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健太の日記  作者: 蔓草登上
92/111

記憶を探しに

挿絵(By みてみん)

ミキ……かわいいな。

健太けんた鬼空きくうを本当の恋人と思うことに疑いをしなかった。

むしろ、新たに好きになっている位だった。


「ミキのからだを触りたい……。」

「そうか……いや、刺激を与えてはいけないんだ。」

「僕の身体は健康だよ。」

「てんかんには毒なんだ。」

「じゃあ、バグだけさせて。」

「バグだけならいいよ。」

ミキから、何ともいえないいい匂いがした。

ただ、おかしな事にミキの胸はペッタンコだった。



 僕が 歩いてトイレへ行っていい許可が出たのが 3日目の日だった。

ただ、まだトイレまで付き添いが居る。

脳の手術なので、出血が脳内で溜まっていると、歩いているだけでふらつき・言われていても直ぐ忘れてしまったり、があるかららしい。


「僕、大丈夫でしょ?」

歩いてふらつきもないし、言われた事を全て覚えていた。

「そうだな。」

ミキは健太の頭に手を乗せた。

健太は身長の差に少し落ち込んだ。


「明日は病院へ行って 抜糸ばっしだぞ。」

言われて健太はミキに言った。

「当日、先生に聞いてもいいかな?」

「何を?」

「いつまで、刺激のある事をしちゃいけないのか。」

「まぁ、検査結果だと思うよ。」

「早く、ミキと繋がりたい……。」

「!?」

鬼空は驚いた。が、我に戻った。

(そっか、恋人って言ってしまったもんな。)

「ミキに色々してもらってるだけじゃ 悪いと思って。」

鬼空は、健太の世話を行っている間に、健太はミキという人物に気持ちが膨らんでいることが気付けなかった。

「直ぐに出来るとはわからんぞ。」

濁したミキ。


健太の記憶が戻れば ミキの存在も無くなる。

健太の記憶が意外と全く戻らないので、架空ミキが長居続けてしまったのだ。

早く、思い出せよという目で睨みを利かす鬼空。

健太は、ニコッと微笑み返した。



 抜糸ばっし後。

何の問題も無しで戻って来た。

健太の聞きたかった質問も、刺激のある事も「まぁ、大丈夫です。頭さえ使わなければ……。」と軽く先生に言われた。

この様子を付き添いで見ていたミキは 弦賀つるがに聞けと言っておくんだったと後悔した。


 帰り道、健太がミキとはどんな馴れ初めだったのか聞いてきたので

「健太が早く思い出してくれればいい話だよ。」

と健太が納得しない回答を、話してはすり込ませた。


「そうだけど……。思い出せないで日々お世話されるのが……。」

「そんなに、深く考えるな。持ちつもたれつの関係だ。」

健太は考えた。

「全て忘れてしまうと、Hな事しか頭に浮かばない。」

と言って笑って見せる。

(う、なんだかわかる気がする。)


ミキは公園で一休みする事を決めた。

「今日は、いい天気で良かったね。」

「そうだな、あの神社からそう、出る事もないしな。」

寿樹じゅきが来てくれて、御師おんしの役をしていてくれている事を思い出す。

本当に寿樹の言った通り、誰か御師をやってくれないと、健太の看病は出来なかったな。

まして、病院へ連れて行くのにまる1日かかる。

こうして、見慣れない景色を健太とゆっくり眺められる時間なんて、寿樹が来てくれて ありがたいに等しかった。

「なぁ、健太。」

「ん?」

「驚かないで聞いて欲しいんだ。」

「なに?」

「いや、驚くと言っても 以前の健太は知っている事なんだが。」

「うん。」

「わたしの身体は 特別で性別を双方持っている。」

「どうりで」

「知ってたか?」

「胸が無かった」

「それな。」

ミキは恥ずかしそうにムホンと咳ばらいをし、枯れた並木を眺めた。

「だから、健太。思い出すまではお互いゆっくり歩んで行こうな。」

「ミキは色々してくれるのに?僕もミキに色々してあげたい。」

「健太の記憶が戻ったら、色々してくれ。」

健太はミキの手を取り、凍えた手先を自分のコートの中に入れて温めた。

「僕とミキは ちゃんとした……キス……した事、ある?よね?」

「あ、あぁ、まぁ……な。」

健太の顔に笑顔が戻った。

「じゃあ、正真正銘しょうしんしょうめいカップルだ!」

アッと思った。

健太にとって、キスはカップルの象徴だったのだ。

鬼空にとって キスは何てことのないスキンシップだった。


健太はミキのもう片方の手を取りに行くと、ミキの両手を自分のコート内の腰にまわし、一歩ミキの方へ踏み入れるとミキにキスをした。

誰も居ない公園に 枯葉が舞う風が通り過ぎた。


足取りの軽くなった健太と足取りの重くなったミキが真成家しんせけに帰って来る。


弦賀つるがが出迎えて様子を伺う。

「どうでした、健太さん。」


「はい、僕とミキはカップルでした!」


弦賀とミキは顔を見合わせると、ため息をついた。






 ミキ……かわいいな。

健太は鬼空を本当の恋人と思うことに疑いをしなかった。

むしろ、新たに好きになった。

何度思っても、健太は忘れていた。

何か、思い出してはいけないモノに大きく支配されていた。


一刻も早く記憶を取り戻してあげないと、

健太は屋敷を歩き回って、ミキの姿を探した。

ミキしか、心から頼れる人は居なかったからだ。


 御師おんし弥生やよいに髪をとかされている姿があった。

その光景は太陽が差し込み、まるで映画のワンシーンの如く美しく見えた。

弥生が長く艶のある黒髪をゆっくりと丁寧にとかしている。

立ち尽くしてその絵のような光景を見ていた。

御師さまがこっちに気がつき

「健太。」

と呼んだ。


御師さまはミキと瓜二つの顔をしていた。

「ミキ……?」

「わたしはミキではない、……。」

御師さまは微笑んで説明してくれた。


そっか、ミキと御師さまは双子なんだ。

健太は御師の姿に何か惹かれるモノを感じた。

「とても綺麗な格好をしていますね。」

「これから祭事があるからな。なんなら見ていくか?」

健太は、言われた通り祭壇の角で見させてもらうことにした。



 美しい御師さま、彼女は神につかえる者としてここでは、未婚者という話しになっているらしい。



 次の日も、御師さまの祭事を見せてもらった。特にこれと思い出す事は無かったが、僕の為にしてくれている御師さまはなんか好きになれた。

 他に神具を見て、僕はこれに携わる仕事をしていたんだと教わった。

 初めて見るものや、どういう扱いをするものなのかわからない物もほとんどあったが、他の何よりもこの神具の方が目に優しいというか、馴染みが身体にしみついているんだと思った。

 御師さまは 僕がなんか引っかかると言ったところを何度か リバースしてくれた。

 それで、御師さまが健太の好きだった神楽を踊ると茂沼竜也を連れて行ってくれた。


「こんな事だったら、オヤジ喜んで協力するとおもううぜ。」

久々舞台に上がり、乗り気の茂沼竜也しげぬまたつやが言った。

「いや、神事ではないのでいいのだ。竜也も内密にしておいてくれ。」

御師さまが言う。

「へえ、御師さまと秘密の神楽が踊れるなんざぁ一生の宝みたいなもんだぜ。」


 健太は二人の神楽踊りをみた。

「しばらくしないと だいぶ忘れるな。」

「そうですね。」

息を切らしながら 二人が会話をした時だった。

健太が頭を抱えて、唸り出した。


駆け寄る寿樹。

「健太!」

「側近さまぁ!」

落ち着いて目を覚ますと。

目の前に御師さまがいて、胸がドキッと痛んだ。

「少し、刺激が強かったのかもな。」

「側近さま。やっぱり安静になさってないと、また傷口が開いちまったら大変だ。」

健太は御師に引かれて、部屋へ戻った。


階段を上がって鳥居を抜けると、その先にミキが立っていた。

「御師は、健太を連れて何をしてたんだ!」

ミキが御師に叱った。

その様子を見て健太が止めた。

「止めてよ、僕が見たいって言ったんだ。」

「健太が?神楽を思い出したのか?」

「う、ううん。」

「わたしが連れ出した。すまぬ。もう連れ出しはしない。」

「頼むぜ、外出は階段でさえ要注意なんだから。」

ミキが男言葉になっている。

御師の仕事を離れたから 注意すべき事ではなくなっていた。





 生活は、てんかんの発作のおそれがあるため、屋敷の外へ出るにはミキと一緒に、階段もミキと一緒に降りる。

トイレもお風呂もミキの監視の元で、健太からしたら監視の地獄だった。

ミキは湯舟で発作を起こすといけないからと言って、脱衣所で待ってってくれた。

「ミキ、そこで待っていてくれているなら 一緒に入らないかい?」

ミキはうたた寝をしていたが 飛び起きた。

「いや、ダメだ。」

健太が風呂から裸で出て来る。

「どーして?」

「どーしてもだ。」

寝ぼけながら正確な回答が出せないミキに

「そこでうたた寝してたら、僕が湯舟で溺れていても気が付かないよ。」

と健太に主導権を握られてしまった。

「わたしの両性具有りょうせいぐゆうの姿は、刺激が強いぞ。」

「構わないよ、刺激があったら 思い出すかもしれない。」


鬼空の身体は、両性具有とは言わなかった。どちらかというと両方共、性が不完全という方が正しかった。

「健太……い、いま、何て……?」

鬼空が健太に 近寄って目を見た。

「両性っていうから、おっぱいもおちんちんも付いてるのかと思った。」

「じゃなくて。」

「鬼空は両方とも付いてないから、何の刺激もないよ……。」

健太が、ミキを鬼空と言った。

「思い出したのか!?」

鬼空は喜んだ。

「鬼空だよ。……あれ?僕……何言ってるんだろう?」


しかし、喜んだのはつかの間。

鬼空と言う呼び名は出てきたが、やはり、それ以外の事は思い出せていなかった。

どうやら、はずみで鬼空の名前が出ただけらしい。



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