は1箱買い上げた。
「度なしのコンタクトだから、イメチェンしたい時にいつでも付けられるね。」
「健太、何故カラコンなんぞ」
「占い師さんが言ってた目の色ってカラコンじゃなかったの?」
なるほどと思った。寿樹は見方を変えろと解釈したからである。
健太は一緒に歩いていて、皆に視られているような気がして、寿樹の手をギュッと握った。
「なんだ?」
「嬉しい。」
「女の子みたいな事を言うんだな。」
「だって、寿樹は女の子みたいな事言わないでしょ。」
「スマナイ。」
「謝る事じゃないよ。」
健太は笑って寿樹の顔を見た、 その時。
「健太が、好きだ。」
ストレートな言葉なのに、健太には寿樹が何を言っているのかわからなかった。
「え?……なに?どの事?カラコンのお礼?」
寿樹が瞬きせずに健太を見つめる。
「なばなの里で、初めて自分の気持ちを思い知った。」
「なばなの里?僕、後半しか覚えてないかも。」
「おまえが今までの記憶がないのに、わたしを抱きしめてくれた……。」
「ぁ……。」
「覚えてないのか?」
応えずらそーうに身をひねる健太。
「……いいんだ、覚えてないなら それで。」
寿樹が急に居なくなりそうだったので
「いや、良くない!思い出したいから 教えて!」
健太は辺りを見回した。
寿樹の手を掴んで、路地にある光り輝く建物へ向かった。
「アソコ!あそこなら、ゆっくり話が聞ける。寿樹もお腹に良くないから、少し休んで行こう!うん!」
「……けん、た?ここはホテルではないか?」
寿樹が光り輝く建物をぐるりと見て回る。
そんなのお構いなしに寿樹をグイグイエレベーターに乗せる。
「腰掛けて、飲み物でも飲もう。」
健太の鼻息が荒くなっている。
「健太、今、凄い早業でロビーのボタンを押したな。」
「え、選びたかった?」
「そんな事しなくとも、ここがどんなとこくらいか分かるぞ。」
「中はどこも一緒だよ。」
笑ってごまかす健太。
光るライトを目印に部屋へ入る。
健太は寿樹をそっとベッドへ座らせる。
「何飲みたい?」
「水で良い」
寿樹がこじゃれた部屋を見回す。
「普通の部屋みたいでしょ?」
「コロナでも営業しておるのだな。」
「そだね、よくわかんないけど。」
健太はコップを蛇口の水で丁寧に洗う。
寿樹に洗ったコップに水を入れて渡す。
「何故そんな事をするのだ?」
「あ、学生の時、こういった場所のバイトをしてた時があってね。消毒済の袋に入れるけど実際は消毒はしてないし、一度裏の作業を見てしまうと何もかも疑ってしまう性分になってね。」
「世間を知っているのだな。」
「これくらいで世間なんか知れないよ。」
健太は残りのペットボトルの水を飲む。
「言おう、言おうと思って 引きずってしまって、わるい。」
「いいんだよ。寿樹。寿樹からはちゃんと好きって伝わってたよ。」
寿樹はなばなの里での事を話し始めた。
「そうか、僕はちゃんと寿樹を探しに行ったんだね。良かった。」
健太は涙を流しながら聞いていた。
「なにか、思い出した。車の窓の外をずっと眺める寿樹の姿をとても愛おしい気持ちで見つめる自分がいた。」
「車から降りて、気遣って話しかけてくれたな。」
「寿樹の控えめなところ、大事なことも一人で抱え込んでしまうのがたまらず心配で、いつも目が離せなかった。」
「寿樹は僕から逃げちゃ駄目だよ。お互い助け合って生きたい。そしたら寿樹は一人で頑張る事はないね。」
「健太が倒れた時、鬼空から叩かれた。」
「え!?」
「鬼空は真剣に怒っていた。わたしがこんな風にしたんだって、健太をこんなになるまで放っておいたのはわたしのせいだと。」
「寿樹……。そんな事があったの?」
「だから、わたしは健太に話した。結婚した者がいう事ではないのわかっている。」
健太は寿樹を抱きしめた。
「ありがとう、ありがとう、ありがとう。」




