鬼空の牡丹騒動
「つるぅがぁー!!」
静かだった 屋敷に また鬼空の叫び声が木霊した。
「はいー!」
鬼空がキレキャラなので、大人しかったハズの弦賀さんも半ばキレながら 返事をしている事に驚いた。
健太が 顔を出すと、鬼空の正装着に また真っ赤な牡丹の花が 咲いていた。
「また、ですか?」
弦賀が 後ろの袴を持つ。
「コレは来る時がわからぬものなのか?」
「今、鬼空さまの 周期にばらつきが御座いまして……。」
「は?月に何度も来たり、たまらんぞ。」
「半月は 安定するまで かかるかと……。」
「薬はないのか?」
「はい?薬とは?」
「薬で 止めるとか、遅らすとか 出来んのかと言ってるのだ。」
そう言われて 弦賀が 半ばキレた。
「ですから、安定するまでは 薬で調整さえ出来かねます。」
なんだか険悪な状態になりそうなので 健太が 割って入った。
「袴と白衣を洗います。」
鬼空が 白衣を脱ぐと 下着は ブリーフだった。
あれだけ パンツ穿くように言ったのに……。
「……私も男ですから そればかりは解りません。」
「っったく、寿樹にまた繋いでくれ。」
健太の知らない間にも 弦賀とのケンカは続いていた。
弦賀が 鬼空にバスタオルを掛けた。
「風呂場に 一式用意しておいてくれ。」
というと 風呂場へ消えて行った。
「あ、僕 一式準備しますね。コレ洗濯しなくちゃなんで、風呂場へ行くから。」
「あ、スミマセン。」
弦賀は 次の斎服を健太に渡して託す。
弦賀さんの重荷が少しでも減らせればと思って受け取った。
鬼空の箪笥を開けて ネット注文して数枚揃えたパンツを掴んだ。
風呂から上がったら パンツ穿かしてやる。と思いながら。
寿樹が自分専用に使っていたトイレから ナプキンを取って風呂場へ駆け込む。
鬼空のシャワーは早かった。
丁度出てきて 弦賀さんが掛けたバスタオルで拭くところだった。
健太は ある光景を見て 唖然とした。
鬼空が仁王立ちでタオルで身体を拭いている最中にも、真ん中からポタっと血痕が床に落ちたからだ。
「きゃー」
「何がキャーだ、早くナプキン寄こせ。」
僕の用意したパンツを穿いたのは良かったが、斎服を持ってそのまま 出て行こうとしたので 僕は止めた。
「ちょっと待った!何でパン1(いち)で出ようとしてるの?」
健太は 風呂場のお湯で 汚れた白衣を洗おうとしたが 止めてたらいに 漬け置きにした。
手をきれいにした健太は 僕が手伝うと言って 鬼空の白衣から袴を着る手伝いをした。
「巫女の袴が 何故赤いか分かったな。」
「そうだね、 女の人は 生理があるから 赤い袴なんだね。」
「女性が赤だから、男性が青になったという事か?」
「僕らの時代は ランドセルが 赤と黒しかなかったね。」
ちがう!こんな 話がしたかったんじゃない。
「弦賀さんと ケンカしないでね。」
「どうしてだ。」
「見てるのが 嫌というか……いてもたってもいられなくなる。」
「おまえの方が サンドバックになるというのに。」
「僕に当たるね、鬼空は。」
痛かった思い出をかみしめた。
「……でも、ケンカを見たくないんだ。」
「じゃあ、直に健太に当たれって事か?」
鬼空が 顔を近づけてニヤ着く。
「ちがうっ痛いのは嫌だ!」
鬼空が 健太の胸倉を掴んだ。
健太が ギュッと目を瞑る。
鬼空は ギュッと縮こまった健太の唇にチュッとした。
拍子抜けをして目を開ける。
「かわいいっ」
と言って 風呂場を出る鬼空。
「ちょっと……。」
鬼空は祭事があるから 直ぐに出て行った。
血痕のついた 白衣を洗いながら 鬼空は 何を考えているんだろうと 考えた。
どーいうつもりで 僕にキスをしたり、殴ってみたり アメとムチが極端すぎて わかんないよ。
健太は 床に落ちた赤い 血痕を見て 舐めてみたいと思った。
それは あまりにも 色鮮やかな 赤い色だったからか それとも 何か 他にあったのか……。
他に あったとしても わからない。
衝動とは そういうものだ。
鬼空の 白い脚から色鮮やかな 一筋の朱が自由に流れているのを 思い出した。
あれに ゾクっとするほど 美しさを覚えた。




