健太が日記をつけなくなった日
「健太、バカめお主が居なければ 真正家は何も動かぬ」
鬼空が初めて、1人で真正家を取り締まろうとした。
弦賀は力を貸してくれた。
「ところで、健太は最初にMRI入った時、何ともないと診断が出たではないか?あの時は本当に何もなかったのか?」
弦賀は気まずそうにした。
「いや、多分その時から映っていたものと思われます。」
「じゃあ、何故?」
「誤診でしょう。」
「おまえの所はそんなんで いいのか?」
「医者の卵ですし、病院ではなく 研究所ですので……。」
「もしかして、弦賀。お主も医者とはいえ 医者になりきれなかった系の……。」
「はぁ、何をおっしゃりたいのでしょうか。」
「どうりで、おかしいと思った、何で医者のクセにこんな金にもならない所で研究続けているんだと思った。」
弦賀が手を振って違うと示した。
それを押しのけて鬼空が話す。
「健太が脳の障害じゃなく、心の問題だと言ったの弦賀だったよな。」
「あれは、あの時は合ってました。」
「ウソをつけ。もう、弦賀の事は信用できん。」
「あ、少し脳障害もあったと思われます。」
「今さら……。そんなんだから 医者になれないんだバカ野郎。」
鬼空に真相を付かれ、落ち込む弦賀。
健太が手術を受ける話しは、赤城家にも伝わっていた。
赤城家から駆けつける寿樹。
健太は病院から帰ってきて、畳の間で寝かされていた。
「健太!」
健太に寿樹は見えていなかった。
鬼空が寿樹を平手打ちする。
パンッ!!
黒髪が宙を舞った。
「今更ノコノコ来て、何が出来る!!」
初めて鬼空が本気で怒った。
「こうなったのも、わたしのせいなのだろう。」
寿樹は顔を背けたまま、鬼空の怒りを受け止めた。
「そうだよ、寿樹のせいだよ!こんなにしたのは寿樹のせいだ!」
「私が 赤城家へ嫁いだから、こうなったのだろう。」
「何故、来る?何故来たんだ!?」
「健太の一大事だから。」
もう一度、鬼空が平手を用意した時だった。弦賀が見かねて鬼空の手を押さえた。
「嫁に行って、二度と来ないならまだ許す。健太が死にそうな状態になってからノコノコ現れんじゃねぇ!!!!」
鬼空の目が 真っ赤になり、まるで鬼のようだった。
弦賀は勢いで 振り払われた。
「おまえは清一郎の嫁だろ?」
挙式は既に済まされていた。
「……。」
「だとしたら、今の寿樹に何もすることはないし、むしろ邪魔なだけだ。」
「すまぬ」
「健太が挙式に出席せずに済んで良かった。見たらまた大変なコトになるだろうからな。わたしが健太を看病する。健太には一切手を触れさせない。赤城家はもう、帰ってくれ。」
「鬼空が看病している間、わたしを御師に上げてくれないか?」
「寿樹は赤城家に帰れ」
「看病の邪魔はしない。せめて御師の仕事だけでもやらせてくれないか?」
この日は鬼空の腹の虫が収まらないので、一旦帰る。
弦賀は、車で寿樹を送った。
「大丈夫ですか?寿樹さま。」
「鬼空に本気で怒られても仕方ない事をしている。」
「そうとはいえ……。」
「鬼空は健太の事が好きだろう。」
「そんな、まさか。」
「あいつは、あれで自分でも気が付いてない性質だ。」
寿樹が笑った。
鬼空はしばらく寝たきりの健太を看病した。
徐々に身体が回復していく健太。
しかし、記憶の部分は全くと言っていいくらい、今までの事を何も覚えていなかった。
術後直ぐに帰宅させられた健太、2日間は寝た切りの絶対安静が出来る場所があるとして退院させられた。
「わたしの方が、健太より先に 下の世話をしたな」
「スミマセン。こんな下の世話までして頂いて。あのー、看護婦さんですよね?」
「違うぞ、わたしは健太の恋人だ。」
「え!?」
ジョーダンっぽく言ったつもりだった。
弦賀に「こんな時にジョーダンは禁物です」と叱られる。
困った顔をしている健太。
「忘れたのか?」
「あ、いえ、そんなことありません。」
「そんな事あるな。わたしの名前はわかるか?」
鬼空は健太に顔を近づけた。
いつもの様に恥ずかしがりはするが、何か違った。
「あー、えーとー、確か、ミキかな?」
「そう、ミキだ。」
寿樹と言われるかと思ったが こっちの方が無難だった。
弦賀があちゃーという顔をする。
鬼空が弦賀を肘でこずく。
「なんだよ、健太に刺激与えない様にしてるんだぞ。」
「鬼空さま下手すぎますよ。」
「徐々に、記憶は戻って行くんだろ?」
「はい、まだ、手術後なので、その内全部思い出せるまでになりますよ。」
「だってさ、それまで面倒みるからよろしくな。」
「あ、ありがとう。」
健太は、下の世話をしてくれた鬼空を恋人と思った。
他の事は、みんな忘れて
「ミキ、いつもありがとう。」
健太は、だんだんミキの事が好きになって来る。




