布一枚挟んだ隣で……後編
清一郎とは 本当に夜の寝る前だけが 会話できるひと時で、朝は早く出かけて夜遅くに帰って土日も無いに等しかった。
「官僚とはこんなに 忙しいものか?国家公務員なのに 土日も出勤か?」
「寿樹さん ボクはまだ下っ端で、このコロナの時期に 家に帰れるだけ ましな方なんですよ。」
清一郎が 1日1回の約束を 果たしに律儀にやって来る。
だんだんと 1日1回の『触れる』が『抱きしめる』に変わって、寿樹は清一郎からハグをもらってから眠りにつくカタチとなっていた。
その後は 清一郎が疲労困憊して眠りにつくのが いつもの事だったが 今日は、違った。
清一郎が いつものように布1枚をめくり開けてやって来ると
「寿樹さん……。」
と物思いな顔をした。
寿樹が 布団から出ると
「この『触れる』事に 気が付いてしまったのですが。」
「なにを……」
言い終わらないうちに 清一郎が寿樹を抱きしめた。
「誰かと 比べてるのではないですか?」
耳元にその言葉が 胸に響いた。
「そうかもしれぬ。」
清一郎の腕に力が こもった。
「では、どこまで 『触れる』をすれば いいんでしょうか?」
清一郎の ニオイを感じた。
熱い眼差しと 熱い吐息が 寿樹の記憶に刻まれる思いだった。
「その方に 負けたくないです。仕事もままならない位 貴女の事を考えています。」
凛とした瞳が寿樹を見つめる。
若く あふれた力を感じ 清一郎の魅力として 目に映る。
「挙式までに その天秤にかけないと いけませんか?」
清一郎が 天秤に乗っていない事が わかったらしい。
本当に 仕事のあいま考えて 導き出した答えだ。
「清一郎を 解りたいと思う気持ちはある。天秤にかけたところで 挙式に間に合うどころか 何年先になるやも分らぬ。」
清一郎には わかっていたようだ 健太が天秤にかかっている事を
多分そう、いや健太しか居ない そう踏んで あえて名前を出さなかった。
「平等にみようとする 寿樹さんのお気持ちありがたいです。」
清一郎の熱い吐息が 先ほどから首筋にかかって くすぐったい。
「今日は『触れる』から 進歩してもいいですか?」
「好きにするが良い」
「手ほどき お願いします。」
振るえる 清一郎の指が やけにくすぐったかった。




